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ぼっち魔女、看取ります  作者: 人藤 左
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反省・満点・turn over

 ギズ村を離れ、目指すはサザン地区。


 街道は整備されており、日が暮れる頃には着くでしょう。


 ……その道中。

「ステラ、質問なのですが」

「なんだい? この大魔女ステラ・エトワールに何か、質問かね……?」


 ふわふわの前髪をかき上げるステラ。ギズ村の一件で、自己肯定感が見事に育ち上がっています。ちょっとウザいくらいです。


「昨日の晩ずっと考えていたのですが、《空間削除(デリート)》の原理って」

「昨日の晩、ずっと? 魔法……魔術のことを? ねぇ、ボクのことは? あんだけ独占欲丸出しの可愛い可愛いシオンは錯覚だったのかい?」

 すこしこわいです。


「いえ……ステラのことと魔術のことはイコールですが……」


「む、ぅぅうーん……? 嬉しくないけど嬉しいような……。少なくとも研究報告書の名目で何冊も魔術指南書を出すくらいってことだろ……? うーん……」


 またわからない反応をしています。ステラ本人もわかっていないようなので、これについては尋ねません。


「アレはね、魔法なんだよ」


 審議の結果、ステラ的にはセーフだったようです。


「魔術ではない、あくまで(ルール)なんですよね?」

「そう。『内側には何も存在させない』っていう"魔法(ルール)"だ」

「……なるほど」

 なんだったか……。たしか『魔術教本 3』に、複雑な処理を魔術で行う、という項目がありました。机上の空論を並べ立てて、やってみよう、ということだったのでやってみた覚えがあります。


「複数の魔術を組み合わせるなりで、なんとか再現できないですかね」


 魔術を使った工程の自動化については、自著のどれかに書いてあったはずなのです。自動調理魔導具の特許を売ったお金にはお世話になりました。


「似たものならできるだろう。昨日のように圧し潰すというのなら、キミにならできる。ただ、消滅させるとなるとなぁ……」


 ニヤニヤと笑うステラを尻目に、俺は無事手頃な木を消し飛ばすことができました。


「こうですか?」


「……何してくれるんだよ……」

「何って……」

 涙目で睨まれます。


「ステラの得意な結界ですよ」

「得意だなんて言ってないし? はぁー? ボク、結界なんて全然ぜんぜん!」

 なんの謙遜ですか。


「ステラ以上の結界使いは会ったことありませんよ。俺が保証します」


 ……俺は負けたつもりありませんけど。俺は俺に会えないのでウソではありません。


「えー、そう? えへへ。そっかぁー、元宮廷の魔術師様にそう言わせちゃうか、ボク。えへへ」


 女児ですか。見た目は女児ですが。


「それでステラ先生、いまの何点ですか?」


「点数? 魔術で再現したっていうなら満点でいいんじゃない? まぁ? 魔術師が百点満点ならボクみたいな魔法使いは万点満点の世界でやってんだけどね?」


 すごい調子に乗りますね……。


「満点ってことは百点ですよね」

「……」

「ステラ?」

「…………二百点」

 二百ですか。


「やった」


◆◆◆


 魔女として、魔法使いとして色々見てきたけど、まさか()()()()()()()()()()だなんて――。


 近大魔術史のページをめくれば、シオン・ソーファーの名が出てくる。手段の一つだった魔術を実用化し、宮廷秘蔵の技も改良して流布させた、魔術界の超新星。


「すごいなぁ、やっぱり」

 あの日の約束なんて、きっと忘れてしまっているだろうけれど。


 シオンはすでに、ボクなんかが見えないほど遠いところにいて、周回遅れですれ違っただけだ。それだけなのに。それだけなのに。


 ボクは時間の許す限り、シオンと――。

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