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ぼっち魔女、看取ります  作者: 人藤 左
14/23

sham sleep/shy shout

 ボクが目を覚ましたのは、周りの騒ぎも落ち着いてきた頃だった。


 シオンはかねてから交流のあったらしいトラルと、ボクの知らない声音で楽しげに話す。


「しかし半年……いや、五ヶ月だったか」

「143日ですね」

「……かなり正確だな」

「正確にもなりますよ。俺がシオンのためにしてあげられるのは3つ……彼女をしっかり看取ること、それを最高の形にすること――そして、呪いを解くこと」


 こういうとき目を覚ますと、大抵寝たフリしなきゃなんだよな。なんでよりによってボクの寿命の話ししてんだよ。


 ……シオンのヤツ、呪いを解くって言ったのか? ボクの? どういうことだ?


「ワタシ……というか、人間にとっちゃ、シオン・ソーファーがそうやって足掻いてくれるだけで利益になるから、公人のワタシは応援するよ。だが、個人のワタシは……そうだな、教授がこれ以上すり減るのを見たくない」


「……そう言われると思って、俺の「3つ」の話をしたのはトラルが初めてですよ」


 なぜボクに話さないんだい! 照れ屋さんなのかい⁉︎


「一応その、姉として世話になったので……」

 照れシオン。だから、それをなぜボクの前で出さないのか。不安になるだろう、色々と。


「嬉しいこと言ってくれるじゃないか。それでどうだ? せっかく宮廷もクビになったことだし、サザン地区で区民権を取るっていうのは。歓迎するぞ」

「魔術の特許は売っても、あらかた見終わったサザン地区で暮らすのはないですねぇ」

「手厳しいな。興味がないと」

「おかげでヘリオスのダンジョンもクリアできましたし、覚えときますよ。今更俺がどこかの国に肩入れするってわけにもいかないですし」


 それはそうだ。シオンほどの魔術師が改めて腰を据えるとなれば、それは国家情勢の大きな傾きを生む。彼が宮廷をクビになったという噂の足が遅いから、まだ世間が静かなだけなのだ。


 ……コイツを除名するバカが宮廷にいるとは、ってことしばらく情報の洗い直しに時間はかかるだろうが。


「いつまでも待つよ、シオン」

「はい、トラル姉さん。そのときはきっと、ステラも一緒に」

「はは。自信があるのかないのかわからんな」

「自信じゃないですよ。俺がやるって言って、ステラが待つと言ってくれたんです。やるしかないでしょう」


 は?


 理解が追いついてきたぞ。


 おいおいおい……おいおいおい。


「シオン! キミ、ボクを生かすのを諦めたんじゃないのかい⁉︎」


 あ。


 ……思わず、飛び起きてしまった。

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