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《異世界の主人公共へ》  作者: 菜季滅入
《魔王軍の復活計画始動》
8/25

《不幸なゾンビは不思議な夢を見る》



キマイラを退治した事をエンリに報告をするか。それとゾンさんがさっきから自分の胸を触ってブツブツとうるさい。しかし、気にしたら負け。

地下への階段を降りようとすると、ゾンさんがそっちじゃなくない?と言って来た。罠がある階段を降りたらダメなのかい?俺はね可能性を信じたいんだ。

そう伝えるとゾンさんは呆れながら安全な階段をおりて行った。さぁ、逝くか。






△▼△






やっぱり、死ねなかったよ。

途中で合流をしたゾンさんと共に、無事にエンリのいる避難所へと戻った。

そこには暗い顔をした彼女がそわそわと歩き回っていた。だが、俺たちの姿が見えると、一転として明るい顔になった。


「おかえりツッチー!どうだった?あとゾンちゃん久しぶり!」

「.........はい」


ずっと、しょげているゾンさんに疑問を持ったエンリは首を傾げた。


「ゾンちゃんどしたの?」

「さあ?」


キマイラ退治してからゾンさんは、ずっと、この調子だ。少し不機嫌だし、なんか女っぽい容姿になってる。どうしたのだろう。

全く検討がつかない。それと気のせいか?さっきから殺気が.........ダジャレじゃないよ。


「おいどうしたんだよ。あとブツブツ言うなよ」

「隊長........どうゆうことですか.......」

「ん?」

「なんで俺の姿が女に戻ってるんだ!」

「え?」


なるほど、だから女みたいな姿で、女っぽい雰囲気が出てたのか。

手抜きして、生き返らせたからな。しょうがないね。誰しもミスはするものさ。

よく言うだろう?気にしたら負けさ。腐生(じんせい)楽しんで行こうぜ。しかし謝らないと機嫌悪いだろうし、ちゃんと謝ろう。


「わり!ミスった」

「ミスったじゃねえよ!もっと誠意を込めて謝れ!!」


誠意を込めて謝れと言われましても、これでも一割は込めたつもりなのにな。

誰かが言った心がこもっていれば言葉はなんだっていいと!

