これはラブコメではありません
初投稿です。
誤字脱字が目立つと思いますのですが、暇な時にでも流し読みで良いので読んでいただけたら幸いです。
関谷物語
月の始め、この時期はまだ梅雨の面影は無く、比較的過ごし易い日々が続いていた。
ただ高校生となると話は別だ。
「なあ、関谷、お前はこれで本当に勉強しているのか」
そう言って突きつけられた一枚の紙切れ。
そこには赤ペンで、でかでかと3と書かれていた。
「いや…勉強はしているんですけどね、何と言うか…紙切れ一枚じゃ俺の才能は示しきれないと言うか…」
「そういうことは結果を示してから言え」
つまりあれだ、テストの結果があまりにも悪く、こうして放課後、数学科の数少ない女教師の伊織先生に呼び出された訳である。
「他の教科も同じ様な結果らしいな」
「…似たり寄ったりで」
はぁ、と溜息をつくがこれは俺ばっかりに非があるわけじゃないだろ。
「何だその目は、何か文句でもあるのか」
「いえ…別に」
思ったことをそのまま言えないのが現実だ。
「まさかと思うが、こんな点数を取ったのは私のせいだと言いたいんじゃ無いんだろうな」
…この人は読心術を使えるのか⁉独身だけに。
パァン!
「余計なことを考えるな」
「すいません…」
ちなみに伊織先生に結婚の話題と胸のことについては禁句である。
年齢はわからないが、とにかく伊織先生は美人である。
大人の風貌を持ち合わせていて、
いつも凛とした態度が生徒たちの間で人気を誇っている。特に女子の間で…
それと反対に男子の間ではなかなかの不人気である。
というよりも恐がっているのが大半で、容姿に問題があるわけでは無い。一部を除けば…
それが『胸』である。
伊織先生は大人としての美しさがある割には胸が無い。恐ろしいほど無い。むしろ絶壁である。
以前にこんな質問をした生徒がいた。
『先生は何でまな板をいれているんですか?』
その生徒なりの冗談のつもりだったのだろう。
しかし、伊織先生の対応が…
『…放課後、体育館の裏に来い』
いつの時代の不良だよ⁉
今時いないよ、体育館の裏を選ぶ不良は。
その後の質問した生徒はと言うと、戻ってくるなり半べそで反省文を書き出して、翌朝には山の様に積まれた原稿用紙があった。
それ以来、伊織先生には胸について語るなという暗黙のルールができあがった。
独身についてもエピソードがあるわけで…
パァン!
「いいかげんに戻って来い。目が飛んでいたぞ」
「す、すいません…で何の話をしてましたっけ?」
パァーン‼
「お前の成績についてだ。でどうするんだ、今後」
「どうするも何も、先生が原因じゃどうしようもありません」
伊織先生の顔が引きつって見えるのは間違いないよな…
「あ、あくまでも私のせいなのか…」
「もちろんです」
パァン!
そろそろ頭を叩くのはやめて欲しいのですが…
ちなみに叩いているのは、俺のテストだ。
ペラ紙なのに地味に痛い。なぜだろう…
「当然の様に言うな。自慢になるが、私の持っているクラスは他よりも平均が高いぞ。お前以外のやつは大概が集中してやっているんだが、それでも私のせいだと言うのか」
そりゃそうだろ、あれだけの恐怖がバラ撒かれていれば、バカしようとする奴なんていないだろうね。
そうすりゃ、自然と点数は上がるもんだ。
「とにかくだ、今のうちから勉強しておかないと大人になってから後悔する。特に成長期を逃すと覚えられるものも覚えられないものだ。私もちゃんとやっておけば良かったと後悔したものだ」
「……先生の胸はまだ成長期では……」
「あぁ⁉何か言ったか」
「いえ何も!」
その目で睨みつけるのはやめてください!完全に殺す目だろ…
「じゃあ、これを渡しておく」
ドサッ!
ドサッ⁉ってなんだよこの量⁉軽く百科事典一冊分はあるだろこれ。
「今日から二週間後、追試を行うからな。それまでには終わらせておけよ」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ、二週間でこの量をやれと⁉それに他の教科の課題もあるんですよ⁉」
「ふん、自業自得だ」
鼻で笑ったよ、この先生。
はは、悪魔の様に思えて見たよ。
容姿が良い分、かなり悪どい悪魔なのは間違い無いだろう。
「あ、そうだ、言い忘れていたがこれは放課後にやってもらうからな」
「はい?」
「持って帰ったところで、全く手を付けないだろうと思ってな、自習教室でやってもらう」
「ちなみに俺に拒否権は…」
「あるわけ無いだろう」
「そうですよねー」
この悪魔は俺の自由まで奪うつもりか⁉
「今日からやってもらうからな、教室は進路指導室だからな、すぐ行け。逃げたら…解っているよな」
「……はい」
とは言ったものの、家でも学校でもあまり変わらない気がするよな。
わからないのだから。
しかし、これはフラグを立てる予兆なのかもしれない。
この扉の向こうには美少女一人が勉強していて、そのままラブコメ突入では⁉
では、この扉はどうやって開けるべきだ?
