猫踏んじゃった 5
「それで、隠れ観てたの?」
「はい、落ち込んでいる、おばあさんに虫や子ネズミを上げる姿をそこのカキの木影から隠れて観たのです。」
ポン太は、毛むくじゃらで小さな指をか窓外に映るカキ木の方向に向ける。
チビは、ポン太の指先を追ってどこに隠れていたのかを確認した。
「それで?」
「その様子を観ると嬉しなってたまらなくなりました。優しい姿は誰にだって幸せな気分にしてくれるものでしょう。それから、たびたび観に来るようになりどうも、おばあたやん落ち込んでいる様子でして、猫ながらに分ったのでしょう。・・・その為の贈り物かと」
目を見開き楽しそうに話をするポン太にチビは優しく微笑む。
人間嫌いも、観察のしすぎから来ていると語っていたし、化かし楽しむのも、元々人間が好きで好きでたまらないからだろう。
「なんでお菊さんは、落ち込んでいたの?」
「それは・・・わかりません」
優しい狸は困惑した表情で首を大きく横に振る。
「なんで虎之助が貴方に化けるようにお願いしたのか聞かせて?」
チビは、それた話題を本筋に戻す。
「それが、つい先月の初めに虎之助が山の中で子鼠をくわえて死んでいたのです」
「賢い猫だったのね」
優しさとは相手の気持ちをくみ取とるという難しい作業だ。
知能の高い猫だったのだろう、頭の良い猫は人間の5歳児くらいIQがあると聞いたことがある。
まして、死ぬ間際まで優しさを保つとは、かなり強い理性で自分を接することが出来なければ、いけない。
ポン太は肩を落とし、はぁーと深いため息をついた。
「最後の最後までおばあさんを元気にしたかったのでしょう。その姿を観ると居てもたってもいられなくなり、おばあちゃんを元気にしてくれとお願いしているように感じました。先程は虎之助の頼みと言いましたが実際は私が勝手におもっているだけです」
「病気?それとも寿命?」
「両方でしょう。そこそこ年もいってたようですし。弱り切った体に何らかの病気に勝てなかった」