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ゼロ転生 ~ 気ままなモブスタート ~  作者: もののめ明
変容期

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清掃作戦開始、ということで休暇を貰う

また更新遅れました~。

 翌日から、王宮事務員による深淵の塔最上階清掃作戦が始まった。

 アルマーザは、最初はまだグズグズ言っていたが、アスワドを喚べばすぐに黙った。うん、アスワドには何かご馳走を用意しなければならない。

 ちなみに、王国滞在歴が長いアルマーザに対して、国王ですら何も言えなかったそうで(もちろん、魔術師としての腕が一級という部分もある)、今回の清掃作戦実施は非常に喜ばれた。やはり、あのゴミ部屋は問題になっていたんだな。

 そして私に褒美をくれるというので、アスワドを塔の隣の森で飼いたいと頼めば、即、了承してもらえた。アスワドがいればアルマーザが大人しいので、魔物でも大歓迎のようである。

 まあ、アスワドは私の言うことを聞くというのもあるだろうけれど。

 

 なお清掃作戦は、事務員に丸投げした。

 私はアルマーザから清掃許可をもぎ取ったので、もうそれだけで十分大任を果たしたと感謝され、手伝わなくて全然構わないらしい。

 そんな訳で、今日は城下町へ行く。

 使用人生活を始めてから、ろくに休みがなかったため(前世的に考えれば、かなりブラックな仕事だな!)、ザグやシム、ギルたちが元気か気になっていたのだ。

 

 城の周辺は薄い黄色がかった石で造られた立派な建物が多い。そのほとんどが王侯貴族の屋敷だ。

 貴族の住むこの貴族街は、道は石畳で丁寧に舗装されており、清掃もされていて綺麗だ。

 やがて、塀や柵で囲われた屋敷ではなく、3~5階建ての装飾も施されたお洒落な建物が増えてくる。大体は1階が店舗である。

 この辺は商業区になるらしい。とはいえ、貴族や金持ち相手の商売が主なので、一般的な庶民はこの辺りで買い物をすることはない。

 やがて舗装が消え、木造の建物が増えてくる。ここからが、庶民のエリアだ。

 商業区から離れていくほど、治安が悪くなるのが特徴である。

 やがて3mほどの高さの壁が現れる。王都をぐるりと囲む街壁だ。

 さらに街壁の外には、バラック小屋が立ち並ぶ貧民街もある。

 さすがに街門周辺は整備され、大きな隊商が逗留できるよう立派な宿や荷揚げ場所、簡易のマーケットスペースで占められるが、都の西側辺りはわりと酷い有り様だ。

 ニアムでは内市にさほど華やかな場所はないが、かといって外市に貧民街はなかった。大きな都ともなれば、光と闇の差が大きくなるものだなとしみじみ実感する。

 さてザグの店だが、商業区から離れた柄の悪い庶民エリアではあるものの、街門にはほど近い、主要通りに面した一角にある。まあまあ良い立地だろう。その分、賃料はお高い。しかし火竜素材の貯金(?)があるので、売り上げが壊滅的でも数年は借りられる。

 店の名は、“火竜の鱗亭”。

 いっそ竜殺し亭にすれば大繁盛するんじゃないか?と提案したのだが、ザグから「あたしは倒してないもの。リンちゃんからもらった鱗でこの店を構えられたんだから、これでいいの。本当なら、屋号は“リンの店”にしてもいいくらいよぉ!」と返されてしまった。

 ちなみに、店内の目立つところに火竜の鱗が飾られている。そんなところに火竜の鱗を飾ったら、強奪する物騒な輩も現れそうだが……デカくて禿頭の見るからに強そうなザグ相手に、そんな馬鹿な奴は出てこないだろう(もちろん、シムも明らかにタダ者じゃない雰囲気だしな)。

 

 表から店に入ると、昼どきを過ぎたところなのに、店内は賑わっていた。

 閑古鳥が鳴いていたらどうしようというのは、いらぬ心配だったようだ。

「リン!ようやく顔を見せたな。元気か?」

 似合わぬエプロン姿のシムが、肉料理片手に声を掛けてくれた。

 ……ん?以前より、やや朗らかになったような?

「飯は食ってきたのか」

「まだ。……オススメ料理を頼む」

「よし」

 店はテーブル席が3つ、そして5~6人が座れるカウンター席。それほど大きくはない。

 私はカウンターに案内された。

 何かを刻んでいたザグが私に気付き、嬉しそうに顔を綻ばせる。

「リンちゃん!いやん、もう。全然来てくれないなら、アタシのこと忘れちゃったかと思ってたわ」

 なんだか夜の店に来たような挨拶だな。

 私の隣の席にいた爺さんが、食事の手を止めて私を見る。

「あれ、この子、アンタの知り合いかい?」

「そうなのー、アタシの子!可愛いでしょお?」

「どうかのー、アンタはくりっと可愛い目をしとるが、この子は目付き悪いぞ」

 目付きが悪くて、何が悪い。

 爺さんも“アタシの子”は冗談だと分かっているのだろう。歯の抜けた間抜けな顔でファファファと笑い、私の背中をばんばん叩いた。

「ここの飯はウマイぞ~。しっかり食って、将来はバイ~ンボイ~ンの姉ちゃんになれ!」

 どこにでもいるなぁ、セクハラ親父は。

 

 ギルは店にいないようだった。

 どうやら調理も給仕も向いてなかったらしく、今は街門の外で荷運びをしているそうだ。

「夕方には帰ってくるけど、リンちゃんはすぐ戻らないといけないの?」

「別にギルに会う必要もないけど。……でも、1週間の休みをもらったんだ。その間、ここに泊めてくれると有り難い。部屋の隅の床でも気にしない」

 キリーヤからアルマーザに雇用主が替わったのはいいが、使用人は基本、住み込みだ。そして、アルマーザは塔の最上階に住んでいる。あの、ゴミ山に。

 残念ながら、私はどうしてもあそこに“住む”気にならなかった。なので、昨夜はアスワドを布団代わりに塔の横の森で寝た。

 どこか、宿を取ってもいいのだが……ニアムとは勝手が違う。子供の私が1人で宿を取るのもいろいろ詮索されるだろう。ということで、少しアテにしてここへ来ている面もある。

 ザグはニコニコと頷いた。

「床なんてダメよう!アタシと一緒に寝ましょ」

「……だから、ザグと寝たら圧し潰されるって」

 よし、当面の宿はゲット出来た!

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