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つづきにゃ

 一仕事終えた私は眠くにゃったのでとりあえず木陰でお昼寝タイム。

 ご主人の危機? にゃー、そのうちそのうち。眠くにゃっては戦はできぬだにゃ。

 すぴすぴ寝ていると背後から気配が。敵襲! 敵襲! 私の背後をとるとはいい度胸だにゃ!



「シャーッ」

「……悪い。起こしてしまったか」

「……にゃ」



 にゃんだ。筋肉バカか。

 堅物そうなイケメン顔を見た瞬間、身体に入れていた力が抜けていく。だるーん。私はタコにゃ。

 にしてもこの筋肉バカがこんにゃに私に近寄ってきたのは初めてだにゃ。にゃんの用かにゃ。もし「用がなければお前に会いに来てはダメか?」とかほざきやがったら引っかいてやる。昼寝の邪魔は万死に値するにゃ。



「にゃー」

「いや、別に用はないんだが」

「にゃああ!」

「そう怒るな。用はないが、今日はナーシャと一緒じゃないんだなと思って」



 用がにゃいにゃら起こすにゃ! 今日は睡眠時間が足りてにゃいのにあんにゃに走って疲れてるんだにゃ!

 ……ん? あれ、そうじゃにゃくって。

 にゃんで言葉通じてんの。


 いやいや、気のせいかもしれにゃい。

 というかニャーシャといつも一緒にいるの見られてたんか。ご主人、猫にはにゃしかけてる姿婚約者さまに見られてますよー。イタイ子だって思われてますよー。



「イタイって、何がだ?」

「…………。にゃーにゃ」

「ああ、今日はいい天気だな。でも夜は雨が降るらしいぞ」



 つ、通じてるうううう!! にゃんで猫語通じてんの?! というか私の思考が読めんの?! にゃんで?!

 …………あっ、もしかして、猫レベルの脳みその所有者だから?

 ……すまん、筋肉バカ。バカバカ言って、本当のバカにはバカって言っちゃダメだった……。



「なんかものすごく失礼なこと考えてないか」

「にゃぁ」

「そうか、俺の気のせいか。よく周りから鈍感って呼ばれるけど、また勘が外れたか」



 いやむしろすんごい勘の持ち主だと思うよ。猫限定で。

 というかこいつにはにゃし通じるんにゃら、私の口からニャーシャの無罪を告げればよくにゃい? おおっ、事件解決! これで私のごはんは永久に安泰にゃ!



「にゃにゃにゃ」

「メグは尻軽でいろんな男に色目を使ってる? はははは、そんなはずないだろ。あの心優しいメグが」

「にゃー」

「え? 今日のお昼もメガネの男と食べてた? いやそいつはただの友達だって言ってたぞ」

「にゃにゃにゃ! にゃーにゃにゃ!」

「おいおい、メグが嘘をついてナーシャを嵌めようとしてるってなんだよ。メグがするはずないだろ。すっごく優しいんだぞ」



 だめだ! バカだ! 大バカだ!

 言葉は通じてもバカだから意味がない! というか猫が言って信じてくれるんにゃらそもそも婚約破棄なんて大事にはにゃらにゃいよね! 私もバカだ!

 はぁはぁ怒りと苛立ちの息を吐いていると、ふと、筋肉バカがかにゃしそうに目を細めた。

 なんだにゃ? ごはん食べ損ねたのか? 私のごはんはやらにゃいぞ。



「でも、ナーシャがメグを傷つけるようなことをしたとも思えないんだ」

「にゃ!」

「ああ。そうだよな。ナーシャはお前に欠かさずご飯を持ってくほど、優しい子だもんな」



 にゃ、にゃんだコイツ……分かってるじゃにゃいか!

 筋肉バカにゃんて言ってごめん。これからは特別に本当のにゃまえで呼んでやるにゃ。えっと、コイツのにゃまえは、ヴォ、ヴォル、ボル、ボ……。

 言いにくいから筋肉バカでいいにゃ! にゃんでそんにゃ言いにくいにゃまえにゃんだ!



