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君が傍にいるはずなのに  作者: ラティオ
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どうしてこうなったのか意味不明すぎるー中編―

次に彼女が目を覚ましたのは、山奥の小屋の中だった。

目を覚ましたのは良いものの、覚えのない景色、肌寒い空気に身震いする。


「あたし……生きてる?」


何故と言わんばかりの表情で自問自答するが、返答はない。

ベッドで布団をかぶっていたので誰かがここまで運んでくれた事は容易に予想がつくが、疑問が残るのは身体に傷らしいものが見当たらない点だ。

あの状況で万が一にも死ななかったにしても拳銃で撃たれ死を覚悟したことは記憶に新しい。

重症を負ったはずの彼女にとって、それは理解しがたい現象だった。


「目が覚めたのか」

「!」


突然、背後から声がかかったと思い振り返ると、彼女の視界には一人の青年の姿が映っていた。

白いシャツに黒いジーンズと、何やら黒い大きなバックを肩から下げているが、見た目は黒髪でいかにも日本人っぽい雰囲気を(まと)っている。

青年は心配そうに彼女を見つめていた。


「体調はどう? 君、ウチの家の前で倒れてたんだよ」

「えぇ、大丈夫みたい、助けて頂いてありがとうございます」

「どういたしまして。君、日本語分かるんだね。赤髪だったからてっきり異国の人かと思ったよ」

「え、赤髪?」


青年に言われて七尾は初めて自分の髪を手で触れた。

肩先まである髪は深紅に染まっており、その紅い髪はまるで、酸素を得たばかりの動脈血のように色鮮やかだった。

少なくとも仕事で髪を染めたことはない。

元々黒髪だったことを踏まえても、眠っている間に髪色が変わる現象についても、いまいち理解できない。


「俺、詩竜(シリュウ)。ね、君の名前は?」

「……七尾よ」

「七尾さんね。今晩はもう遅い。ウチに泊っていくといいよ」

「でも迷惑なんじゃ」

「そんなことないよ。それに外は吹雪いている。出歩くのは危険だよ」


一瞬肌寒く感じたのは吹雪が原因だったのだろう。

改めて耳を澄ますと風の音がよく聞こえる。


「それに、なんだか訳アリっぽいしね。俺は家事を済ませてくるからもうちょっとゆっくりしておいてよ」


青年……もとい詩竜は、にこやかにそう言い残して荷物を持って上の階へ上がっていった。

詩竜の気配が消えて空気が静まり、改めて冷静に周囲を見回してみる。


部屋を観察して思ったことは、この家が木造建築でおそらく2階建て。

ベッド以外にあるものは、玄関と思しきドアと、暖炉、ソファー、階段のみだということ。

随分と質素な生活をしている様子が見受けられた。


「でも、外が吹雪いているにしては、部屋が暖かいような」


雪が降る条件は、地上の温度が3度以下であること。

目が覚めた時は確かに肌寒く感じたが、外が吹雪だと考慮すれば、室内は断然温かいほうだ。

しかし、木造建築で尚且つ部屋にある暖房器具は暖炉のみ。

いくら布団に入っていたとしても、それだけで部屋全体が暖かく感じる理由にはならない。


「ドアか壁にでも、なにか仕組みがあるのかしら」


そんなことを考えて玄関のドアを見つめていると、今度は別の誰かが入ってきたようだ。


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