え?それを言ったのは誰かって?もちろん俺に決まっているだろ。

怒鳴り散らすゾンさんを宥めていると、驚いた顔でエンリが言った。


「ちょ、ちょっと待って!ゾンちゃん男じゃないの?」

「俺は元々女だ」

「え?なんで男の姿になってたの!」

「俺が話そう」


確かあれは、5、60年前だったかな。

俺が死にかけのこいつと出会ったのがこいつのゾンビとしての始まりだ。

あれは確か俺が四天王をやり始めて2、3代目の魔王の時だな。

あの時はすごい大雨で前すらまともに見えなかった。






△▼△






なんで、俺が仕事しなきゃいけねえんだよ。まったく飽きちまった。

人間の街の偵察なら魔王がやれよ。まったく、これだから魔族からなった王は嫌いだ。自分から動かねえし、てか前見えねえな。

俺は一人でため息をしている地、すぐ近くでうめき声が聞こえた気がした。

周りは雨のせいで見えにくいが地面と体を一体化させれば、地面に接している生き物の体温を感じ取り、探すことができる。

少し冷たさがあるが体温を感じた。すぐ近くに倒れているようだ。

急いで体温を感じた場所に行ってみると、なんとも無残なやられ方をした女の子が倒れていた。

全くもって生きてるのが不思議なくらいの大怪我だ。切り傷がひどく所々に魔法による傷跡も見られる。矢が肩に刺さっており苦しそうだ。

意識があったから一応聞いてから抜いた。少し血が出たため軽く止血をしたが、止まる様子がない。どうやら、鏃に塗られていた毒が原因のようだ。


「大丈夫か?って大丈夫じゃないか」

「あな.........は......?」


弱々しい声で問いかけた。意識はしっかりしてるようだ。


「俺か?俺は魔族の王に仕える四天王の一人だ。それよりも、ここは魔族の領域で、魔界の入り口にもかなり近いんだぞ」

「にげて.........きた..............」


逃げてきたか。犯罪者なのか、それとも無実の罪でとらわれたお偉いさんか。それとも、生まれ持っての忌み子か。どっちにしろ、むごいことするな。


「まぞ......く...まも......た...」

「なに?」

「そした......ころ......かけ.....た....」


じゃあ、こいつは魔族を守ったせいで、こんな目にあったのか?なんて酷い奴がいやがるんだ。相変わらず、人間にはクズ野郎がいやがる。

こいつは死なせちゃいかねえな。人間であろうと、俺たちの同志を守ってくれたんだからな。

が、こいつに生きようと言う気持ちがあればの話だ。


「なあ?おまえ、生きたいか?」


俺は、一つの可能性を伝えた。まともに生きて行けるかは、本人次第だけどな。


「生きられるの......?」

「魔物としてだけどな。と言っても、普通に生きて行けるかは、お前次第だ」


生きれるとわかった彼女の目からは、とても強い信念のようなものを感じた。


「生きたい.......まだ......生き......たいよぉ......!」

「わかった」


四天王が、指を鳴らすと少女の真下に魔法陣が出現した。魔法陣が黒く輝くと体の肉が溶け骨だけが残った。

陣の色が変わり少女の骨が浮いた。周りの土や石が集まり、骨にまとわりつくように動き始め、次第に土は筋肉、血管、内臓と変わっていき、最後に皮膚で覆われた。

数分で少女は、ゾンビとして転生を果たした。彼女は、一種の不老不死になった。俺のような完全な不老不死にはならないけどな。


「よう生き返ったな」

「本当に......生き返れた」


どこか拍子抜けした様子で彼女は驚いていた。


「信用してなかったのかよ」

「そりゃあそうよ。いきなりあんなこと言われて信用するやついないわよ」


傷つくわぁ......本当に助けてよかったのか?にしても、ゾンビになっても自我が保っていられるとは、相当強い潜在能力を秘めてたんだろうな。しかも、勇者に匹敵するほどの。

もしかしたら、勇者としての運命も、こいつにはあったのかもな。


「で?魔族になった気分はどうよ」

「人間の時より体が軽いかな。ねえ?性別変化ってできる?」

「できるがなんで?」

「そりゃあ、性別変えなきゃ素性がばれて、また追われる可能性が出てくる。姿も変えないと」


なるほど、一応は考えているんだね。ちょいとだけ見直した。こいつの意見も最もだ。よし、いい感じの見てくれにしてやろう。

また、指を鳴らすと少女の体にまとわりついていた土が蠢き始めた。土の動きが止まると少女の体は、少し体型が大きくなり、顔立ちが中世的になった。


「き、気持ち悪かった。けどありがとう。私の名前は......いいや人間の名前は捨てる。私........いや俺はゾンビなわけだろ?ならゾンビAと名乗らせてもらうかな」