「最初はよくわかんない奴だなーって思ってたけど、お前にエサあげてるとこ見てからな……。あー、この子こんな風にして笑うんだなーって、ちょっと感心して」



 ご主人! ご主人! 脈ありでっせこいつ!

 しかも私が恋のキューピッドににゃっちゃってる?! いやー、照れるにゃー、もう!



「こんな奴と友達になれたら楽しいだろうなーって……っていてぇ!」

「キシャー!」



 筋肉バカの手を思いっきりひっかいた。

 死ねこの鈍感!! 貴様その鈍い頭でどれほどの乙女心を踏みにじってきた! 照れてにゃんにゃん言いかけた今の一瞬を返せ!

 のくせにヒロインのメグにはちゃっかり惚れるんだから嫌ににゃっちゃうよ!



「メグ? メグには別に惚れてないぞ」

「……にゃ?」

「ああ、惚れてない。いい友達だ。というかメグが現在特定の誰かと付き合っているという事実はない。言い寄っている人間は何人かいるが、全員友達らしいからな」



 いやヒロインのそれは逆ハーエンド目指してるからそうにゃるでしょ。

 え? でもマジ? こいつヒロインに惚れてにゃいの? え、にゃんで?


 …………あっ、もしかしてあのイベントか!

 確か筋肉バカを落とすためのイベントとして、筋肉バカの飼ってる犬に餌をやるってやつがあったはず。道で迷ってる犬にわざわざご飯を作って与えるんだ。それがたまたま筋肉バカの飼い犬で、筋肉バカはヒロインにお礼を言いつつ、動物にも分け隔てにゃく優しく接するヒロインに惚れるっていう……。



「にゃーにゃにゃ、にゃにゃんにゃにゃ?」

「よく知ってるな。そうそう、メグはうちのダッシュにご飯をくれたんだ。優しい子だなーって思ったよ。でもナーシャも毎日お前にメシをやってるぐらいだから、性根は優しいんだろう?」



 これだ! やっぱりこれだ!

 筋肉バカは、先に私にご飯をくれるニャーシャを見てたから、ヒロインの優しさにグラつかなかったんだ!

 やったねニャーシャ! そんでもってお手柄わたし!



「……なぁ、猫。メグが嘘をついているとは思えない。だからといってナーシャが人を傷つけるようにも見えない。お前は、どっちが真実なんだと思う?」

「にゃーにゃ」

「そうだよな。お前はナーシャの飼い猫だからナーシャを信じるよな」



 ちがうちがう! 本当にヒロインのほうが嘘つきにゃんだって!

 っていっても信じにゃいかぁ……。だって私、完全にニャーシャ側って認識されてるもんねー。

 ううーん。…………はっ!



「にゃにゃ! にゃーにゃにゃ!」

「えっ? ナーシャに会いに行くのか? お前と一緒に?」

「にゃん!」

「いや……でも用もなく会いに行くってのは……」

「シャーッ」

「わ、わかったわかった。行くからもう引っかくな」



 私のことは用もにゃく起こしたくせに、ご主人に変にゃ遠慮すんじゃにゃい!

 毛を逆立てて威嚇すると、筋肉バカも観念したようで私の腹に手を入れて私を抱っこする。


 ヒロインを不審に思ってくれにゃいにゃら、ニャーシャとの距離を縮めてニャーシャを信じてもらおう、作戦!

 あのコミュ障も私がいるにゃら少しは素を見せてはにゃせるだろう! 筋肉バカだってご主人とにゃかよくにゃりたいって思ってるし。私はにゃこうど役を務めるにゃ!




*  *  *




 結論。作戦は失敗だったかもしれん。



「な、なななななんのようざますか!」

「ああ、いや、特に用はないんだが……」

「そそそそそそうざますか! それはよろしゅうござんした!」



 ニャーシャが狂った。にゃんだ“ざます”って! “よろしゅうござんした”もちょっと違くにゃいか?!

 甘かった……ニャーシャのコミュ障っぷりを私は甘く見ていた……! さっきからご主人の視点が定まっていにゃい。空の雲を追ったかと思えば右向いたり左向いたり、とにかく目ん玉が忙しにゃくぐりぐり動いている。

 ちょっと気持ち悪いにゃ……。筋肉バカもおんにゃじこと思ったのか、若干体がのけぞってる。

 こら! おんにゃのこに対して失礼にゃ態度をとるんじゃにゃい!



