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魔物狩人の一味に加わる

 ギルと2人、近くの細い川で水を汲む。

「魔物狩人に混じるのか?お前は商人をめざしそうだと思ってたのに」

「将来的に商人をやるのは吝かじゃないよ。自分でも商人が向いていると思ってるし。でも、バルードの元では、もうそんなに学ぶものがなかった。だから、これはちょうどいい機会だったんじゃないかな。もっとも、彼らに混じってどれだけ付いていけるか怪しいけどな。……今は魔物と戦える力が欲しい」

「なるほどな~。あいつら、ベンやダールより強いもんな。オレも強くなりたい」

 うんうんと言いながら、ぐっと拳を握り締めるギル。私は首を傾げた。

「……まあ、今は選択肢がないから分かるんだが。ギルはギルで、行きたい道を行けば良くないか?私と一緒にいる必要はない」

「お前、冷たいな」

 ギルの三白眼が丸くなる。そうすると、年相応の可愛さが少しだけ垣間見える。

「ギルに言われるとは思わなかった。ギルの方こそ、私を利用するつもりだっただろ?」

「まぁな。でも、お前、すげぇ頭がいいし。しばらくはお前の真似をする」

「……じゃあ、もうちょっと読み書きを頑張れ」

「げぇ」

 ふふ。出来の悪い弟を持った気分だ。

 でも本音を言えば、先の見えない現状でギルが横にいるのは少しだけ心強い。頼りにはならないが、境遇の似た子供同士。よく知らない大人達に比べれば、気を張らなくてもいい相手がいるのは有り難いものだ。

 ―――川から戻ってほどなくして食事の時間になった。

 先ほどの人面鳥の肉は不味くて食えたものじゃないらしい。ということで、干し肉と薄いスープ、堅いビスケットを食べる。

 バルード達と旅をしていたときも思ったが、この世界の食は改良が必要だなぁ。携行食でも、もうちょっと工夫するべきだ。干し肉は固いし、不味い!しょっぱすぎる!!ビスケットも歯が折れるぞ、これ。

「で、アンタ達の名前は?兄弟じゃないわよね?」

「オレはギル。こいつはリン。盗賊ンところから、一緒に逃げてきた仲だ」

「ふぅん。……何か特技があったり、魔法が使えたりする?」

「……何も」

 男達が視線を交わすのを見て、私は手を上げた。

 彼らに対してメリットがないと、適当なところですぐに放り出されそうだ。バルードのところのように、小枝を拾ったり洗濯したりだけでは、必要と認められないだろう。

「とりあえず、戦闘では役に立たない。でも、頭はいいからそこそこ役に立つと思う」

「自分で頭がいいって言うかぁ?大体、お前みたいなガキの頭なんて、知れてる」

 アラックが鼻を鳴らす。私はにやっと笑ってアラックの靴を指した。

「……あんたの靴と、私の靴を合わせた値段は1100ゾルとする。ちなみに、あんたの靴は私の靴より1000ゾル高い。では、私の靴の値段はいくらだ?」

「は?……きゅ、急になんだよ……合わせて1100ゾルだろ。で、オレのが1000ゾル高いんなら、お前のは100ゾルだ」

「残念。50ゾル」

「なんでだよ!」

「私の靴が100ゾルなら、合計は1200ゾルになるぞ。50ゾルに1050ゾルを足して、1100ゾルが正解だ」

「あ!……ひっかけやがったな!」

「じゃあ、次の問題。ビスケットを5つ食べると、新しいビスケットが1つ貰える。あんたがビスケットを100持っていたら……全部でいくつ食べられる?」

「バカにしてんのか。100と20を足して、120だ!」

「正解は、124だよ。100コ食べて20コ貰い、その20コを食べたらまた4つ貰える」

「え?あれ?」

「ぶはっはっはっ!!!」

 グルドとシムが大笑いした。アラックが真っ赤になる。

「確かに、俺達より頭は良さそうだ。お前、詐欺師にもなれそうだぞ。チビのくせに末恐ろしいな。よし、じゃあ街へ行ったとき素材の買い上げにその頭を上手く使ってもらおうか。役に立つなら、お前達をちゃんと面倒みてやる」

 ふう。なんとか首の皮1枚、繋がったかな?


 自分の身は自分で守れと、私とギルは小刀をもらった。

 街へ行って私が素材を上手に売り捌けたら、もっといい短剣を買ってやろうと言われた。

 どっちだろうと、まだ上手く使えないので、とりあえずシムから格闘術っぽいものを教わる。シムは以前、暗殺業をしていたそうだ。そちらの方が実入りはいいが、身を隠す生活に疲れて魔物狩人に転向したらしい。

 まずは受け身から練習する。

 それと同時に、“魔力”の巡らせ方も教えてもらうことになった。

「うまく使いこなせたら、身体は堅くなるし、動きも速くなる」

 しかし、ギルはどうやら出来ないらしい。代わりに魔法が使えるようだ。

「いいなぁ、ギル」

「どこが?魔力量がショボくて大した魔法は使えねぇ。お前の方がいいよ」

 う~ん、でも、せっかく剣と魔法の世界に生まれ変わったんなら、魔法が使いたいじゃないか。残念だ。

 ただ、身体が堅くなるのは本当にいい。

 私は前世でダイエット目的でキックボクシングをしていた。この小さい体ではリーチの長さが圧倒的に足りないが、いずれ成長したら……ふふふ、強化した足や拳でガンガン戦ってやる。

来週も2回更新、できそうかも…?

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