魔王少女に呼び出されたのは異世界です ②
今回は少し短めですかね。①の後半からの主人公視点となります。
楽しんで読んでもらえたらなと思っています。
それではどうぞ♪
刻人は非常に困っていた。
あの悪魔から受けた傷は素晴らしいほど綺麗に治っていた。だからもうベッドに横にならなくても良いのだが、
「…やることねぇ…」
そう、刻人は暇すぎて困っていたのだ。暇なら向こうの世界で十分に堪能してきたのだが、ここは異世界だ。異世界。自分が望んだ自分を満足させてくれるような世界。
こんなところで暇なんて買ってられるか。買ってたらそれこそ死んでしまう。
というのが刻人の考えである。
試しに周りを見渡すが、
「机にタンスに本棚、それとクローゼット…か」
どれもこれも興味をそそるものはあるが、先ずは情報を集めたい。
刻人は本棚から本を数冊取り出す。取り合えずこの世界の地形や歴史といったものから読み出すのだった。
「……字はわかるが……」
本は読める。字もわかる。けど書けそうにない。
こればっかりはしょうがないな、と思う刻人。読めるだけでも充分だ。
パラパラ捲っていくと刻人も知っているような単語も沢山出てくる。
『ルシファー』、『ベルフェゴール』、『マモン』、『レヴィアタン』、『ベルゼブブ』、『アスモデウス』、それと…『サタン』。
この七つの家系が其々魔王の一族であり、代々魔王を務めている。
「ルシファーて聞いたときは驚いたが…まさかの『七つの大罪』かよ…。てことは天使や神、悪魔も俺が知っているような名前なのか?」
さらに捲っていくと知ったような名前も出てくるが、知らない名前も沢山出てきた。
単に自分の知識不足なだけなので、その辺りは勉強していけば何とかなるだろうと思っている。
パタンと本を閉じると元の位置に戻す。すると、バサリと一つのアルバムらしき本が落ちてきた。
見ていいものなのか最初は迷ったが、まぁバレないだろうと、アルバムを開け始める。
「…………?」
だが、不思議なことにどのページにも写真らしきものは挟まれていない。そもそも写真というものがあるのかどうかも分からないが、アルバムがあるってことは写真もあるということだろう。
どんどんページを捲っていくと、一枚の写真が挟まれていた。
古びた写真だが、とても大切にされていることが分かった。
写真には優しそうな男性と女性が。真ん中には笑顔の少女が立っている。
刻人はこの笑顔の少女がユイカだということが分かった。というかこの部屋のアルバムから出てきたのだからユイカに間違いないのだが。
「……隣の女の人……人間!?」
刻人は写真の女性を見て驚く。だが、これ以上は考えようとせずアルバムに戻す。
すると、
――嫌だ。
「……あっ?」
――嫌だよ。
「………?」
声が聞こえてきた。しかも頭の中に直接。声の主は先程の少女、ユイカだろう。
何で頭の中に聞こえてきたのか分からない。刻人はどうしようか迷ったが、頭の中に響いてくるのでこのままでは『部屋に大人しく居られない』。
「絶対出てくるなって言ってたけど……。しょうがないよな♪」
刻人は傍に畳んであった学生服を羽織ると扉のノブを回し外に出るのだった。
△▼△▼△▼△
ひたすら長くて大きい廊下を歩く。一言で言うなら『デカイ』…これに尽きる。
今のところ他の悪魔とは遭遇してはいないが、もし遭遇したとしても軽く倒せる自信はあった。
前に会ったあの悪魔も今では一発で倒せるような気がしてならない。何か自分に変化があったのかどうかは知らないが、とても気分が良い。そんな感じだった。
「…つーかどこに居るんだよ…」
カツカツと足音をたてながら辺りを見渡すが、それらしき部屋や人物は見えてこない。
一度戻るか?と考えたあと、また頭の中にユイカの声が聞こえてきた。
――守ってくれない。
――誰も、誰も。
――もう、ウンザリだ。
「………」
聞こえてくる悲しみや痛みの声。何故こんな声が聞こえてくるのか分からなかった。
あの少女に何かされたのか?
それは無いなと頭を振る。まずあの少女がそんなことをするとは思えないしする理由が無い。もしあったとすれば…、
刻人は自分の胸に手を当てる。
完全に塞がっている傷。しかも痕すら残っていない。もしこの傷を少女が治していたら?その副作用だということも充分に考えられる。
「……でも副作用がこれって……なんかな…」
何かが違う。そんな気がする。すると、頭の中に響くユイカの声が段々大きくなっている事に気付いた。この事からしてもう近くまでは来ているのだろうと判断する。
そして、見つけたのは大きな扉。
ここにいる。この奥にいる。そんな気がした。
扉を開け、刻人の目に入ってきたのは、
大人に囲まれ、その中にポツンと佇む今にも泣き出しそうな一人の少女だった。
そして、少女は口を動かし何かを言っていた。
周りには聞こえない位の大きさだろう。しかし、刻人は違った。少女の声は確かに聞こえなかった…が、少女の心の声はしっかりと、刻人の頭に心にちゃんと聞こえていた。
――もう嫌だよ。
――魔王なんて…こんな世界なんて。
――誰か…。
――…助けてよ…。
少年は静かにそして、真剣に少女に向かって問いただした。
「何だ…嫌なのか?
――――魔王という肩書きが…」
振り向いた少女は驚きを隠せずに居たが、何故か安心したような、ホッとしたような顔をしていた。
ような気がした。
どうだったでしょうか?
誤字脱字、おかしい所がありましたらご指摘よろしくお願いします。
また読んでくれたら嬉しいです♪
それでは__