すとーりーTWO 手を繋ごう
『手を繋ごう』
なんて言葉、心では簡単に言えるのに、本当はなかなか口から出てこない。
季節はだんだん寒さを増して、言い出す切っ掛けには事欠かないって言うのに。
でも。
もしも、彼女が嫌がったら?人前で恥ずかしいとか、ナンダとか言われたら?
俺の手は、意味も無くさっきから握ったり開いたりを繰り返している。しかも緊張から、汗ばんで来たかも知れない。
情けないけど……こっそりとさりげなく、ズボンで手の平を拭う。
目的の彼女の手は、触れ合いそうなほど近くにあって、でも、その距離を中々縮められない。
ケドね、告白は俺がした。
たった一言、男らしくキッパリと『好きだから付き合ってくれ』って言った。
彼女は、うん、と頷いた。
嬉しすぎて、心臓が爆発するんじゃないかと思った。真っ赤になった顔を見られたくなくて、わざとそっぽを向いた。
それから一週間。
未だに大好きで、可愛い彼女の手との距離はまだ縮まない。
悟られないように、チラリと視線を落とす。
彼女の手は白くて、小さくて、華奢で、俺が握ったら折れてしまいそうだ。
どうしよう。
なかなか、肝心な一言が言い出せない。
手を繋ごう。
たった一言なのに、喉の奥でつっかえている。
そんな事を考えていたら、ちょん、と彼女の手の甲と俺の手の甲がぶつかった。
「あ、ご、ごめん…!」
「え、あ、う、ううん…」
思わず驚いて、手を引っ込めてしまった。挙句、手をそのままポケットに入れちまった。
気まずい沈黙。
マズイ。
俺は内心冷や汗でダラダラだった。
正直、頭の中は真っ白で、何も考えられない。こんな事でって、思うけど、本当だから仕方ない。
あぁ俺がもう少し、お笑いキャラだったらもう少しマシな対応だったのに。
ツン。
制服の袖口が微かに引っ張られた気がした。
「ん?」
見ると、彼女の手が俺の制服を引っ張っている。
「ね……手、繋ごう?」
上目使いで彼女はそう言った。
「べ…別に、いいよ」
俺は嬉しくて飛び上がりそうになったが、ここは平静を装う。
バッとポケットから出した俺の手に、ちょっと冷たくなった彼女の指が触れた。まるで全身の感覚が全てソコに集中しているかのように、とてもハッキリと細い彼女の指を感じる。
俺の小指と薬指を彼女が握る。
きっと、俺の顔は真っ赤に違いない。
恥ずかしさと嬉しさで俺はまた、思わずそっぽを向いた。
手を繋ごう。
その言葉は彼女に言いそびれちゃったけど、まあ、いいか。
ソレは俺だけの秘密ってコトで、内緒にしておこう。
こんな頃もあったなぁー…と。