すとーりーFIVE でんわ
携帯を見詰めて考える。
電話をしようか、どうしようか。
時計を見上げてまた、考える。
電話をしようか、どうしようか?
二つ折りの電話を開いては、閉じる。
Pi−Pi−Pi、三回のプッシュでアナタに繋がる。
居場所を、ベットの上から床に変えてみた。
テーブルの上に携帯を置いてみる。
膝を抱えてしばし傍観。
そして電話をしようか、どうしようか考える。
声を聞きたい、何でもいいから話したい。
電話越しでもいいから、その温もりに触れたい。
考える一分がどんどんと長くなり、気持ちがチョット焦る。
寝てしまったら、どうしよう?
早く掛けなきゃ、今日はもう声を聞けない。
ナゼ。
こんなに躊躇うのだろう。
出ない事が怖い?
誰かが傍に居るのが怖い?
鬱陶しく思われるのが怖い?
……違う。
会いたくなるのが、怖い。
声を聞けば、絶対に会いたくなる。
会ったら、離れたくなくなる。
ずっと、ずっと、傍に居たくなる。
肩を寄せ合って、小声で話す。
互いの温もりを感じながら、ゆっくりと眠りに付く。
耳をくすぐるアナタの声。
その声が聞きたいのです。
そんな時、ふいに携帯から流れる着メロ。
思わず好物に飛び付く犬のように興奮する。
掛けて来たのは、そう、アナタ。
「はい、もしもし?」
『もしもし?起きてた?』
「うん。どうしたの?」
『ん、別に、用事は無かったんだけど……』
何時もそう、アナタは良いタイミングで電話をくれる。
何で分かるんだろう?
いま、電話を掛けようとしていたって。
不思議だね。
電話、好きです。
特に好きな人から掛かってくる、突然の電話は何とも言えません。