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ゼロ転生 ~ 気ままなモブスタート ~  作者: もののめ明
変容期

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31/146

王都散策

 翌朝。わりと早くに目が覚めた。

 まだ寝ているザグとシムを起こさないよう店の方へ静かに下りる。

 さて、早いが街の探索に行ってみるか?

 考えていたら、ギルも起きてきた。

「早ぇな。……一緒に朝飯、行くか?」

 ギルは、朝食をいつも街門の外の市場で食べているらしい。珍しいものも多いと言う。

 せっかくなので、行ってみることにした。

「あ、そうだ」

 外を歩き出してすぐ、ギルがなんでもない風にさらりと言った。

「オレ、ちょっとは魔法つかえるようになったぜ」

 何?!私がひたすら片付けに追われている間に……魔法習得?!

「前は小さな火を点けるくらいしかできなかったけど、手の平くらいの火の玉をいくつか飛ばせるようになったんだ」

 …………くう。絶対、アルマーザから精霊魔法を習ってやる。


 街門外の市場は、すでに賑わっていた。

 確かに異国風の料理が並ぶ屋台が点在している。

「あっちの串焼きは、かなり辛いんだ。そっちのは、少し甘ったるくてオレは好きじゃねえ。あ、向こうの包み焼きは、安いし旨いし腹持ちもよくてオススメだ」

 どの料理も美味しそうで目移りしたが、まずはギルお勧めの包み焼きを買うことにした。ギルとは味覚が似ているのか、大体、好むものが同じなので間違いないだろう。

 香りの良い大きな葉っぱの包みを開けると、米に似た穀物と肉、野菜が一緒くたになっていた。

 ギルは包み焼きと言ったが、恐らく葉に包んで蒸した料理だ。

 うん、旨い。米にしては、ややパサッとしているが、悪くない。

 無言で食べていたら、いつの間にかどこかへ行っていたギルが飲み物片手に帰ってきた。

「ん、ノド渇くだろ」

「ありがとう」

 ハーブ茶だろうか。わりとサッパリした味の飲み物だ。

 今まで飲み物といえば水か、牛乳か、まれに果物水しか飲んでいなかったので、新鮮だ。

 うーん、深淵の塔から街門まで少し距離はあるんだが……早起きして、朝飯だけ、ここまで食べに来ようかなあ。塔の食事はどうも味気なくていけない。

 狩人をしているときは粗食でも平気だったが、野外ではなく文明社会の中で生活をしていると、食べ物に対する要望は高くなる気がする。

「じゃ、オレは仕事に行くから」

 人混みに誰かの姿を認め、ギルがそそくさと立ち上がった。

「ん?……ああ、分かった。いってらっしゃい」

「んあ?なんだ、それ」

「送り出しの挨拶」

「ふうん。じゃあな!」

 サッと人波を抜けて、灰色のフード姿の人物のそばへギルは行ってしまった。

 ……フードの人物が、こちらを見ている。こちらから相手の目は見えないけれど、嫌な感触だ。

 ギル。変な仕事だったりしないだろうな?


 市場を見て回ったあと、城下町へ戻る。

 王国着いてすぐにザグの店の物件をあちこち探したので、街門に近い辺りはまあまあ分かっている。

 なので今日は、貴族街から近い商業区の方を回ってみよう。私のような庶民の小娘は入れないだろうが、どんな店があるか見ておきたい。

 もし気になる店があれば、アルマーザなりキリーヤなりをちゃんとした格好に仕立て、私が小間使いとして付いていけば入れるはずだ。

 街門外の市場で昼近くまで時間を潰したのだが、金持ち商業区はようやく店を開いたばかりのようだった。お貴族様は、朝早くから動き出さないからだろうか。

 瀟洒な外観の店々は、服飾、靴、宝石など身を飾る高そうな物が多かった。

 ああ、化粧品を置いてる店もあった。

 ふと、ガラス窓から中を覗き込む。

 この世界の化粧レベルはどれくらいだろう?前世では美容系の事業に力を入れていただけに、少し気になる。

 今は日焼け止めも化粧水も縁のない生活をしているけれど。

 ───小汚ない子供が覗き込んでいるからだろう。

 細面の神経質そうな若い男が店から出てきて、シッシッと私を追い払った。

 ……こいつ、ニキビ痕が目立つな。この世界の化粧、大したことはなさそうだ。


 帰りに街中の市場でジャガイモに似た野菜と卵を買う。

 火竜の鱗亭に帰り、店内は空いていたので、厨房を少し借りてポテトサラダもどきを作った。

「あら。なぁに、それ」

「ま、食べてみて欲しい」

 興味津々のザグに試食してもらう。

「あ、美味しい~!これ、何で和えてるの?」

「マヨネーズと言うんだ。普通に野菜につけて食べても悪くない」

 マヨネーズの作り方は簡単。

 卵の黄身に酢と塩を入れて混ぜる。そこに植物油を少しずつ入れて混ぜ合わせればいい。

 今日、外の市場でいろいろ見たが、マヨネーズを使った料理はなかったので、珍しいだろう。

 ちなみに、こちらの世界にもサルモネラ菌がいるかどうかは分からないが、生卵を食べる習慣はなさそうなので……念のために卵は60度の湯で5~10分ほど消毒している。(湯の温度は測れないため、沸騰した湯に、同程度の常温の水を加えて作った)

「これ、店で出してもいい?」

「もちろん」

 ザグの問いに、大きく頷く。

 最初っからそのつもりだった。ザグの店は、繁盛してもらわなければ。ここから、是非、エルサール王国の食改革をして欲しいのだから。

来週も金曜日1回更新です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつも楽しく読んでます! マヨネーズは最終兵器! ほぼ何にでもあうしね~ 保存と賞味期限は気をつけないとね。
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