切断・ ・
「話ってなんですか、先輩」
魔王となったブライ院長の成れの果てのうめき声をバックに、苛ついた口調のリィンが問います。
「ブライ院長が魔王崇拝で、儀式の首謀なのはわかりました。ですが、彼では俺の残したカウンター……一定魔力以下のレジストを突破できません。協力したのはリィンですね?」
俺の知る限り、魔力においてリィンの右に出るものはいません。多分俺の5倍はあるんじゃないでしょうか。
「そうですよ? コイツらがシオン先輩にイジワルしたのが悪いんです」
そんなリィンは、以前のオドオドとした感じもなくなり、むしろ自信過剰になったようです。……こんな状況でなきゃ両手をあげて喜ぶところなんですけどね。
「そうですか……」
さて。
「リィンは今、魔法使いということでいいんですね?」
「そうですよ。魔王復活に際して、抑止力として私が選ばれました。正直魔王になるのもよかったんですけど、好都合好都合、です」
へらへらと笑い、手をひらひらと振るリィン。
「……」
なにやら沈鬱な面持ちのステラに視線を移――した隙に、俺の右肩から先が『切断』されます。
「……余所見、ですか」
「失礼しました」
痛くない……。
なんなら血も出てませんし、切り口も綺麗です。これは落ちた右腕も同様でした。
「シオン! リィン、といったか……キミは、」
「いいんです、ステラ。リィンも、本当に悪いと思ってます。話を……続けてもらえますか?」
「……いいですよ。避けなかったとこ、惚れ惚れしちゃいましたから。惚れた弱みです」
冗談混じりに言って、リィンは椅子に深く座り直します。
「この通り、私は魔法使いになりました。先輩の大好きな魔女ですよ、魔女。ほら、一緒に旅に出たくありませんか? 先輩の興味、全部満たしちゃいますよ? このリィン・カーネイジ、どんなお願いにも応えちゃいます」
「俺は別に、魔女が好きってわけじゃないんですけど」
「は?」
は、と返されても……。
「ステラと出会って、かつて魔王にかけられた呪いを解いてあげたくて俺は魔術の勉強を始めたのです。宮廷魔術師になったのもその一環で……」
「はぁ……。もういいです、先輩。さよなら。大好きでした」
言って、リィンの頭がぼとりと音を立てて落ちました。
「――リ、」
リィン……?
術者が消えたことで、魔王復活の儀式も中断されます。不完全な魔王であったブライもまた、不出来なままゆっくり息を引き取りました。
「――――」
ブライ院長の方は……すでに体組成がボロボロになってしまっています。逆にリィンは、『切断』魔法で首が落ちただけで、機能的にはまだ生きている状態といえるでしょう。
「……シオン」
「少し、静かにしてください」




