表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/301

20 お義父さんとはなんぞや

 


 ええと。

 先日、おばあさまの話は致しましたが。

 今回はその息子さんであり、ダンナのお父様であられるお義父さんのお話です。


 まあ、今までもちらほらお話はしてきておりますね。

 うちのネコが、初対面にも関わらずさっさとそのお膝にお邪魔しておったとか、私があちらのおうちにお邪魔したとき、お手製のおせちを振舞ってくださったこととかは。


 今回はそれ以外の、とある事件のお話。

 まあ一応、「お義父さん校庭仁王立ち事件」とでも銘打っておきましょうか。


 もちろん、ダンナから聞いたお話ですが、ダンナとてその当時、まだ影も形もなかった時代のお話です。

 お義父さんは、とある男性のために、とある学校の校庭に、たったお一人で仁王立ちになられたことがあるんやそうです。

 あ、ダンナはその方のことを「おじさん」と呼んでおりますが、別にほんまもんの伯父さん(あるいは叔父さん)なわけではありません。随分と遠縁のご親戚筋のかたでいらっしゃるようですね。わたしも直接存じ上げているわけではありません。


 で、その数十年前。

 そのおじさん(仮にBさんとでもしましょうか)は、中学生か高校生かで、とにかく当時でいう所の「不良」、つまりちょっとばかしやんちゃをなさってたんやそうです。

 そういう、あまり素行のよろしくないグループに所属していて、確かにあれやらこれやら、やんちゃはなさっていた。でもまあ、お義父さん――とはいえ当時はご結婚もまだの青年といっていいお年やったはずですが――は、Bさんを可愛がっておいでやったと。

 

 で、ですな。

 あるとき、そのグループが何か問題を起こした。まあようある話です。

 でも、問題はその責任を、みんなして全部そのBさんにおっかぶせようとしたことやった。

 聞けばBさんは、当時、母子家庭でらしたそうで。結局そういうお子は、なんやかんや舐められるわけです。なんや聞いてるだけでもめっちゃ腹たちますけどね。

 まわりの連中も教師たちも、「あいつが悪いっちゅうことにしといたれ」と、つまりはそういうことやったんです。

 もちろんBさんがなんも悪くないとは言われへんけども、せやからて、彼に責任のすべてをなすりつけて逃げようやらするのんは卑怯やし。学校も学校で、ろくに調べもせんと「そいつを犯人にしとけばええやんか」的な対応やったっちゅうのは、まあ問題ですわな。


 ほんでお義父さん、かっちーんと来てもたと。

 ひとりでその学校に乗り込んで、校庭のど真ん中に立ちはだかって、「ゴルァ、舐めとんなや! 教師出てこいやあ!」をやらかしたんやそうです〜。

 勿論、校舎にいる生徒はみんな、窓に鈴なりです。

 うわ〜、すごいわ。


 慌てた教師やら教頭やらが出てきて、「ま、まあまあ、中へちょっと入ってお話を」とか言うたらしいんですが、

「はあ? やかましい! 話あるんやったらここでせえ!」

 の一点張りやったそうな。


 お義父さま、ダンナのお父様なだけあって、けっこう小柄なかたなんですよ?

 でも、気風きっぷというのか、そういう性根はしっかり据わってらして、曲がったことは大嫌いやったんやそうです。さすが、あのおばあさまにしてこの子ありですな。

 まあ、私にとってはただただ優しいお義父さまやったのですが。

 先ほども言いましたとおり、お手製のお節いただくぐらいのことで。ははは。


 ネコといえば、昔は「ネコ取り」言うて、町のあっちこっちに捕獲するための罠を仕掛けてネコを捕まえる業者がありました。

 お義父さんは、大のネコ好き。

 せやからもう、そんなん絶対に許されへん。

 ほんで、罠を見つけたらもう片っ端からそれを壊してひっぱりだし、家の前にずらーっと並べて、その前で業者が回収に来るんをすごい眼光で睨みつけて待ってはったそうです。

 まあ業者さんも生活あるやろうけども。

 ネコにとったら神サンみたいな方ですな。もう、後光がさしますな。


 なるほど、うちのネコが初対面にも関わらず、お義父さんのお膝にひょいひょいと乗っていって、すぐに落ち着いてたわけがわかりました。

 そう、あれは確か、わたしたちの結婚式の日やったもんで、お義父さんはタキシード姿やったかと思います。

 その膝に、うちのネコがどっかりと……。

 いや、ちょっと考えたら冷や汗でてきた。


 そのお義父さんももう、子供うまれた頃には病を得られてて、やっとその赤ん坊の顔を見せたあと、すぐにお亡くなりになってしまったわけなのですが。

 今でもダンナ、大きくなった娘を見ては、

「あんなん、死ぬような病気でもなかったのに。オヤジ、もうちょっと生きて●●(娘の名)見てやって欲しかったなあ」

 とよく言います。

 男性はアレですね、うちの父もそうなんですが、「ああ、ワシもうアカン」と思うともう、坂を転げ落ちていくようにほんまにアカンようになる生きもんみたいですねえ。

 なんでやろ。



 まあ今でも、このアホな状態の家族みて、おばあさまと一緒にあちらで、

「ほんま、しゃあないなあ。なにやっとんねん」

 て、わろてらっしゃるやろなあとはよく話をしますけども。


 今ごろは、うちのネコも一緒におって、楽しく過ごしてくださっているとええなあと思う、今日この頃のヨメなのでした。

 にゃはは。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