乱暴に開けて存在感を示す?または、遠慮がちに入ってその場にナチュラルに紛れ込む?
この際は全力で開けて、あえて悪いイメージを持たせるのがいいかもしれない。
そうと決まれば、後はこの扉を思いっきりスライドさせるだけ!
ガラッ!ゴスッ‼
なんだ、今の音は?
音の原因となる扉の向こう側、さらにいえば、今開けた反対の扉側に少女、いや美少女が倒れていた。
あれ?何で倒れているの?
そんなことよりも頭から血⁉
何で血を流しながら倒れているんだよ⁉
いや、待て冷静になれ俺。
まず一つずつ考えていこう。
Q1、なぜ頭から血を流し倒れているのか。
A1、何かが頭にぶつかりそのまま倒された。
Q2、なぜこの美少女は、扉間際にいたのか。
A2、俺が開けた扉と反対側から出ようとしたから。
Q3、俺が扉を開けた時の音は何だったのか。
A3、何かが扉に当たった音。
結論
俺がやりました。
ど、どどどどどうしようぅぅぅ⁉
やっちまったよ、女の子一人を手にかけてしまったよ⁉
まずい、このことが公になったら…
TV中継
『友人Aさんの話を聞いてみましょう』
『いつかやると思ってましたよ』
ちょっと待てぇい‼
誰だ友人A!何がやると思っていましただ‼
俺が美少女を傷つける様なことをするはずが…無いはずなんだが。
とにかく、この状況をどうするかだ。
これは間違い無く事故!
よって俺は罪には問われない!…といいなぁ。
じゃあ、保健室に運ぶのがベストなはずだが…どうやって?
「おい、関谷、扉の前で何突き立っている。早く入らないか」
この声は伊織先生!
もうあなたでいいですから、この状況を助けてくださいよ!
「何かあるの…か……お前がやったのか…」
「いや、そのやったにはやったんですけど…」
「まさか本当にやるとは…言っててくれれば、相談したのに…」
この先生はなぜ俺がやったことに対して、何の疑問も持たないのだろうか。
「いや、先生、これは事故であって故意ではありませんよ。それよりも、この人の容体の方が…」
「そうだった、関谷、保健室に行ってすぐに治療できるように準備するよう言ってくれ。私がこの子を運ぶ」
本当は逆だよな…
「わ、わかりました」
この後のことは、伊織先生が驚異的な早さで運んで来たことと、幸いなことに、女の子には傷が残る程度ですんだこと、そして俺が事情聴取のため、また教務室に呼び出されたことがあった。
おかげさまで、この日の勉強時間は0。
なのに課題の提出日は伸びないそうで。
理不尽だ…
翌朝、俺が教室に入ると、クラスメイトほぼ全員の視線を感じた。
特に女子からは、まるで汚物を見るような視線が…
俺が席に座ると一人の男子生徒がやって来た。
「やっちまったな」
「何だよ、田中、どうせ昨日のことだろうが、どうしてこんなにも対応が酷いんだ?」
「どうしてって、お前がいけないんだろ!」
「そりゃ、俺が全面的に悪いだろうが、あれは事故であって…」
「事故⁉自分から襲いかかっておいて、それを事故呼ばわりかよ!見損なったぜ」
「ちょっと待て、お前は何か勘違いしてないか」
それも俺の今後の高校生活が左右される程の大きな間違いを。
「俺は女子に襲いかかったりなんかしてないぞ」
「え?」
クラス中がキョトンとしていることに対して俺はどう思えば良いんだ?
怒ってもいいのか?
「えっと、お前が女子に襲いかかった際に頭を怪我させたんじゃないのか?」
「そんなわけないだろ。そもそも誰が言い出したんだよ」
「えーと…」
何だ?誰か分からないのかよ…
「確か、朝騒ぎ出したのは田中君からよね」
「そうそう、いきなり大声で話し出すんだもんビックリしたよ」
以上、女子からの情報。
「田中、言い残すことは」
「………えへっ☆」
「えへっ☆じゃねぇだろ‼」
田中、(友達A)によって俺の疑いは全校に広まっていたようだ。
おかげで俺のラブコメはまだまだ遠いようだ。
ちなみに余談だが、伊織先生の胸の発言も田中だったりする。
小説内に登場する名前は、実際とは関係ありません。




