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中編

この男、エイヴィリス殿下はこの国の第一王子だ。

つまり目の前の陛下の息子で後ろで小さくなっているブロイト殿下、さっきまで私の婚約者だった男のお兄様だ。


金の髪に紫の瞳をもつ彼はどこから見ても美形だ。

何故こんな整った顔をもつ人が存在するのだろう。

何度みてもため息が出てしまう。


そして彼は同時に私の協力者である。


実は私は転生者だ。

せっかく社会人になったと言うのに新人歓迎会の帰りにほろ酔いで歩いていた時に少しよろけて道路に出てしまった。運悪くトラックが来ていた。交通事故にあい、前の人生を終えた。


もう死んだのか?と思うながら目を開けたらヒラヒラし寝着を着せられてベッドに寝ていた。


もうわけがわからなかった。

公爵令嬢に転生していたのだ。


なんだってこんなことになったんだ。

頭の中でぐるぐる考えを巡らすが状況は変わらない。


何を隠そう、前の人生は俺は男だったのだ!

転生したのはまあいいだろう。

ただなぜそれが女なのだ?


どうすればいい?

困り果てたが流石に小さい時から公爵令嬢として育てられればそれなりに女としての仕草や言葉遣いは身につくものだった。


年頃になる頃には周りからため息をつかれるほど公爵令嬢オーラを放てるくらいにはなった。

その反面、女の子らしくなる顔つき、体つきには全く慣れなかった。

鏡で自分をみるのは未だに恥ずかしい。

今まで母親くらいしか見たことのなかったものが自分の胸にあるのはなかなか慣れないものだ。

少し触ってみたりするが自分の体じゃないみたいだ。

お風呂に入るのに侍女たちが手伝ってくれるのは流石に耐えれなくて遠慮させてもらった。


すこし切れ長の水色の瞳。艶がありサラサラ流れる少し濃い目の茶色の髪。

自分で言うのは何だが、綺麗なお姉さんの部類だと思う。


何より俺が転生した公爵令嬢は前世の妹がプレイしていたゲームの中の悪役令嬢なのだ。

攻略対象である第二王子の婚約者の立ち位置、お決まりパターンだと国外追放になるらしい。


ただ、ヒロインが第二王子を選ばなければ何もない。

まあ、確率は高くなく、低くないだろう。


しかし問題はそこではない。

男と結婚するんだ。することはするんだろ?

ありえない!

俺が男に押し倒されて…あれや…これや……あ、いや…

そんなことはあり得ない!

なんとか結婚しない手はないのか?

ヒロインに第二王子を選ばせて婚約破棄されればいいんじゃないか!


そんなことを毎日考えていた時衝撃の事実を知った。

第一王子、エイヴィリスは俺の前世の親友だった。

こいつも転生していたようだ。

たまたま第二王子の婚約者となり顔合わせの為のお茶会で同時に気づいた。


女に転生していたことにはかなり笑われた。

どうもこいつは子猫を助けようと自ら車の前に飛び込んだらしい。

で、妹同士も同学年で仲が良かったから当然こいつもゲームを知っていた。


「笑えるだろう。お前が女に転生してるんだ。笑わない選択はない」

「俺だって嫌だ。ったく何なんだ。ヒラヒラして歩きにくいし、コルセット締め付けられると息すらできないんだぞ!」

「割と胸あるよな?ほら触らせろよ」

「はあ?嫌だ!」

「減るもんじゃないし。だってお前が女だって思いたいんだ。ほら」

「あっ!」

「前世のお前はわりと背も高かったし、見るからにスポーツバカだったけど今は華奢だな」


たしかにサッカー大好き少年だった。

それなりに筋力作りしていたし今とは似つかない体型だった。


「だから女なんだから仕方ないだろ!ったく手を離せよ!あっ…」

「おっ、見た目以上」

「ふっ…」

「おっ?感じるのか?」

「わけないだろ!はっ…やめろ!触るな!!」

「面白いな。俺でお前が感じる日が来るなんてな」

「やっ、やめろ…手を離せ!おいこら!揉むな…んっ…ふっ」

「やだやだ、お前も今は立派な女なんだな。すぐに組み敷けるな」

「は?おい!変な気を起こすなよ。俺は男に体なんて明け渡す気はないからか」

「でも、ブロイトの婚約者なんだろ?嫌でもあいつにやられるんだぞ?」

「無理だ!想像するだけでも無理」

「じゃあ、どうするんだ?」

「…だから、協力して欲しいんだ。」


ヒロインのセーシェルが第二王子のブロイトを選ぶと第二王子が王太子となる。

すると第一王子は?はて、どうなるんだっけ?


「えー嫌だよ。だってヒロインが第二王子ルートに入ると俺は嵌められて隣国の40くらいの女王の何人目かの愛妾にならなきゃいけないんだ。そんなの俺に得ないじゃん。単にお前が、女として生きることを受け入れるだけじゃん」

「そんな簡単に言うなよ。なかなか慣れないんだよ」

「俺が女にしてやろうか?」

「はあ?待った!待った!お前とどいどうこうなるのはもっとあり得ない。言動みてると前世のお前の顔にしか見えない」

「はははっ面白ぇ。前もバカ真面目だったけど今も変わらないな」

「ほらほらその顔、前世と全く同じだ!こっちとて真剣なんだ。からかわないでくれよな」

「だから第二王子派の今の私のお父様が第一王子派に覆ればいいんだ」

「私っかお父様とか笑える。なんやかんや言ってもちゃんと公爵令嬢が身についてるじゃん!」

「そこつつかない!」

「んーそんな簡単にいくかな」

「ヒロインと第二王子をくっつける。で、俺が婚約者が他の女に手を出したからと親に泣きつく。割と今の両親はレイリラを溺愛してる。従って第二王子への信頼が落ちる。そして第一王子を推す!で大丈夫だ」

