空間難民な武官を保護しました
迷子ってなれるもんなんですね。
良かったですよ、立ち入り禁止のところ
にいかないで。
「…すいません、すみません、すいません。」
武官はひたすら謝っている。
本当に女性ですか?ってくらい
可愛いんですが。
ここは、海洋生物研究所です。
この間の川牛の暴走の原因解明
のためにイシエクワ隊長のお供できたようです。
「イシエクワ隊長のお供で来られた方ですよね、ご案内しますよ。」
私は言った。
「すみません、お忙しいのに。」
武官さんは言った。
小柄で可愛い女性なんて、
美香菜研究員以外見たことない。
身のこなしは武官らしく
すばやいですね。
方向オンチだけど。
「あの、碓井霧華ともうします、第二騎士団に所属してます。」
沈黙に耐えられなかったのか
武官…霧華さんが言った。
「日本人なんですね。」
私は言った。
美香菜さんがいるからわかる。
「はい…あー、え~と空間難民なんです。」
霧華さんが言った。
ああ、噂のおしとやか武官ですね。
空間難民ってあんまりかわんないんですね。
廊下の向こうから
急ぎ足で歩いてくる
イシエクワ隊長が見える。
相変わらず、格好いいですね。
「霧華!」
隊長が呼んだ。
「隊長!すみません!」
霧華さんが言った。
「世話をかけた。」
隊長が頭を下げた。
「よかったですね。」
私は言った。
「本当にありがとうございました、あのお名前は?」
霧華さんが言った。
私、プロポーズされてます?
女顔でも、男なんですよ。
「ウセーファさん、外部の人です。」
セージェル研究主任が部屋から出てきていった。
イシエクワ隊長は苦笑いしている。
「ウセーファさんもうしわけない、霧華、その人は男性だ。」
イシエクワ隊長が言った。
「……え?すみません、プロポーズしてません、ごめんなさい。」
霧華さんは言った。
まあ、私、ラハヤ・ウセーファは
女とまちがえられる
女顔で身長高過ぎですから
慣れてますよ。
「霧華、お前…迂闊すぎだ。」
イシエクワ隊長が言った。
「すみません、おわびのしようもございません。」
霧華さんは顔を上げない。
「じゃお茶でもご馳走してください。」
私みたいなお転爺の跳ねっ返りは
いやかも知れないけど。
「わかりました。」
霧華さんが言った。
「うちの団員が申し訳ない。」
イシエクワ隊長が言った。
やっぱり格好いい。
「…ウセーファさんも春がきたのかしら?」
セージェル研究主任が言った。
イシエクワ隊長ともっと
話せるかも知れないから
言ってみただけです。
まあ、霧華さんとも
ゆっくり話してみたいですけど。