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ゼロ転生 ~ 気ままなモブスタート ~  作者: もののめ明
変容期

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32/144

・・・乙女?誰が?

 1週間ぶりに塔へ戻り、最上階へ行くと───驚くほどスッキリ綺麗になっていた。

「やあ、お嬢ちゃん!君のおかげで本当に気持ちよく仕事場に来れるよ!!」

 すれ違う魔術師が全員、感謝の意を告げる。

 この世界にもゴキブ○に似た昆虫がいるらしく、よく最上階から降りてきて大恐慌になったと知った。

 うん、それは大変だったろう。みんな、よく今まで我慢していたな。

「床も壁も窓も、洗浄魔法で徹底的に磨き上げたよ」

「いやあ、普通は1回で綺麗になるもんだけど、全然効かないから怖かったなあ」

 どうやら、王宮の事務員だけでなく魔術師たちも清掃に加わっていたらしい。

 素晴らしい。完璧な仕上がりじゃないか。

 ……ところが、肝心の家主が見当たらない。

「アルマーザはどこに?」

「それが、清掃2日目辺りくらいから情緒不安定になってね。そのうち、どこかへフラリと行ってしまったんだ。まあ、しばらくしたら帰ってくるんじゃないか?」

 国1番の魔術師なのに、扱いが酷いな。


 塔を隅々まで探したが、いない。

 他にあの男が行きそうな場所など……ほとんど付き合いのない私に分かる訳がない。

 悩んだ末、温室<アモエス>の方へ行ってみた。

 木霊のサイフィレスがすぐに現れる。

 何故か少し怒っているようだ。眉間に皺が寄っていた。

「アルマーザを探しているんだが……」

「「あなた……アルマーザをいじめたでしょう……」」

「は?」

 開口一番に文句を言われ、私はポカンとした。

 いじめ?アスワドをけしかけたことか?

「「家に帰れなくなったって……アルマーザが泣いているわ……」」

「帰れない?何を言ってるんだか。汚部屋を綺麗にして、暮らしやすくしてやったんだ。礼を言われてもいいくらいだ」

「「ウソよ……ウソよ……アルマーザの安楽の地を……あなたは奪った……」」

 ザワザワと周囲の木々がざわめき始めた。

 ……これは。なんかヤバそうな雰囲気だ。

「ちょっと待ってくれ。何か誤解があると思う。アルマーザは、ここにいるんだろう?まずは彼と少し話をさせてくれ」

 慌てて低姿勢で木霊と交渉する。

 サイフィレスはしばらく髪をウネウネさせていたが……やがてゆっくりとおさめ、ムスッとしながら奥を指し示した。

「ありがとう」

 礼を言って急いで奥へ───。


 枯れ葉の山の中にアルマーザは蹲って眠っていた。

 ……うわ、キラキラが8割減になっている。

「……アルマーザ?」

「君の顔なんか見たくありません。向こうへ行ってください」

「塔の部屋が片付いたんだ。帰ろう?」

「あれはもう、私の部屋ではありません」

 面倒だなー。

 そう思いつつも、屈み込んでアルマーザの顔を覗く。

「衛生的でない部屋は、病気になる可能性があるんだ。どうしても一度、綺麗にする必要があった。……新たにあんたの住みやすい部屋を作ろう」

「イヤです。いきなり……いきなり裸にされて何もないところへ放り出された私の気持ち、君なんかに分かりません!」

 ああ、分からないよ。

 そう答えたいのを我慢し、私は溜め息をついて立ち上がった。

 こいつはかなり重症だ。違うアプローチを考えよう。


 冷たい目のサイフィレスの前をそそくさと抜け、塔のキリーヤの部屋へ行った。

「あら、リンちゃん!アルマーザの部屋まで綺麗にした浄化の乙女!」

「はあ?!」

「塔の魔術師の間では救世主ですっかり有名よぉ!」

 ……竜殺しから浄化の乙女になるとは。隔たりがあまりにも凄まじいな。とても同じ人間に付けられた二つ名とは思えん。

 キリーヤの部屋は、まだ、綺麗な状態を保っていた。やや机の上は怪しいが、マメに事務員が片付けに来てくれるらしい。放っておくと大変なことになると分かったからだろう。

「で、どうしたの?」

「あ、ああ。エルフについて知りたいんだ」

「エルフ?今や幻の種族ね。中央山脈のどこかに王国があるらしいけど、招かれない限り、入れないって聞くわ」

 ふうん。エルフが幻の種族なら、ハーフエルフはもっと希少なのかも知れない。

「エルフは、人族とあまり交流しないのか?」

「人族だけじゃなく、とにかく他種族と交流しないわよ。芸術と音楽をこよなく愛し、争いごとを嫌い、自然に囲まれた生活を好むの。人工の物が嫌いで……っていうか、金属ね。金属製品がダメみたい。だから、ドワーフとの相性は最悪」

 なるほど。

 キリーヤからエルフの国について、とにかく知っている限りのことを教えてもらい、私はどうすればアルマーザが落ち着く環境になるか、思案した───。

“浄化の乙女”呼称、実は魔術師たちの間でかなりモメました(笑。本人がとても乙女じゃないので。

でも、今後もぜひ、その手腕を披露してもらうために最大限に讃えておくべきだ!という大多数の意見により“乙女”に決定~。(きっと喜ぶはずという偏見に基づく)


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[一言] 燃やすぞ植物モドキの精霊が(殺意)
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