Act.00__Epilogue
リアス大陸の最東端に位置するアタナシウス帝国。帝都ハイロードはハイロード城を中心としており、街のどこからでも、その堂々と聳え立つ城が目に入る。大陸の中でトップの軍事力を誇るアタナシウス帝国。徴兵制を導入し、魔導学園高等部、つまり地球でいう高校生になると男女共に三年間軍事教練を学ぶことになっている。
科目によっては軍人や専門家が鞭を振るい、教育する。しかし元々アタナシウス帝国という国自体が実力主義だったという事もあり、国全体の士気は高い。軍事力も他国に比べて高く、積極的に新たな開発等を行っている。帝王を頂点とし、貴族が国の中心を多く担っている。
街は騎士団ではなく憲兵団が統治しており、犯罪が起きるのはごく稀である。戦時中の時でもそれは変わらない。資源は豊富。軍事力も広大。民の士気は高い。だがしかし、そんな完璧の代名詞ともいえる帝国も数ヶ月前から何かが大きく変化した。劇的とも言っていい。
それは戦争だ。今から約六ヶ月前のことだ。現帝王、ロキ・A・シュヴァルツが突如リーンベルク王国に戦線を布告すると、瞬く間に王国領を占領していった。しかしこの出来事に帝国の民は驚いた。帝国と王国との仲は決して悪くはなかった。寧ろ良好な関係だったと口を揃えて言う。
何故か。誰もがそう思った。帝王に対して満足のいく理由を教えて欲しいと手紙を出した老人がいた。結果はどうなっただろうか。その日、手紙を出した老人の家に憲兵が押し寄せ、連行していった。そして翌日、その老人は国家反逆罪として殺された。
やはり人々はこう言う。何故か、と。とある女性は言う。その老人は昔帝国兵として国に尽くしたと。彼女は手紙を出した。その一週間後。彼女は自らを殺した。自らを殺める前、彼女は友人に告白した。誰かに連れ去られ、強姦されたのだと。結果、彼女は自らを殺めた。
人々は思う。逆らってはいけない、と。以前は民を思い、諸外国からも親しまれていた帝王が何故。しかし口に出す事は叶わない。心の中に大きな痞えを抱えたまま時は経ち、王国は帝国によって占領された。捕虜として捕まった王国兵は口々にこう言う。何故だ、と。
帝国は次に大陸最西端に位置するスメラギ皇国に戦線を布告した。派遣されたのは帝国の即席展開強襲部隊、竜籠部隊。首都ミナヅキを奇襲、占領する。そう公表されていた。作戦当日。帝国の民は驚愕した。帝国が誇る竜籠部隊が全滅したのだ。生存者ゼロ。その後、アシッドライン村において憤怒の狂帝ことファルーガ・マグナが戦死した。だが、その戦いで判明したことがあった。
それは、異世界の軍隊がスメラギ皇国に味方しているという事だった。帝国に敗走は許されない。そんな時だった。帝王は一人の男を参謀として迎え入れた。名は、ヨシハル・シンドウ。彼は帝国に新たな武器を伝え、とある作戦を率いた。マリンフォート港における作戦である。勝利に犠牲は付きもの。その言葉通り、犠牲者は出たが帝国は初めて異世界の軍隊との戦いで勝利を収めた。
「素晴らしい。実に素晴らしいぞヨシハル!」
ハイロード城の執務室で笑う者がいた。アタナシウス帝国の帝王、ロキ・A・シュヴァルツだ。片手には真紅のワインが注がれたワイングラスを持ち、賞賛の言葉を目の前に座る男性に浴びせかける。男性、新藤義晴は眼鏡の汚れを拭き取り、掛け直すと小さな笑みを浮かべた。傍らに置かれたワイングラスを手に取り、口に含むと葡萄の芳醇な香りを楽しむ。
「お役に立てたようで何より」
「実に気分が良いぞ。主が教えてくれたアサルトライフルとかいう武器も素晴らしい物だ。百戦錬磨の我が軍に相応しい武器だ!」
そう言うなり、ロキは帝国製AKアサルトライフルのチャージングハンドルを前後させる。バナナ型弾倉に並べられた真鍮製の7.62×39mmフルメタルジャケット弾が鈍色の光を放ち、薬室に装填された。木製の銃床を肩に当てて固定すると執務室に置かれた的に狙いを定め、引き金を引いた。セレクターはフルオート。耳を劈く銃声を気に留めない様子だ。弾倉から銃弾がなくなり、銃声の余韻が部屋全体に反響した。そしてロキは高らかに笑う。
「お気に召したようで何よりで御座います」
静かに、新藤義晴はそう言う。しかし眼鏡を隔てた、その瞳の奥に宿る想いを、今はまだ誰も知らない。
遅れましたが皆様、初めまして。桜咲零夜と申します。この度は私の処女作である『異世界の戦場』を手に取り、読んでくださりました事に心からの感謝を申し上げます。ありがとうございます。
昨年の11月13日から、こちらの小説家になろうで投稿を始めました。きっかけは特に無いのですが、自分の書いた小説を読んで一人でも多くの方々に楽しんでいただけたら嬉しい。そんな気持ちで本日、2月27日(実は作者の誕生日)まで書いてきました。ジャンルが≪Military × Fantasy≫という万人受けする物ではありませんが、自身の趣味を交えた作品を最後まで読んでくださった事に心の底から感謝しています。お気に入り登録や評価が初めてついた時は正直嬉しかったです。
「あっ、お気に入り登録された!」
上記が初めてお気に入り登録がついた時の私です。普通ですね……。ですが稚拙な文章の塊とも言えるこの作品にお気に入り登録がされるとは思ってもみなかったもので。
では、話を戻します。この作品はPhase.1とPhase.2の二部制となります。中途半端なところで完結したのはそのせいです。申し訳ありません。ファンタジーなのに魔法成分がほぼ皆無だった事についても申し訳ありませんでした。Phase.2からはキチンと出していきたいと思います。
さて、本作品は完結となっておりますが、実際には完結していません。いえ、完結はしているのですけど。ややこしいですね。Phase.1が完結してPhase.2が完結していませんので、言ってしまえば半完結と言ったところですね。私自身、現在受験生という事もあり、なかなか続きが書けないのが現状です。そんな中でPhase.1が完結出来た事は嬉しい限りです。しかし、これからは勉強に力を注がなければ小説どころではありません。
ですので、しばらくのお休みを頂きたいと思います。もしかすると息抜きとして書いて投稿。なんて事も有るかもしれません。ひとまず何を言いたいのかと言いますと、しおりを消さないで欲しい、という事です。是非とも皆様にはPhase.2から登場する新しい登場人物なども見てもらいたいのです。
海兵隊がどうなるのか。もはや空気の空母やイージス艦はどうなるのか。他にも幾つか。
あまり長く書くのもアレなので後書きは以上とします。
何度も言いますが、この度は本書を読んでくださり誠にありがとうございました。稚拙な文章や、にわか知識で構成された物ですが、これからも読んでくださると嬉しい限りです。ではまたPhase.2でお会いしましょう(投稿を始め次第、連載中に戻します)。
桜咲零夜。