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天藤VS西園寺チーム①

本戦一回戦が終了し、4つのチームが準決勝以降へとコマをすすめた。

次の日には準決勝、そして決勝が行われる。球技試験もいよいよ大詰めといったところだろうか。


俺の属する天藤チームも準決勝に進むことができた。しかし次の対戦相手はBクラス。おそらく本試験の優勝候補の西園寺チームだ。

明日までできることをやりつくしたい気持ちもあるが、今日も試合や観戦でクタクタである――とクラスのリーダー格である中山や天藤たちは判断した。

というわけで俺達のクラスは放課後居残り練習することなくゆっくり休んで明日の決戦に備えることにした。



そして翌日、試験最終日を迎えた。

準決勝第一試合、西園寺チームとの戦いが始まる。

試合開始は10時で、昨日に比べて開始時間には1時間の余裕がある。万全な状態で試合に臨めるよう、グラウンド入りした俺たちは最後まで入念に体を温めた。


「みんなー! Bクラスに負けるんじゃないよー!」

「ボクたちの分まで優勝目指して頑張って〜」

「悔いの残らないよう全力で挑んでくれ!」


後ろの観客席から聞こえるのはクラスメイトたちの声援。

沢村、福西、中山など既に敗北しまい悔しいはずの彼らだが、気持ちを切り替えて応援に徹してくれている。

クラスメートたちが応援に集まってくれている。


しかしそれはもちろんFクラスに限った話ではない。

向こうの三塁ベンチ側の観客席ではBクラスが固まっているし、別の席には他クラスも観戦に集まっている。


それに加えて今日が試験の最終日という事もあってか、上級生も休講でこの試合の見学に来ている始末。

予選や昨日の一回戦よりも比べ物にならないくらい注目されている感じがする。


ここで下手に活躍してしまうと学校中から警戒・マークされ今後の学生生活に支障が出ることだろう。ここは極力目立たないように立ち回りながらプレーしていきたい。


「おーい皆集合だー!」

 

一足先にアップを終えてダグアウトに戻っていた岸田が声を掛ける。そして程なくしてチームメイトが集まる。


「円陣組むぞ!」

「ええ〜、めんどくさ」

「小生、こういうの苦手でやんす」

「うるせー、いいからやんぞ!」

 

瀬田や奥田など乗り気でないメンバーもいたが、岸田によって半ば強制的に肩を組み始める。

正直俺もこういう体育会的なノリはすきではないが、こんなことで変にチームの和を乱すわけにもいかないので素直に従うことにした。


「ついに俺達のチームはここまで来た! あと2回かてば優勝、200ポイントはオレ達のもんだ! とにかくまずはあのBクラスの連中をぶっ倒すぞ! っしゃあ、うおおおおお!!」

「「「……」」」

「っしゃあ、うおおおお!!」

「「「……」」」

「って、誰もついてこないのかよっ」


無駄だぞ岸田。

残念ながら天藤チームはどちらかといえば余り物の集まった集団。そんなチームにノリの良いメンバーは揃っていない。


「掛け声ありがとう、岸田君」

「て、天藤……」

「対戦相手のBクラス、西園寺さんのチームは強敵よ。彼女たちは学校の外部から協力を得て、効率的にトレーニングを積み重ねてきた。チームメンバー一人一人のレベルは他を圧倒している。実力で言えば御神楽君や五木君チームよりも植えだと思っているわ。だからこそこれが事実上の決勝戦だと思って望みましょう!」


