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辺境警備隊のお医者さん(仮)  作者: リンダ 鈴
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砦 3

「やっと終わった〜」

最後の書類を処理済みの山に乗せてオルガはのびをした。

コキコキと肩を鳴らす。

普段であれば書類仕事はダオル爺が裁いてくれるのだが、ダオル爺は持病の腰痛悪化で三日前から自宅療養中だ。


肩を回しながら立ち上がり窓の方へ近付く。ここは二階だが砦の下は緩やかな崖になっており高さとしては感覚的に5階分くらいはある。

砦のこちら側の崖下はタタロス川の本流、川幅は狭い所で10mはあり、この砦は地形を生かし作られている。

砦というより要塞に近い。川の向こうはギルネシア魔森林が広がる。魔森林の向こうに魔人の住む国があると言われているが定かでない。

魔森林がどこまで続くのか確かめた者はいないからだ。魔森林の奥に進めば進むほど魔物のレベルが上がって行く。過去に調査隊が組まれたことは何度もあるが災害級の魔物がうようよいる辺りでお手上げだ、そこより進めば厄災級がいると思われる。無謀に進んで全滅した隊も少なくない。

(ま、俺も飛竜(ワイバーン)で三日の距離が限度だった)

そんな奥に行かずともこの魔森林は人に多くの恵みを与えてくれる。

動物、植物、鉱石、魔物、ありとあらゆるものの宝庫だ。そこへ行きたがる者は後を立たず、王都から遠く離れたこの土地を訪れる者は少なくない。

砦の反対側には町が広がっている。出世を望まなければここはそれなりにいい土地だ。

時々ハグレ魔物が襲って来さえしなければ。

今でこそ町と呼ばれる規模だが元は砦を作るための人員を住まわす小さな村だった。

魔森林で一山当てようとやって来る奴や、俺のようにポカをして飛ばされる奴などで積もり積もって

結構な規模になった。最初の入植(砦建設開始)から300年位たつらしい。

困るのは都で食い潰れた奴が流れてくる事だ。大概犯罪を犯して都に居られなくなった連中だ。

そんな奴らを受け入れるわけにいかない。必然的に砦(町)の外にスラムが出来上がる。

今国の情勢は穏やかではない。乱れているとまでは行かないが現王が即位して12年。未だ立太子が行なわれず国が王子派と王弟派に分かれワチャワチャやってる。こんな辺境には関係のない話と言いたいところだがここ暫く流れ者が増えている。いい迷惑だ。

警備隊(一応騎士階級)の仕事は魔物から町を守ることで、町の治安は警ら隊(これは町の人間で構成されている)の仕事だ。だが警ら隊の手に負えずコッチに応援を求める機会が増えた。

警ら隊を増強したいところだが誰でもいいと言うわけにいかない。頭の痛い話だ。


トントントン、執務室のドアがノックされた。

「オルガタイチョ〜、ビル=キナトでぇす。」

「入れ」

ドアを開けて入ってきたのは警備隊第3小隊長のビルだ。

もともとヒョロっとした奴だが何時にも増して顔色が悪くげっそりといった感じだ。

「お前、具合いいのか?」

ほんの一昨日まで上げ下しでのたうち回っていた。

「ああ、シダさんのおかげで随分よくなりました。巡回は無理ですが、これくらいならだいじょぶっす」

とてに持っていた書類と手紙を差し出す。

「王都からっすね、あとこっちはシダさん宛みたいっす」

「ならシダに渡してこいよ」

「それがシダさんまたお留守みたいっす、救護所閉まってて」

へへっとビルが苦笑いをする。

「アイツ、またスラムに…」

「いやぁ、一応ダオル爺の往診に行くって書き置きしてたっす」

「そう言ってこの前もスラムで一悶着おこしたろーがっ!」


魔森林探索は通常ソロでは徒歩2日分ぐらいが限度。オルガは別格です。

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