プロローグ
初めて小説を書きます。
滅茶苦茶な文章や、ストーリーになるかもしれませんが、少しでも読んでもらえたら嬉しいです。
江戸時代は飢饉の時代。
冷害、水害、噴火などの異常気象が影響で凶作が長く続き、1603年幕府設立から1876年体制奉還までに多くの人が飢えて死んだ。
そんなご時世に野良として生まれた一匹の黒猫は、町はずれにある古びた寺の住職、沢庵に縁起者として拾われた。貧しい生活を少しでも良くならないかと思う気持ちからである。
猫はチビと命名され、その名の通り体が小さい風貌をしていた。
黒い猫は欧米では魔女の使い魔として、不幸を呼ぶとされていたが、日本では「夜でも目が見える」などの理由から魔よけ、幸運を持ってくる福猫として重宝さる。
沢庵もこの、幸運を運んでくれることを期待していたが、所詮は伝説みたいなもので、豊かな生活になることはなかった。
力のない寺の坊主は、仏様に拝むだけでは食べていけない。寺子屋で先生、もめ事の仲裁、悪霊の退治などをしてお金をもらい生活を立てていた。
悪霊退治と言っても本当に幽霊や妖怪を退治する訳ではなく、そうゆう噂の原因を調べ、解決するのが役割なだけである。
実際に居るならば絶対に関わりあいになりたくないものだと、毎日の様にチビに話しかけていた。
沢庵は、荒波の中生まれ育った獣をやさしく世話していた、元々世話好きでもあったし、なにより子猫のような愛らしさの虜になっていたからだ。
チビも与えられた愛情に答えるようには、坊主に良くなついた。
どこに、行くのも一緒でたとえ仕事で遠方に行くことがあっても、沢庵から離れようとせず、犬のようについて回る。
二人は貧しいながらも幸せな時間を過ごしていたが、だが、景気の悪さは一向に好転せず、ますます貧しくなっていくばかりだ。
沢庵は、強い信仰心を持っていた。人に情けをかけることはこの世で一番尊い行為だと信じていたのだ。そのため少しばかり蓄えていた食料も、貧しい人たち分け与え、しまいには自分の食べ物すらチビや、飢えに苦しむ人にあげて飢死してしまった。
主人が居なくなり、寺に住まう理由もなくなったチビは野良猫に戻り、住職が死んだことをずっと悲しみ世直しの旅にでた。
沢庵は、人を助けることに生きがいを感じる性分だった。
飼い猫だったチビは、人の為に働けばよしよしとなでて誇りに思うだろし、少しでも恩返しができると考え、それからというもの色々な街を渡り歩き困っている人を助けることに専念した。
貧しい村に出向いては、村人に黒い姿をみせてやり
「福猫が来たぞ、これからは、幸せになるぞ」っと気休めにしかならない縁起者として愛想を至る所にふいて回り、ある時は孤児たちに魚を取って与えていた。
そんな風に人間と関わるうちに50年は生きている事に気がつき、そればかりか人語も話せるようになっていてからは、招き猫様とも呼ばれるようになっていった。
昔、沢庵が言っていた、長いこと深い悲しみや怨念を持つ動物は、妖怪になるいう言い伝えがあると。
まさか、自分が成るとは考えもしなかったが、あの優しい住職が今のチビの姿を観たら関わりあいを持ちたくないと逃げ出すかもしれない。
平成の世になってからは、助ける人もあまりいない。
ただ食いぶちを稼ぐため困っている人間の家に行き、面倒なもめ事を解決してやるお礼に食料を貰う日々だ。
どこかの家にやっかいになってもいいのだが一緒に住むと住職の猫だったという過去形になるようで嫌だったし、長いこと旅をしていたので、その日暮らしが染みついていた。
「一体、日本を何周まわったことだろう」
招き猫のチビは今夜、泊る公園の片隅でそんなことを、ふと考えた。