「うっわ〜......普通」

「うっさい!それで...まあ......これからよろしく」


照れくさそうに手を差し出すゾンさんの手を強く握った。





△▼△





ゾンさんとの出会いを話し終えると、エンリの顔はキラキラとしていた。反対にゾンさんはものすごく不機嫌な顔をしていた。


「そんなことがあったんだ」

「昔はまだ可愛かったのに」

「いいなーみたかったなー」

「うっせえ!てか勝手に話すなよ!!」


いや、拒否られなかったから話していいのかと口調もどんどん悪くなる。悲しきかなこんな子に育てた覚えは無いのにな。

よし決めた。お仕置きの代わりとして、こいつの姿はこのままにしてやろう。


「そのままでいろよ」

「ふざけんなぁぁ!」


怒りの叫びを上げながら俺を殴るゾンさんに、エンリはある質問をした。


「ねえ、ゾンちゃんの本名ってなに?」

「はあ?なんで言わなきゃいけないんだよ!!」


エンリも知りたがってるんだし、教えてもいいだろうに。もうじっと見つめてるもん怖いぐらいに。

それと、質問をされてなお俺を殴るのをやめない。なんか死なない痛みって無償に苦しいことに気づいた。だから、やめてください。

殴りながら顔を俯かせブツブツと小さい声で呟いた。


「......ムー」

「え?」

「ヘルレイ・ムー!!俺の名前!」

「ムーさんかぁ!可愛い名前だね」

「う、うるさい!!」


いい感じに、ムーのことが理解できたし、本名もわかったから拠点に行くとしますか。


「お前いい加減殺すぞ!?」

「逆にウェルカムなんですけど?」


ムーさんは、怒りの声を叫んだが、ただ虚しく響き渡るだけであった。

帰ろうと思い、俺は地上に出る時は、もう一度罠の階段を登ろうとしたら、耐久力の限界を迎え壊れてしまった。ちくしょう!俺の叫びが階段に響き渡った。

地上に出て、仮拠点に向かっている間中、ムーに何度も何度も殺されたけど、瞬時に生き返ると言う無限ループを繰り返しながら帰ってきました。

やっと着いた借り拠点の中からは、まだ言い合いの声が聞こえて来た。

こいつらずっと喧嘩してたってことだよな?どんな体力してるんだよ。


「お前らいい加減喧嘩やめろ」


俺の言葉でピタリと二人の動きが止まった。なんだ、一応聞こえるんじゃないか。最初からこうすればよかった。


「あ、お兄ちゃん!おかえり!」

「どこ行ってたんだ?」


俺らがいなくなったことにすら気づいていなかったのか。まったく、女ってのは怖い。とりあえず、質問には答えよう。呆れ口調で。


「四天王探し」

「で?見つけたの?」


見つけたのかな?見つけたのは先代魔王で、側近にするつもりだ。まあ、戦力を見つけたってことでいいのかな。


「それと、あんたの部下は、なんで女になってるの?」

「......触れないでくれ」


まあ一応説明する。ムーさんいじけていたけど、パンドラとエンリが優しく慰めていた。話を聞いたカイネはまた驚愕していました。

カイネはある程度理解してくれたようでムーに同情していた。パンドラとエンリは仲良くお話ししていた。ムーさんは、まだちょっといじけていた。


「お姉ちゃんは前の魔王なんだね」

「そうだよ〜?パンドラちゃんがわかんないことがあったらお姉ちゃんに聞いてね〜?」


パンドラと仲良く慣れたようで何よりだエンリもパンドラのことを気に入ったようでよかった。


「ゾンビさんの名前がこれでわかったね!これで名前がないのお兄ちゃんだけだよね?」

「あれ?そういえばツッチーの本名ってなに?」

「お姉ちゃんも知らないの?」

「うん。あたしの時から忘れてたもん。ムーちゃんは?」

「ちゃん付けすんな!俺の時も忘れたって言ってた」

「いや...だって俺が生まれたのは初代魔王の時だし」


ムー以外驚いてるけど、そんなびっくりすることかな。理由【俺はどれだけ生きているんだ】ってことだそうです。そりゃあ、初代魔王がいた時だし1500年前のお方だからな。

