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辺境警備隊のお医者さん(仮)  作者: リンダ 鈴
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十年前 4

オルガは少年達が使った道より少し離れた森の中を進んでいた。話し声が聞こえるが内容は分からないそんな距離だ。

校長の言う通り王子と王弟は仲がいいのか穏やかな雰囲気だ。

今は刺客の類いも魔物の類いも気配がない。もっと森の奥に行けば獣や魔物やそれなりにいるが低レベルだ。その割に貴重な薬草が多く実習にはうってつけだろう。国有地の為一般の立ち入りが禁止されているが密猟者は何処にでもいるのでそちらの注意も必要だろう。

学生達はチームごとに違う地図を渡されているので、他のチームと接触することは少ないが、生徒や護衛に刺客が紛れ込んでいる可能性もある。

キャンプ予定地に着いた様だ、馬や土竜を近くの木につなぎ荷下しを始めた。

王弟と少女騎士が剣や装備の確認を始めた。背の高い栗毛の少年が生徒会長だろう、ロープやトラバサミを竜車から降ろしている。王子は赤毛の少年、同い年にしては小さいな、彼に世話をされ薬草採取用の籠を準備している。5人の少年少年が忙しそうにしている。

5人?…チームは6人ではなかったか?

もう一度確認しつつ気配を探る、やはり5人だ。何かの事情で1人減ったのか。校長からは何も知らされていないが。

罠を設置する生徒会長と赤毛の少年には少女騎士が、採取に向かう王子に王弟が護衛につく様だ。

オルガは王子王弟ペアをそっと追いかけ森の奥に進んだ。




*****

四半刻ほど森をうろつく。王子はあっちにふらふら、こっちにふらふらとする割に薬草採取できてる様には見えないが。王弟の方は剣の柄に手をかけ油断なく周りを探っている。あまり近付き過ぎると気取られそうだ。王城で聴聞く噂と違い王弟は優秀そうだ。オルガは王子達より先回りしようと少し森の奥へ進む。


森の中は背の高い広葉樹が葉を茂らせ薄暗い。だが所々に木が切り出されたか日の差し込む空間がある。

ここもそんな場所の一つだろう、そこに少年が佇んでいた。

静謐な空間がそこにあった。

王子と同じ服装、医術科の制服だろう。同年の中では背の高い、170cmほどありそうだ。背の中程まで伸ばされた髪は銀色の絹糸のごとく、風に撫でられさらり、と頬をかすめる。すい、と右の(かいな)を天に向かい伸ばす。細く石膏雪花のような手が樹木の表面を愛撫するが如く軽く触れる。その少年の横顔を見たオルガは固まった。

王子の天使を模った人形の様な可愛らしいさとも、王弟の聖人を模した像の様な美しさとも異なる。

そこには女神の移し身かと思われる様な美しさがあった。

ふと、何かに気付い様にオルガの方を向く。そしてゆっくり、優雅と呼べる足取りでオルガのへ向かって来た。

医術科の制服なのだから少年のはず。だがその女神の如き姿にオルガはゴクリ、と喉を鳴らす。

2mの身長のオルガを少年が深緑の瞳でしたから見上げる。桜花に色ずく唇を薄く開いた。


「テメエ、このクソ野郎!ソコ突っ立って薬草踏んでんじゃねーよ!クソ殺すぞ、オラァ」

身長2m〈猛将オルガ〉と呼ばれた男は目の前の美少年に足払いをかけられ地面に沈められた。



「あ、シダ〜ねえねえシダ〜」

王子がブンブン手を振りながら駆け寄ってくる。

「見て見て、薬草見つけたよ、ホラホラ」

王子は籠から取り出しシダに見せる。イキナリ『ゴン!』と大きな音を立てシダは王子の頭をどついた。

「だあほ!こりゃペンペン草だろう、ダリル!テメエクソ殺すぞ。リスト、テメエもペンペン草くらい見分けられるだろが、止めやがれ」

ダリル王子はその場にしゃがみ込み両手であたまをさすりながら「シダがぶった〜」と泣きべそ状態。

「いや、ダリルがあまり楽しいそうなのでな、注意するのも忍びなく。」

手を口元に当てクスリ、と笑うリスト。

そんな三人のやり取りを見上げる偉丈夫オルガはボーゼンとしたままだった。リストはまるで今気が付いたかのようにオルガを見た。

「おや、あなたは近衛騎士団副団長のオルガ=ファーン殿ではありませんか?」

ハッと我に返ったオルガは慌て立ち上がり泥を払い騎士の礼をとる。

(王弟殿下はお人が悪いな、わかっていて仰っている)

「あ、〈猛将オルガ〉だ〈王国最強の騎士〉だぁ」とダリル王子がオルガの周りをぴょんぴょん跳ねる。

「なんだこのクソ野郎知り合いか?」

「ええ〜シダ知らないのぉ〈王国最強の騎士〉だよ〈猛将オルガ〉だよう」

そのオルガが14歳の少年の足払いで撃沈したとは。止めてください王子!連呼するのは恥ずかしすぎる!

「この度護衛の任を仰せつかりました」

シダがジィ〜とジト目で見る。唐突にダリル王子の襟首をつかんで引っ張り

「ホラ薬草採取行くぞ、ここのは踏まれてクソ役立たずになった」

シダはオルガには声をかけずグイグイとダリル王子を引っ張っていった。リスト殿下はオルガに軽く一礼すると踵を返しシダ達の後を追う。

声をかけずと言ったが『クソ役立たず』は薬草ではなくオレを指しての言葉だろう、オルガは自覚した。

「クソ!」

がんばれオルガ!負けるなオルガ!



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