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《異世界の主人公共へ》  作者: 菜季滅入
《魔王軍の復活計画始動》
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《最強生物》

目が覚めると俺は途轍もない頭痛に襲われた。入りきらないのに無理矢理何かを押し込まれたような感覚、いったいなんだって言うんだ。


変な夢を見たと思えば頭痛に襲われるって運が悪いのか?いやまあそうなんですけどね。


初代の勇者と魔王を調べたからあんな夢を見たと思うが、なぁんか引っかかる。


夢にしては現実すぎる、昔一度だけ幻覚をかけられた時に感覚が似ている。


誰かが幻覚をかけた可能性もあるが確率は一パーセントにも満たない、なぜなら俺が気付くからだ。


この城には俺の肉片を土に変えて埋め込んで造った城だ、つまり侵入者が来ればわかる。


パンドラ達にも反応すると思う人もいるだろうが、そこはご都合主義だ。俺が仲間と認識していないと反応します。


つまり俺が認めた人間じゃないと全員侵入者です。ざっくりしてます。


まあ、つまりだ。拠点には誰一人として侵入者はいないということだ。


そんな状況で誰が俺に幻覚系の呪法を使うことができるというのか。


そういえば、今まで【呪法】や【魔法】などと区別してきたが詳しく説明するか、現実逃避も兼ねて説明しよう。


まず最初に【呪文】というものがあり三つの部類がある。


一つ目は【魔法】攻撃系の呪文をのことを言う、火の玉を飛ばす呪文や氷の槍を放つことができるのが魔法者である。


二つ目は【呪法】相手のステータスを変化させる呪文が分類される、攻撃を上げることも下げることもできるのが呪法者である。


三つ目は【異法】この呪文に関しては呪文と呼べるのかわからないぐらいの異質なもの、体の一部を変化させて武器に変えることができる呪文が異法である。俺の《腐敗王の奇声(パンデミクボイス)》も異法で変化して使える技だ。


この三つの中で【異法】は俺が最も得意とする呪文だ。非武装時の戦闘では特に役立つ。


異法を使う者は数少ない。理由は魔法は精神力を削って炎や氷を具現化させる、呪法も同じく精神力を使い相手の状態を崩す。


異法は自分の体を変化させる呪文だ、破損もすれば体にも影響が出る。しかし、変化させた時に破損した部位は決して治すことができない。


異法によって変化した剣腕(けんわん)を折られた者は片腕を無くし、鎧のような硬度に変化した胴体の腹を貫けられた者は二度と穴は塞がらず、鉄をも砕く鉄足(てっそく)に変え戦いのさなかにヒビを入れられた者は歩くごとに足のヒビが広がりまともに歩くことができなくなった。


ほとんどの者は体が武器のように壊れ死んでいく、異法を使う者は《人器》と呼ばれ道具のように扱われ死ぬ者は少なくない。


俺は呪いのせいで壊れたところから再生します、まさにチートです。


そんなわけで《呪文》の説明終了。


侵入者が入ってくることはないとわかったので、めんどくさいから気にしない。夢だったと考えれば終わりだ。


考え過ぎたところで答えが見つかるとは限らない。さぁ今日もがんばって四天王最後の枠を埋めに行こう。


今日のパートナーはいません。気分的に一人がよかった。


最後の四天王はバランスを考えて探したい、静かな方が集中できるだろ?


例え道中、人に斬られても、銃を眉間に撃ち込まれても、槍を腹に刺されたとしても、背中に何本も矢を放たれても、呪文で焼かれ凍らされ電撃を喰らおうとも、一人でいれば集中できるだろ?


「いやできるわけないだろうが!!」


辺りを見渡せば囲まれていた、人数的に見て盗賊団か?普通なら死んでもおかしくない量の攻撃を受けピンピンしている俺に驚いているものが何人か見られた。


警戒するように動きを観察していると、目の前にいた奴らが道を開けた、その先にいたのは盗賊の頭に相応しい風貌、服の上からでもわかる筋肉隆々な体を持つ巨漢が現れた。


ズカズカと進み俺の前まで来るとジロジロと舐め回すように観察し、野太い声で言った。


「オレはガルフ団の頭:バッグルだ、貴様は何と言う?」

「名は無い、忘れた」

「てめぇ!調子に乗ってーーーー」


パァン!と枯れた音が響き渡る、俺に向かって怒鳴りつけた男は後ろに吹き飛ばされ大の字になって気絶していた。


周りもどよどよと慌てた様子であった、なぜなら撃った本人は目の前にいるバッグルだったからだ。


「今みたいに話の邪魔をするやつは鉄拳制裁だ。いいな?」


囲まれているとは言っても多少は距離が離れている盗賊達の生唾を飲み込む音が聞こえてきた。


それほど、この頭は強いようだ。あの時の侍よりも強いかもな、ちょっとだけ胸が弾んでいる。


俺の喜びが伝わったのか、ニヤッと笑った。


「噂にたがわぬ戦闘狂だな、土の四天王よ」

「知ってたのか、ちょっとだけびっくりかな?」

「ふっ.........世界に宣戦布告をしておいて何を今更」


なるほど、こいつはあの時のクズ勇者に貼り付けた宣戦布告状の内容を聞いて俺を探していたわけか.........久々だ、俺と戦おうと思う戦闘狂は、自然と笑みが零れちまう。


「嬉しいねぇ」

「探して...探して...歩き回った。戦ってみたくてな。歴史上最強生物であるお前と」


俺、そんな風にも言われてるんだ。もはやゾンビでも魔物でも不死身でもなく......最強生物。なんだろう虚しくなってきた。


そんな俺とは対照的にバッグルの表情を見ると喜んでいるのが読み取れる。


だが、気のせいだろうか?周りの部下達は怯えたように後ずさりしている、こんなにいい笑顔をしているのに恐怖するところがあるのか?


ーーー普通の人から見れば口角と目は異常に釣り上がり、笑顔というには程遠く強いて言うなら悪魔の笑みであった。しかし、彼の感覚は普通の人より崩れているため仕方がないのだーーー


さて、俺は喜んでいる。生きてきた中でここまで喜びが出てきたのは久しぶりだ。この感情を呼び覚ましてくれたこの男に敬意を表そう。


「お前のような愚者の勇気へ敬意を評して本気を出そう」

「ありがたいな。最強生物の本気を見れるなんて」


最強生物という言葉を聞くたびに俺の心に何かよくわからない悲しみが流れてくる。


「最強生物ってやめて?本当に悲しくなってくるから.........」

「むっ?それはすまん。気に障るとは思わなくてな」

「はぁぁ......いいや、さっさと殺ろうぜ?」


四天王はパチンッ!と指を鳴らした。


地面が揺れ、バッグルと彼が立っている場所はせり上がり、周りにある地面を吸収しながら大きく広がり空中に巨大な闘技場を生成した。


周りにいた盗賊達は危ないから巻き込まれないように頑丈な檻に閉じ込めておく、頑丈さは保証します。


天変地異に等しい出来事が起こり驚いていると思いきや、バッグルは頭を地面に擦り付けていた。その姿は正に土下座だった。


「な、なんで!?」

「オレは戦いが好きだ!だから、このように戦いを承諾してくれた上に戦場まで用意してくれた相手への感謝の念だ」


腐生(じんせい)を生きること幾数年......ここまでの戦闘狂は初めてだ、もはやドン引きのレベル。


「さぁぁ!!心ゆくまでぇぇぇぇ!楽しもうじゃぁぁないかぁ!!!」

「キャ、キャラ変わってないか?」

「いくぞぉぉぉ!四天王よぉぉぉ!!」










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