表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

考える事を放棄したともいう。

揺れる茂みから飛び出してきたのは…


…子供?


あぁ、各務は子供嫌いだったっけ。


だからかー、と思いながら各務を見ると、視線はまだ茂みの方。


子供に威嚇していた訳ではないらしい。

いやいや、そんなことより、初めて人に会えたんだった。


「あ、ちょっと聞きたいこ…って大丈夫なのっ?!」


のんきに声をかけたあたしだったけど、子供の姿を見て聞きたい事なんて吹っ飛んだ。


身体のあちこちから血を滲ませた子供は、まるで天敵にあったようにその場で立ち尽くす。


「えーと、大丈夫?」


声をかけながらそっと子供に近づく。


「シャーッ!!」


未だに茂みの向こうを威嚇している各務の声に、子供がビクッと肩を揺らす。


あたしは、再度子供に声をかける。


「今のは、君に対してじゃないからね?」


安心させるように。


不意に、各務があたしの方を振り向き目を細める。

…いや、各務サンその表情はあれですよね、母猫が子供を見守る時の…


ん?

なんか声が聞こえてきた?


子供が焦ったように周りを見渡す。


「もしかして、追われてる?」


あたしの問いかけに、子供は俯いた。


各務は相変わらず茂みの方を警戒している。


あぁ、そうか。

各務はこの子を助けたいんだ。


「ね、君?少なくとも、あたしはここに来たばかりだから、君の敵ではないよ」


だから、こっちにおいで?


あたしは自分から子供に近づくのをやめた。


「………」


少し悩んでいたみたいだけど、子供はあたしのそばへと寄ってきた。

離れている時から酷い怪我だと思っていたけど、予想以上に傷だらけ…。


深い傷じゃないけど、あちこち腫れてる。

たぶん、身体だけじゃなくて、顔も…。


子供を背にかばって、あたしも各務の視線の先を睨みつける。


茂みをガサガサ揺らして現れた大勢の人間を。


「…いい大人が大勢で、子供相手にみっともない」


苛立ちを隠さず、あたしは呟く。


「なんだ、あんたは?」


「おい、そいつが何なのかわかってるのか?」


「早く殺さないと!」


「そうだ!今のうちに殺らないと」


口々に喚く人達に、どれだけこの子供は傷つけられたんだろう。


身体の傷だけじゃない、心だって、目に見えないだけで酷く深い傷がついているんだろう。


「ふざけるな!

こんな事許せるわけがない!」


あたしの怒声に、各務の様子が変化する。


「グルルルルッ!」


少しずつ膨らみ、爪が牙がそして身体が大きくなっていく。


「な、何だ?」


「ま、まさか魔獣?」


「何でこんなところに魔獣が?」


パニックを起こす人達に対し、あたしは冷静だった。


玄関開けたら森の中だったし、いまさら愛猫がJOBチェンジしても何とも思わないよ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