すとーりーTHREE 恋敵
私の恋敵はタバコ。
だってね嫌な匂いがね、付くでしょう?
だってね煙がね、常に二人の間にあるでしょう?
でも何よりも……彼のクチビルを独占しているのが一番、イヤ。
彼は自他とも認めるヘビースモーカー。それこそタバコを咥えていない時間が想像出来ないほど、ヒドイ。
最近ではタバコを吸う人たちが肩身の狭い世の中。
なのに彼は全く不自由に感じていない。
ナゼって?
それは、彼の頭の中が完全にタバコの煙で燻し上がっているから。
ううん…それよりも、初めから脳みそが煙で出来ているのかも知れない。
とにかく、彼の一日はタバコに始まってタバコに終わる。
だから、私のクチビルはいっつも一人ぼっち。
寂しいの。
ワタシハ、モットアナタヲ独占シタイ。
でも…それをあの小さいタバコたちが束になって邪魔をする。
だからね、私はちょっとだけ考えた。
私はベットで彼が眠りに付くのを息を殺してじっと待つ。
そして寝息をたてた時…。
私は彼にオヤスミナサイのキスをする。
翌日、今度は彼が目を覚ますより少し早く起きて、じっと待つ。
彼が目を覚ました瞬間…。
今度はオハヨウのキスをする。
タバコを吸い終わって眠りに付く彼に、最後にキスしたのは私。
タバコを吸うより先に、彼の唇にキスしたのは私。
彼は気付いているのかな?
私はタバコに嫉妬しているの。
だから、彼の唇にキスをする“最後”と“最初”を私が欲しかった。
そんな私の気持ちを知ったら、彼は私を嫌いになっちゃうかな?
だから、気付かれないように、慎重にチャンスを狙う。
キス、キス、キス。
アナタが好きなの。
私のちょっとズルイ計画犯行。
でもね隣で眠る彼、ちょっとだけ不思議なの。
私がキスをすると少しだけ微笑むのはナゼなのかな?
女の考えは時として男を悩ませるけれど、可愛く思えるモノもあります。