とまあ、今日はこれぐらいにして寝ましょうか。おやすみなさい。

それと他のみなさんが入って来れないように俺の部屋だけ隔離しました。

またくだらないことで、喧嘩をしないで欲しかったんだ。さて、寝るか。


《側近:先代魔王エンリが仲間になった》


変なナレーション聞こえたけど......聞いた時があるようなぁ......まっ!いっか。






△▼△







ーーーーー暗い城の一室に、二人の男がいた。一人は、軽い服装で、剣を携えた人間。

もう一方は、熱心に机の紙に何かを書き込み、書き終わるとすぐ隣に置いてある実験具で、何かを作成しようと忙しそうに動いてるのが魔族。


『......なんで戻ってきたんだ。邪魔だよ』

『ひどい言い草だな。俺はーーが嫌になっただけだって』


動かしていた手がピタリと止まり、魔族の男は人間の男を怪訝そうに見つめた。


『ーーが嫌になった?ーーのくせに?それで、なぜ僕の前に?』

『俺を仲間にしてくれよ?』


魔族は驚きを隠せなかった。自分の目の前にいる人間は何を言っているのだ、と。人間は頭をかきながらケラケラと笑っている。

その言葉の意味を理解した魔族は、怒鳴るような声で言った。


『君は何を言ってんだ!それでもーーか!?』

『だから!!俺はもうーーが嫌になったつってんだろ!それにお前の仲間になればーーでもなくなる!』

『信用できるか!!』


人間は困ったような顔をし、考えるような仕草をした。だがすぐに、手をポンっと叩いて閃いたかのように魔族にある提案をした。


『じゃあこうゆうのはどうだ?俺がお前の実験に一つだけ被験者になってやるってのはどうだ?』

『いいよ。しかし、失敗したら君は』


その言葉にニカッと笑った。


『そんぐらいの覚悟がなくてーーをやってられるか』


恐れの一つもない人間の姿を見て滑稽だと思ったのか、それともただおかしかったのか、魔族は笑った。


『そうだね。じゃあ、早速実験させてもらうよ。不老不死の実験をな』




ーーーーーーーーうああああああ!」


叫んだ拍子に四天王は寝床から落ちてしまった。寝床は土で作ったベッドです。意外に寝心地のいいところです。それにしても、なんだ今の夢懐かしいような、ないような。


「お兄ちゃん!大丈夫!?」


叫び声が聞こえたのだろう。パンドラが俺の隔離してかなり頑丈に作った部屋に入って来た。聞くまでもなく目の前にどでかい穴が空いているから魔法を使ったんだろう。さすが俺が見込んだ魔王様。


「変な夢を見てな」

「怖い夢?」

「怖いようで怖くないようで、後悔してるような感覚だ」


あははと笑う俺をパンドラは抱きしめた。


「大丈夫だよ。お兄ちゃん私がいるから」

「ありがとなパンドラ」


頭を撫でるとえへへと気持ち良さそうに笑った。なんか、落ち着くなぁ。あと、何度も言うが俺はロリコンじゃねえぞ。パンドラは見た目中学生だが高校生です。

すると、心配になって来たのかエンリが入って来て早々叫ぶような声で言った。


「あーーー!!パンドラちゃん抜け駆けはダメって言ったでしょ!」

「知らないもん!お兄ちゃんは私のものだもん!」


またこのパターンかとため息をしていると、ムーが部屋に入って来た。なんか軽く焦った顔をしているが、気のせいか?


「どうし......またか。魔王様も、エンリさんもこんな男のどこがいいんだか」


復活させて以来、ムーが俺に対して冷たい。一番古株だから仲がいいと思ってた俺って。それとカイネは朝弱いためまだ就寝中。


「そう言ってムーちゃんはどうなのかなぁ?」

「は?なにいーー」

「ムーお姉ちゃんもお兄ちゃんを狙ってるの?」

「だからなに言ってるんだよ!俺がこんな奴好きなわけないだろ!?」

「泣くよ!俺そろそろ泣くよ!?」


もうムー酷い。いつからこんな感じになったんだよ。いじけたくなってきた。


「ムーさん!お兄ちゃんを虐めちゃだめ!」

「いじめじゃないですよ。スキンシップですよ」

「こんなのがスキンシップなんて嫌だ!昔あんなに優しくしてあげたじゃん!」


その言葉に反応したのか、エンリとパンドラの雰囲気が物凄く黒い感じになった。悪寒を感じたがどこからこんな殺気を出した。


「優しくってどんな風に?」

「泣いてる時とか慰めたり添い寝したり」

「ちょ!言うなぁぁ!」


赤面のムーが焦ったように叫ぶが、俺は聞く耳持たぬ。それよりも、後ろの真っ赤なおメメのお二人さんを気にした方がいいと思うぞ?主に殺気がすごいから。


『ムーさん?そこのところ詳しく教えてくださいませんか?』

「い、いやぁぁぁぁぁぁ!!」


ムーが連れてかれたので朝飯食えない。カイネ作れるかな?起こしてくるかちょっと脅し気味に。

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