切れる50代、手前
『行って欲しくない。我が儘だって分かってる……分かってる…けど。』
伸行はそこで突っ込まない。
ひたすら由梨の先の言葉を待つ。
『今は少しでもみんなで一緒に居たいんだ、ごめんな…こんなお姉ちゃんで…。』
由梨の顔を見るとなんともいえない複雑な顔をしていた。
それを見るとなんとも言えない気持ちになる。
『本当なら、笑顔で背中を押してやれればいいんだがな。』
由梨は、顔を下に向けた。
「俺も今から独り言だ。」
そう言って、伸行は少し明るい表情を作り由梨を見ると、
由梨は何も言わず、ただ黙って顔を下に向けていた。
「本当にありがとう…お姉ちゃん。」
伸行は。聞き取れるかどうか分からないほど小さな声で呟いた。
『うん…帰ろうか!』
由梨はそう言って、俯いていた顔をあげ、伸行の手を引っ張っていく。
「本当に、ありがとう。」
手を引っ張られながら、伸行はまた小さい声で呟いた。
これまた急展開ですね、伸行君。
―――その夜。
「親父、俺…ロンドンに行くかもしれない。」
伸行は不意に親父さんに言った。
『父さんに会ったのか?』
淡々と親父さんは返す。
伸行はなんとも生きた心地がしなかった。
『――――――許さん!』
家に冷たい声が響いた。
この問題はしばらくかかりますね、伸行君。
次は葵か愛花です!