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君が傍にいるはずなのに  作者: ラティオ
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理解が追い付かない現象が多すぎるー前編―

「うわぁ、え、ちょっと! ここって山小屋じゃなかったの?」


七尾が二階に案内された時の第一声はこれだった。

一階は確かに質素なものしか置いていなかったから、二階も同様に物寂しい空間が作られていると考えるだろう。

だが、そんな予想を大きく裏切り、二階には全てが揃っていた。


「綺麗なIH完備のキッチンに、高画質かつ大画面のテレビ! 掃除機にルンバまで! お金持ちにも程があるわ」


そう、七尾の言ったとおりこの部屋には文字通りお金持ちを称されるだけの機器が数多に存在していた。

勿論水道は全てお湯だし、部屋を案内して貰ったがお風呂も広々とした空間が確保されていた。


「吹雪いた山奥の小屋って環境、どこ行ったのよ!」

「一階は質素な生活をしていると見せかけるためのカモフラージュだからな」

「カモフラージュ? ていうか、電気どこから引いているのよ」

「自家発電だよ」

「当たり前のように言わないで、悲しくなるわ」


親切にも詩竜が説明してくれるが、七尾のこれまでの生活環境と言えば、持ち運び可能なガスコンロを使用してお湯を沸かし、インスタント麺を食べる食生活であったし、睡眠に関しては車の中で寝袋に包まって眠るというその日暮らしのホームレスのような生活をしていた。

それらに比べては全てが天国のように輝いているように見えたのだ。


「その生活は酷いな」

「こら、雄介。七尾さんに失礼だろう? 人には色んな事情があるし、その人らしい生き方だって存在する」


雄介のツッコミに詩竜はすかさずフォローを入れるが、その発言が逆に傷つける行為になっていることには気づいていないようだ。

いうなれば自分たちの生活が裕福な事実を踏まえ、オブラートに包んだとは言え、七尾の生活が酷いということも否定してはいない。


「ありがとう、詩竜さん。あまりフォローになっていないわ」

「え! ごめん」

「良いのよ」


それにしても、と七尾はセリフを続ける。


「よくこれだけの電化製品を集めたものね。どれも高価なものなのに。このマネキンなんてどこで入手したのよ? こんな可愛らしいお人形みたいな姿した女の子、そうそう見つけられないわよ」

「どうも、ありがとうございます」

「ひゃあ!」


身近にあったマネキンを褒めたら、返事をした。

というか、七尾に対してお礼を言ってきた。


「ど、どどど、どういう事! ま、まさか……このマネキンってアンドロイドな訳⁉」

「大正解です、お客様」


そのマネキン……もといアンドロイドは腰まである新緑のような透き通った緑色の髪を持ち、シンプルな生地だが淡い水色のワンピースを着用して、腰をぬかした七尾の前にしゃがみこんだ。


「初めまして、私の名前は琥珀と言います。以後、お見知りおきを」


透明感のある黄褐色の瞳が七尾をじっと見つめる。

とても人工物には見えないクオリティで、こんなシンプルな恰好をしていなければ、さながら人間だと言われても気付かないかもしれない。


「ど、どうぞよろしく。あたしは七尾よ」

「七尾ですね、光彩登録を完了いたしました。これでこの家への出入りが自由に行えますよ」


どうやら先程瞳を見つめた時に光彩を登録されていたようだ。

察するにこの家のセキュリティも彼女・琥珀が管理していると見た。


「いやー、凄いね。この世界はあたしの知る世界よりもかなり未来の時代にいるみたい」

「IHやアンドロイドの存在を知っているなら理解は早いと思うよ。知らずに来る人もいるしね」

「そうなんだ?」

「俺もそうだったよ。雄介に教えて貰うまでこんなハイテク機器があるなんて知らなかったんだ」

「うん?」


含みのある詩竜の言い方に違和感を感じた七尾。


「詩竜さんって雄介と兄弟なんだよね? 一緒にここへ来たんじゃないの?」

「あぁ、違うよ。俺と雄介は確かに兄弟だけど、別の時間軸から来たからね」


また一つ、理解の追い付かない現象が起きた。

そう思った七尾だった。


察しの良い人は最後の一言でわかると思います。

そこに至る過程を妄想しながら次話配信をお待ち下さい。

辛口でも良いので、評価もよろしくお願いします!


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