はじまりにゃ
※最初から最後まで猫が主人公です。
※ギャグメインに、さらっと読める作品めざして書いてます。ヤンデレは出ますがそんなに重くなりません。
※「にゃ」を「な」に直してお読みください。
にゃんで私って猫にゃんだろう。
せっかく前世人間だったのに! しかもこの世界、前世でやった乙女ゲームそのまんまの世界にゃのに!
にゃんで私、猫に転生しちゃったの?! これじゃあ恋もにゃにもあったもんじゃにゃいじゃにゃい!
いやまぁそんにゃ現実、もうだいぶ前に受け入れましたが。今はにゃんこ人生を満喫しつつ、ご主人の恋の行く末を見守っていますが。
ちにゃみに、ご主人というのはゲームの悪役令嬢の子です。にゃまえはニャーシャ。あんまりすにゃおにゃ性格じゃにゃいから、周りに誤解されやすいけど、私はゲームの時のニャーシャもこの世界のニャーシャも大好きです。
ニャーシャは私を飼ってるわけじゃにゃいの。だって私、野良猫にゃんだもん。ニャーシャは私に毎日ご飯くれる。だから私のご主人。
猫の私にはにゃしかけてくる、友達がいにゃいちょっとイタイ子。でもニャーシャが優しい子だっていうのは私はちゃんと知ってるよ。
でも最近ニャーシャはにゃんだか暗い。というか落ち込んでる。
理由はわかってる。にゃんかむかつくヒロインが逆ハーして、ニャーシャの婚約者とっちゃったからだ。
「わたくしって……ダメな人間なんだわ……」
緊急事態! 緊急事態! いつもの金髪縦巻きドリルがへにょへにょににゃってる! これは相当落ち込んでるにゃ!
あわあわとしにゃがら私はご主人のへにょへにょドリルを前足でひっかいた。崩れる! いつもにゃらたたいてもひっかいても噛んでも元のドリルに戻るのに!
「おマル……おマルもわたくしのこと嫌いなの……?」
「にゃにゃっ!」
ちがうちがう! にゃぐさめてんの!
あとおマルって呼び方やめて! 普通にマルってよんで! 無駄に丁寧に「お」にゃんてつけると、アヒルの形した便器を思い出すじゃにゃい!
意思疎通がはかりにくい落ち込みモードのご主人のため、私はわかりやすく甘えてやることにした。
すりすりとへにょへにょドリルに頬ずりする。どーだ、にゃんこ可愛いだろう!
「そ、そうよね……おマルまで私のこと見捨てないよね。おマルに見捨てられたら私、本当に友達いなくなっちゃう……」
「にゃぁ……」
いやいやいや、猫の私にゃんかに依存してにゃいで、ちゃんと人間の友達も作りにゃさいよ……。
ちょっと白けた目でご主人を見るが、これぐらいでは私の意思にゃんて通じにゃい。ご主人はデレデレした顔をしにゃがら私をにゃでてきた。
さて、落ち込みモードがちょっと回復したら次は愚痴モードに入るよ。最近のヒロインの動向はどうかにゃー?
「なんかね、私……メグ嬢をいじめてるって思われてるらしいの。ひどい悪口を言われたとか、教科書を切り刻まれたとか……うっ、うっ、母君の形見のブローチをとったとか……」
「にゃーにゃにゃにゃ」
にゃーにそれ。ご主人がそんにゃことするわけにゃいじゃにゃい。そりゃご主人は一見気が強そうに見えるし口数少にゃいから怖そうに見えるけど、単純にコミュ障にゃだけだから。
顎を挙げにゃがら人を見る癖も、人の目を見て喋れにゃいから上のほうに視線そむけてるだけだから。普通は俯くんだけどね!
あとご主人もちっちゃいころお母さんをにゃくしてるので、人の形見のブローチを取ったりにゃんかしませーん。ご主人は『自分の嫌がることは他人にするべからず』っていう孔子みたいにゃ信条を掲げてるしね。人の目を見てはにゃせないのはアホだと思うけどね。
「私、やってないのに……メグ嬢がそう言うから、みんな信じちゃって……ヴォルフラム様も……」
にゃに?! あんの筋肉バカ、んにゃアホにゃはにゃし信じたの?!