「簡単すぎないか?」

「俺がうまくいくって言うんだから大丈夫だ」

「まあ、一度やってみるか?」

「さすが!話わかるな」

「で、お前はその後どうするんだ?」

「んー修道院にでも行こうかな?」

「おいおい、公爵はお前を溺愛してるんだろ?手放さないだろ」

「んー。じゃあプトラスレイド公爵子息のところに嫁ごうかな?」

「は?なんで?」

「あの子息はあっち専門だから女には興味ないんだって。少し前にうちに来たプトラスレイド公爵が父様と頭抱えながら話していたよ。だから女には手を出さない!」

「ふーん」


で、俺たちはまず第二王子とヒロインをくっつける作戦を立て始めた。

エイヴィリス殿下はヒロインに好意を持っているようにブロスト話す。

実は第一王子エイヴィリスは側妃の子供。第二王子ブロイトは皇后の子供なのだ。

当然自分の息子を国王にしたい皇后陛下が裏で貴族をたばねているみたいだ。第二王子もなる気満々で願わくば王太子になろうと画策していた。

今や流れは第二王子だ。


しかし物語設定なのか単に俺の前世の友人が世渡りがうまいのかはわからないが、今、この世界で第一王子はいろいろな面で手腕を振るって、手柄を立てている。

周りからは王太子に見合うのは第一王子だろうと囁かれ始めている。

少しゲームとは違う動きをしているがそこはまあ置いておこう。

それを妬んでいる第二王子に第一王子が気になる女の子がいるんだとか言えば結果は簡単だ。

そう自分が取ってしまおうと考えるはずだ。


更にゲーム内で起こるヒロインと第二王子のイベントをことごとく演出してあげた。

逆に他のイベントを潰してきた。

当然第二王子はヒロインに熱を上げ、ヒロインは第二王子ルートが確定した。仕舞いには手を出してしまったようだ。

まあ、街に出かけて雨に降られて雨宿りがてら立ち寄った近くの家で二人きりになるように仕掛けたのは俺たちの策略だがな。

面白いように第二王子もヒロインも動いてくれた。

で、結局あの後歯止めの効かなくなった第二王子は学園の生徒会室やら倉庫やら夜会の庭園やら至るところでヒロインと楽しんでいた。まあその結果は簡単にわかるだろう。


「子供ができただと!」

「父上、申し訳ありませんが、私とセーシェルは愛し合っております。どうか彼女と結婚させて下さい!」

「娘はどうなるんですか!殿下!あなたは娘の婚約者でありながら他の女に手を出したんですか?」

「セーシェルとやらは男爵令嬢だと聞いたが…」

「身分なんて関係ありません。私は彼女がいいんです!それに彼女のお腹には私の子供がいるんです!彼女以外考えられません」

「殿下!それなら何故娘との婚約を先に破棄していただけなかったのですか?娘は婚約者を寝取られたと笑われます」

「宰相の言う通りだ。順番と言うものがあるだろう。それに宰相の娘のこと、周りのことを考えなければならなかったのではないか?短絡的に行動しすぎだ」

「父上…」


「父上、お呼びでしょうか?」

「ああ、申し訳ないな」

「兄上!なぜここに!あなたは隣国に行くように手配…あっ…いえ…それは…」

「隣国?なんだ?そんなことは聞いていないが?」

「あ…母上が…そう…なぜ?だから…」

「もう、私がいないから王太子の地位は自分のものだと思っていたのか?図星だな」

「エイヴィリス、すまないな。実はこの馬鹿息子が男爵令嬢にうつつを抜かしてしまったようだ。ったく王家の恥だ」

「…エイグラン公爵令嬢、レイリラ嬢にこの話は?」

「まだしていない…私も今聞いたばかりだ。宰相…本当に申し訳ない。こんなやつの元に貴殿の娘を嫁がせるわけにはいかない。ひとまず結婚はなかったことにして欲しい」

「結婚式前でよかったですが、親としてかわいい娘を蔑ろにされたんです。申し訳ありませんがそれなりの覚悟はおありなんでしょうね?ブロイト殿下」

「まあ自業自得、身から出た錆ってとこだな。って、そうしたのは俺だか…」

「エイヴィリス?今何か言ったか?」

「あ、いえ何も申してはおりません。」

なんて会話が繰り広げられたのを聞いたのはその日の夕方だった。


「で!で!あいつはどうなった?」

俺は身を乗り出して友人に聞いた。

「ひとまず謹慎だ。多分伯父上の領地にやられるだろう。伯父上には女の子しかいないからな」

「まあいいんじゃないか。その程度ですんで。でっ?」

「で?」

「でって?俺の結婚式はなくなったんだろ?」

「あ、いや…もう近国や貴族には招待状が送ってある。申し訳ないが結婚式はあげる」

「はぁ?なんだよ。それ!」

「ってかお前は公爵令嬢なんだぞ俺の前でも言葉使い気を付けろよ。誰が聞いてるかわからないからな」

「はいはい。ちゃんと使い分けてるだろ?」

「何度も言うがお前は女なんだ。自覚しろよ」

「もう固いこと言うなよ。お前の前だけしか俺を出せないんだ」

「ってそろそろ女に転生したことを受け入れろよな」






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