最後は天藤が締めくくる。


『まもなく球技試験準決勝第1試合を開始します。選手の皆さんはグラウンドで整列してください』


やはり試験最終日ということもあり、この日は上級生の放送委員によるアナウンスつきのようだ。

発声の仕方もウグイス嬢っぽいし、ただの試験に過ぎないはずなのだが、本当に大会に出ている気分になる。


「整列! 審判は私、堺が務める。それではこれより球技試験準決勝第一試合、Bクラス西園寺チームVSFクラス天藤チームの試合を開始する!」

「「よろしくお願いします!!」」


いよいよ西園寺クラスとの試合が始まった。

俺たちは後攻だ。

つまり守備から始まる。それぞれ所定の守備位置につく。

うちの先発投手は岸田。

最初の投球練習で岸田の球を数球受ける。

うむ、今日も調子は良さそうだ。


『一回の表、西園寺チームの攻撃。1番ショート、黒木さん』


バッターボックスにやってきた黒木という女子生徒。

西園寺の専属メイドをこなしているクールビューティな黒髪ポニーテールの女子だ。

それにしてと美しくて、なんというかオーラがある。この選手は侮ってはいけない。気をつけろよ岸田。


「けっ、先頭が女かよ。こりゃ大したことねえな。ガーハッハッハ!」


こりゃダメだ。相変わらず調子のいいやつだな。

とりあえず黒木には謝っておくか。


「すまない黒木、うちのクラスメイトが」

「別に構わない。後で泣くことになるのはあの男ですから」

「左打ちなんだな」

「両打ちです。ただ右から投げるの相手にはこっちのほうが打ちやすいだけ……」


スイッチヒッターということか。器用なやつだ。

さすがお嬢様の専属メイドを勤めているだけのことはある。


「プレイボール!」

「っしゃあ! 三振に切ってやるぜ!」


ビュッ


カーン


「ファウル!」


いきなり当てたぞ。まあ芯からは大分外れてたけど。

まぐれか?


「やるじゃねえか。だがストライクカウントは稼がせてもらった。おらよっ!」


カーン


「ファウル!」


またファウルか。

まあいい追い込んだ。とりあえず一球外してみるか。


「ボール!」

「なるほど選球眼もいいようだな」

「このくらい大したことではありません」


だがまぐれが三度も続かない。次で決める。


「ファール!」


なるほど。こいつわざとファウルにしているな。

岸田クラスの球速には完全に対応できるらしい。さすがバッティングマシンで鍛えているだけはある。


「さては岸田に球数投げさせるって作戦か?」

「……」


答えないということはそういうことか。


「ボール、ファール、ファール、ファール」

「しつけえぞ、くたばりやがれ!!」

「期待に応えられず申し訳ありません。ストライクボールはすべてカットする。それがお嬢様からの申し付けですので」

「はあ!?」

「力はありませんが、当てるのは得意です。何10球でもお相手してさしあげますよ?」

「んにゃろう……!」


早速岸田が熱くなる。


「敬遠しよう岸田。このままではお前のスタミナが尽きる」

「黙れ! 相手は女だぞ? 引き下がれっよ。うおおお!!」


「ボール、ファウル、ファウル、ボール! フォアボール!」


結局岸田のコントロールが乱れ、フォアボール出塁を許した。岸田はマウンドの土を蹴って怒りを露わにしている。


ノーアウト1塁。2番ピッチャー、西園寺。

ここでチームリーダーの西園寺か。何か仕掛けてくるかもしれない。警戒しておこう。とりあえず牽制しとくか。

どうやら俺と同じ思惑だったのか、ベンチで控えてる天藤も同じサインを岸田に送っていた。


「くそう! いきなり出られた……」


あれ? ちゃんとサイン出したの見てたのか?


「おらあああ!!」


ちょっ、牽制は。ってかやっぱり走られた!