っかー! もう4年もご主人の婚約者やってんのに、ご主人の気弱な性格も把握できにゃいんだねー! やっぱ頭も筋肉だからか! それともご主人のコミュニケーション能力が著しく不足してるのか!
……どっちにも要因がありそうだにゃ。にゃんせ婚約者にゃのにまともに会話したこともにゃいしにゃ。
いっくらここが中世のお堅い貴族学園だからって、そーんにゃコミュニケーション不足の婚約者じゃあねぇ……。
ご主人、ご主人。筋肉バカのこと好きにゃらもうちょっとアピールしにゃきゃダメよ。あいつもバカだから遠回しの愛情表現とかまったく通じにゃいし。
にしてもご主人ちょっとまずいんでねぇの? ゲームの通りいけばヒロインへの嫌がらせが筋肉バカの逆鱗に触れて、婚約破棄のすえ学園追放……お家取りつぶし……。
やばい! やばいにゃ! このままじゃ貴重なご飯係がいにゃくにゃる!! もうすっかりご主人手製のごはんににゃれちゃったから、今更野生に戻るのにゃんか無理!
つ、つまりはご主人の破滅が私の破滅……? いやあああああ! いやにゃあああ! ご主人もっと頑張って! 冤罪にゃらそれを証明するのよ! そうすりゃあんの性悪ヒロインに一泡吹かせられるにゃ!
「にゃにゃ! にゃーにゃにゃ!」
「おマル……そうよね、私なんかがヴォルフラム様の婚約者でいること自体が不相応なのよね……あぁぁぁ……いっそ修道院に入りたい……」
にゃんでそうなる! いい加減にしろよにゃ、この根暗おんにゃ!! ご主人の人生はご主人のためだけにあるもんじゃにゃいの。私の快適ご飯ライフもそこに掛かってるの!
バシバシ猫パンチを食らわせるも、ご主人にはにゃーんも伝わってにゃい。
「おマル……私が修道院に行ってもついてきてくれるのね」
え? ついてかにゃいよ。
だってご飯まずそうじゃん。
* * *
ご主人ニャーシャは全く頼りにゃい。あんにゃネガティブシンキングばっかするコミュ障が、強かに自作自演をして他人を追い詰めるヒロインにかにゃうはずがにゃいんだ。
もうご主人の力はあてにしにゃいようにしよう。あんにゃのに自分のご飯人生預けることはできにゃい。自分の人生は自分で取りに行く! 運命は自分で切り開くにゃ!
「にゃー」
それはともあれ、私は猫。うん。人間語喋れにゃい。うん。攻撃方法は噛み付くと引っ掻くのみ。うん。
……………………。
え? にゃんもできにゃくにゃい?
どどどどうしよう。いやいや待て、落ち着け、にゃにはともあれ行動だ。考えてから行動するより行動してから考えるほうが、うん? もういっそ考えにゃいで行動したほうが、いいのかにゃ?
そうだにゃ、行動するのみだにゃ! そうと決まればまずは敵情視察! あのヒロインがにゃにをしてるのか見に行こう!
私はにゃるべく生徒や教師に見つからにゃいようにゃか庭中を探し回った。今は昼休み。この時間にゃらにゃか庭で攻略対象者と昼飯を食べてるはずだにゃ!
「でねー、これが卵焼きっていうんだよ」
にゃ! 見つけた!
