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辺境警備隊のお医者さん(仮)  作者: リンダ 鈴
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砦 4

「だいぶいいみたいだね、はい、今週分の薬」

薬籠からダオル爺用に分包した薬を入れた小さな革袋をとりだす。

「すみません、シダさん、明日から砦の方に出勤しますんで」

「ダオル爺無理すんなって、たまにはクソオルガに書類仕事やらせりゃいいんだよ」

シダは診察カバンをローブの内側で背負い薬籠を左手に持つ。

治療師のローブはテントの様な一枚布で真ん中から頭を出すようにしてすっぽりとかぶる、両脇に手を出すスリットがあり作業時以外は手はローブの中に入れる。なので鞄などはローブの下に背負うのが普通だ。ローブというよりマントに近い。返り血などで服を汚さないよう厚めの生地で作られており身体のシルエットが全く外に出ないのでシダとしてはありがたいが、冬はいいが夏は結構辛い。

「真っ直ぐ砦に戻られるなら孫に送らせますが」

「いや、薬屋によるのでいいよ、無理すんな爺、じゃあな」

別れの挨拶をしてダオル爺の家を出る。


この所持ち金が少なくなってきた。砦にいる限り食住に金はかからないが、金のかかる事は他にいくらでもある。

偽の司令所で砦にきたシダに給料は出ない。最初不思議に思ったオルガやダオル爺に尋ねられたが、金は国の家族に送る様にしてもらったと嘘を付いた。そうしてる隊員もいるので。受け取った給料を貯めて家族に送る奴もいるがそうすると途中で中身を抜かれたり、最悪全額取られたりするので遠距離に送る奴は少ない。まあ納得はして貰えたが金が全く無いのは困る。砦関係者の治療は金をとらない。砦関係者以外の治療もするがその費用は砦に支払われシダの手には入らない。

なので調合した薬や採取した薬草を町の薬屋に卸し小金を稼ぐ。町にシダ以外の治療師はいないので薬屋には有り難がられる。薬屋の親父もちょっとした調合は出来るが複雑な調合方の薬や魔法薬となると大きな町から仕入れるしかなく、そうなると値段も高くなる。

(そろそろローブ新調したい、下着も欲しいけど町で買うわけに行かないし…)

男で通しているシダが町で女性下着を購入できるはずもなく。チラリと自分の胸を見下ろす。ローブで見えなくとも盛り上がりはそこにしっかりとある。

(なんでこんなにおっきくなったんだろ、母様に似たのかな?)9歳のころに亡くなった母様はかなりボンキュッボンだったと記憶する。

何をするのもこの二つのお山は邪魔だ。走ると揺れるし痛い。常に鞄を抱えてる様なもので肩もこる。

(だから女は治療師になれないの?)

いや違うからソレ


カラコロ〜ン

薬屋のドアにつけられたベルがなり、カウンターの後ろの男が顔を上げる。

「シダ先生、いらっしゃい」

「やあ、親父さん悪いけど買取今いいか?」

「先生ならいつでも大歓迎ですよ」

薬籠をカウンターの上におく。

「その先生ってやめてくんねえかなぁ」

籠から革袋に付けた札を確認しながらカウンターに並べつつ毎度となったやり取りをする。

シダとしては医術科首席卒業であっても正式に治療師と認められていない為『先生』と呼ばれることに引け目を感じている。砦の連中には『先生』と呼ばせていない。

「な〜に言ってんですか、シダ先生はシダ先生、他に呼び様ありません」

そう言う薬屋の親父、シダは少し困った顔をして微笑む。

「「「ブホッ」」」

「どうした親父、大丈夫か」

突然の鼻血に慌てて上を向き鼻を抑える薬屋の親父、同じく店内にいた客と在庫チェック中だった店員も鼻を押さえている。

「い、いやあいつもの奴ですよ、すぐ治りますんで、気にせんでください」

「本当に、診察しなくていいのか?」

振り向き後ろの二人にも声をかけるが、大丈夫と手を振るジェスチャーで返してくる。

「相変わらずシダ先生の笑顔、強烈過ぎる…」

「オレ、今日薬屋に来てよかった…」

ボソっと呟く声はシダには届いていない。

(この町突然鼻血出す人多いな。なんか私の知らない風土病でもあるのかな?魔森林の影響?ちゃんと調べてみないといけないかも)なんて己の笑顔の威力を全く解っていないシダは心のメモを取るのだった。

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