「いや、そうはいってもだな……」

「ななななんでございましょう?!」

「ああ、すまない。ナーシャにではない。この猫に言ったんだ」



 ちょっと旦那ぁ、おんにゃのこの目の前で猫とはにゃすのやめたほうがいいと思いまっせ。

 ぶらーん、と筋肉バカが私の両脇をつかんでご主人の目の前に持ってくる。にゃー。この体勢息が詰まって嫌いにゃー。


 と、ご主人の視線がぴたりと私に向けて定まった。おう、ようやく落ち着いたかコミュ障。そう思うまもにゃくご主人の両目からぶわっとにゃみだが!

 うえっ?! にゃ、にゃんでぇ?! コミュ障って言ったのそんにゃに傷ついた?! でも事実は早目に受け止めたほうが改善の余地あるんだよ?!



「お、おマルぅぅぅぅ……!」

「に゛ゃ?!」

「わだ、わだし上手く喋れない! ヴォルフラムざまの前だとぎんぢょうして上手く喋れないよぉぉ……!」

「にゃ……にゃあ」



 えー……それ本人の目の前でいうか……?

 あー、いや、この様子じゃ筋肉バカのことが目に入ってにゃいのかにゃ。私を見たとたん安心して、とか? 条件反射的に素に戻って、とか?

 でもご主人……。愛しの筋肉バカは目の前にいるよ……。ご主人のにゃみだとはにゃみずを驚いたように凝視してますよ……。



「にゃあ」

「も、もっどながよぐなりだいのにっ、もっどいっばいお喋りしたいのにぃぃぃ……! おマルぅぅぅぅ!」


「……俺も、ナーシャともっと話がしたい。それに、仲良くなりたい」



 ぼそりと、筋肉バカが言った途端、ご主人の目線が少し上を向いた。私の上、つまり筋肉バカに。

 その時のニャーシャの顔は見ものだった。瞬間氷結みたいにカチンコチンに固まり、息すらも止めてしまう。にゃみだもはにゃみずもようやく止まったけど……もう遅いよね。

 あああ……だから目の前にいるって言ったのに……。


 でもこれでよかったっぽいにゃ。筋肉バカの目には迷いがにゃくにゃったし、ニャーシャを気持ち悪がってる様子もにゃい。

 むしろ好意的に見てるようにゃ? やったにゃ、ご主人!



「ナーシャがこの猫にエサをあげる姿を何度も見てきた。君がどんな人間か、知りたくなった」

「あ、う、え」

「今日ちょっとだけ分かった気がする。ナーシャは上がり屋で、ちょっと変な人で……でもいい人だ。君のような人を婚約者に選んでくれた両親に、感謝したい」

「わ、わた、し……」

「これから少しずつでいいから、俺と話をしてくれないか。俺は君と仲良くなりたい」

「う、うぇ……ぁい、はいぃぃぃ……」



 ボロボロと、一度は止まったにゃみだがご主人の両目からあふれ出した。はにゃみずもやっぱり出ているので、正直きたにゃいにゃき顔だと思う。

 でも、よかったね、ご主人。ちょっと前進だよ。まだまだ恋の成就には遠いかもだけど、すくにゃくともご主人の恋した人は間違ってにゃかったと私も思うよ。


 おい筋肉バカ! わかっただろ! ニャーシャは悪いことできるようにゃ器用にゃ人じゃにゃいよ!



「にゃーにゃ!」

「猫……ああ、わかってる。ナーシャはメグに嫌がらせなんかしていない。つまり……メグが嘘をついている、ということだ」

「にゃ!」



 正解! やるにゃ筋肉バカ!

 ふっ、ふっ、ふっ。ご主人の未来と私のごはんを奪おうとした卑劣にゃる性悪ヒロインめ! 待ってろ! お前の化けの皮はこのマル様が剥いでやる!

 猫だからってにゃんもできにゃいと思うにゃよ!


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