「セーフ!」


ノーアウト二塁。


「ちょっと岸田君、牽制の指示を出したはずよ!」

「あ、わりい。見てなかったわ」


まずいな。完全に自分のペースを失ってるぞ。


「おらあ!」


ビュッ


「速い球! ですが打てない球ではありませんわ!」


ボテボテのサードゴロ。


「ちっ、ですわ!」


しかし青山がポロリする。慌てて捕球し直してファーストに投げるが、送球が逸れてしまう。

その隙をつかれ二塁ランナーの黒木は3塁へ。


「ボテボテのあたりじゃねえか。何やってんだよてめえ!」

「す、すまない」


青山学は知力こそ高いが、運動が苦手な典型的なマジシャンタイプの生徒。

加えてこの緊張感のある舞台。エラーなくプレーできるのはそう簡単ではないか。


『3番セカンド、葉山君』


クリーンナップ。ここではじめての男子生徒か。

中肉中背の爽やか系の茶髪のイケメン。雰囲気で言えば中山に近い。面識のない生徒だが3番を任されているということはそれなりの実力があるのだろう。


カキーン


「ちっ、打ち損じたか」


浅めのレフトフライ。犠牲フライは回避できそうだ。


「小生に任せるでやんすよ……あっ」


レフトの奥田、ポロリする。一失点。


「はあああ!?」


 岸田が激怒する。


「わ、悪かったでやんす……」


どうもみんな緊張しているみたいだ。やはり観客席、上級生からの視線にプレッシャーを感じられずにはいられないか。しかし何もなければツーアウト二塁。黒木の打席を除けば、投球内容は悪くなかった。西園寺チーム相手にも十分な通用している。


『4番キャッチャー、山田君』


ノーアウト1.2塁。ピンチで4番の山田虎太郎。

こいつも西園寺の下で働いてるボディガードの男子。

1番警戒すべき打者は黒木とこいつだろうな。


「俺の使命はお嬢に勝利をプレゼントすること!」


カキーン


真芯で捉えられた。

右中間真っ二つ。打球がぐんぐん伸びていく。ホームラン、運が良ければフェンス直撃の長打コース。


「いいぞー!山田!」

「走れ走れー!」

「これで大量先制! こりゃ勝ったな」


試合が壊れていく。

相当な実力だ。

結局俺達はこのままあっさりと負けてしまうのか。

財力チートのBクラスには手も足も出ないということなのだろうか。


「アウトー!」


どういうことだ? センターは……杜王か?

あの打球に追いつくなんて。陸上部の足の速さに助けられたな。


「嘘だろ!? みんな戻れー!」


慌てるBクラス。

しかしランナーの西園寺も葉山もかなり走っていたため、帰塁に間に合わずトリプルプレー。

なんとか1失点だけでこのイニングを凌ぐことができた。


一回の表が終了し、ベンチに戻ると俺達は杜王に感謝しまくった。


「ミスしても支え合うら、それが野球だと思う」


そんなイケメンなセリフを言い残すと、杜王はバッターボックスに向かった。

特に目立つことなく、これと言って何の特徴もないごく普通の生徒だと思っていたが前言撤回だな。


さて、0-1出迎えた一回裏の攻撃。  


相手は無駄にガタイの良い黒人のピッチャー、ゴンザレス=ゴッド。うちのクラスのさわむらエミィやAクラスの王舞と同じく、外国からの留学生だ。


「あのピッチャー留学生か」

「ええ。留学生は各クラスに一人ずつ在籍しているわ」

「そうなの?」

「あら桜之宮でも知らないことがあったのね。というか次の打席はあなたよ。早くバッターサークルに行きなさい」


天藤にそう言われバットとヘルメットを担ぎ、ネクストバッターサークルへ。

程なくして杜王がピッチャーフライに討ち取られる。

さっきはファインプレーを見せた杜尾だが、凡退に倒れた。


「気をつけろ桜ノ宮、全然飛ばないぞ」

「わかった」


あの長身による高い打点から繰り出される直球。

例えるならパワ◯ロの特殊効果でいう重い球。

こういう球は力で対決するのではなく、ゴロで対応する。

相手のゴンザレス君はガタイが大きいため、スピードにかける典型的なパワータイプ。

フィールディングは苦手だろう。

こういうときのためのコツン打法もといセーフティバントなのだ。


コツン

 

案の定フィールディング処理は悪かった。

俺は内野安打で出塁することができたので。


「出たー、桜ノ宮お得意のコツン打法!」

「いいぞー桜之宮」


盛り上がるクラスメイトたち。

まあこれくらいなら大した活躍ではないし許容範囲だな。


『3番ピッチャー、天藤さん』


「天藤がんばれー!」

「ホームラン頼む〜!」


カキーン!


天藤の鋭い当たり。

しかしショートの黒木の俊敏な守備に阻まれる。

ゲッツーとなりスリーアウト。


一回の攻撃が終了した。

0-1で西園寺チームがリードである。

※1チーム10人のためピッチャーは二人

天藤チーム

 3番ピッチャー天藤

 4番ピッチャー岸田

西園寺チーム

 2番ピッチャー西園寺

 5番ピッチャーゴンザレス


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