やっぱり昼飯中だった! うんうん、ヒロインは奨学金で学園に通っている庶民のおんにゃのこだから、お昼ご飯とかは全部自分で作るんだよね。
で、いつもシェフの料理ばっかり食べてる貴族の坊ちゃんがヒロインのお弁当に興味をもって自分の分も作ってくるように頼む。それに答えていくと好感度アップ、みたいにゃ恒例イベントだったはず。
「ん……メグは本当に料理が上手だな」
む。今日のお昼の相手はおさにゃにゃじみのメガネくんか。攻略対象者のにゃかで唯一の庶民の子だよね。メガネでちょっと腹黒にゃところが人気だったのよねー。
ヒロインは一つ一つおかずの説明をしている。時々「これ形崩れちゃった……」にゃんて俯いていうから、メガネくんはにっこり笑って「そんなことない。メグが一生懸命作ってくれたものなんだからどれもおいしいよ」にゃんていってにゃぐさめてる。
……………………。
はっきり言っていいかにゃ。
うっざ。
「それじゃあメグ、またあとでな」
「うん! 今日は一緒に食べてくれてありがとう!」
見るに堪えにゃかったのでバッタを気まぐれに追いかけていたら、いつの間にかランチタイム終了らしい。やっとか! こんのクソアマいちゃいちゃぺちゃくちゃメシ食べやがって! 猫に退屈は禁物にゃんだぞ!
さぁようやく偵察再開だにゃ。うーんと、たぶんこの後は普通に教室に戻って授業受けるはずにゃんだけど……。
うん? あのアマちゃんはどこに行こうとしているのかにゃ? こんにゃ人目のつかにゃい場所ににゃんのご用事?
「さて……誰も見てないわね」
ざんねーん。猫が見てますよー。
わざわざ「にゃあ」とにゃいて場所を知らせてやることもにゃいので、茂みに隠れたままヒロインの行動を見守る。
するとあのヒロイン、懐から大粒の宝石がついたブローチを取り出した。猫の目は人間のにゃん倍も視力が発達しているからわかる。あれ、ゲームで出てきた“母の形見のブローチ”じゃにゃいか? やっぱり盗まれてにゃんかにゃかったんだ!
ヒロイン、そのブローチを大理石の地面に置くと。
「ふんっ」
「!?」
踏んづけた。にゃんどもにゃんども足を振り下ろし全体重をかけるように足に力を入れていく。
猫の優れた聴力が、ぱきっ、という音を拾った。きっと金具の部分が圧力に耐えかねて壊れたんだと思う。
ヒロインはようやく踏むのをやめると、にやりと意地きたにゃい笑みを浮かべた。
「これで原作通りの展開になるわ」
そ、そうだったにゃ……。原作では“母の形見のブローチ”は盗まれるだけじゃにゃくて無残に壊されていたんだ! ニャーシャに!
それで、温厚にゃ性格のヒロインも激怒して、ニャーシャを引っぱたく。見かねた筋肉バカが婚約破棄を言い渡す……。いろんな人ににゃぐさめられつつ迎える逆ハーエンド……。
えっ、まさかこのヒロイン、自作自演でそこまでやろうっての?! ニャーシャにブローチを壊した罪まで着せて?!
にゃ、にゃんつー肝の据わった……。今現在イケメンにちやほやされてんだからいーじゃん! 十分じゃん!
にゃ、にゃんとかヒロインの企みを阻止しにゃいと……! どうする?! このままじゃ婚約破棄の展開もすぐだよ?!
ぐるぐるぐるぐる考えた末、行動あるのみ、がモットーにゃ私はヒロインの足元に突進した。
「シャーッ」
「きゃあっ、な、なに?! 猫?! あっ……」
ヒロインが壊したブローチを拾い上げる前に、それを咥える。奪う!
こんにゃ小道具でご主人の未来と私のごはんを奪えると思ったら大間違いだにゃ!!
「まっ、待ちなさい!」
またにゃーい! 口がブローチで埋まってにゃかったら得意げににゃんにゃんにゃいてやるところだった。
ヒロインが焦った様子で追いかけてくるが、猫の本気の逃走には追いついてこれにゃいだろう。3分と立たずに後ろの足音は消えた。
私は息を整えにゃがらブローチをいったん口から出す。動物本能で危うく呑み込んじゃうところだった。あぶにゃいあぶにゃい。
さて、これをどうしようか……。うーん、要するにこのブローチがにゃければご主人がブローチを壊したっていう証拠もにゃくにゃるわけだろ?
……………………。
捨てちゃえ!
ということでにゃかにわの噴水の排水溝ににゃげすてといた。
詰まったらごめんにゃさい!