むでぃ?無理!
「…桜か。」
伸行は苦虫をすりつぶしたような顔をしている。
蓮は何を考えているか分からないが、何も言わない…いわゆる無表情。
そう、目の前に居るこの美人こそ現在の生徒会長。
朝霧 桜である。
桜は手にタイヤキのたくさん入った紙袋を持っている。
『何その顔、失礼な奴ね!』
桜は手に持っていたタイヤキを握りつぶす勢いで、伸行に食って掛かる。
「すいませんね。というか、そのタイヤキ潰すんだったら、俺が貰うぞ。」
タイヤキの中から少し餡が出てきている…なんとなく可哀想。
『どーぞ。』
無愛想に桜は伸行の口の中にぶち込む。
「うっ、あああごっ…はひりきらふぁい、むでぃ、むでぃ。」
桜は笑いながら、
『美味しいのね?』
押し込む…押し込む…また押し込む。
伸行は蓮が居る手前、吐き出すわけにもいかないので気合で飲み込んだ。
「げっほっ…げっほっ。殺すつもりかああ!」
そして、涙目になりながら反抗する。
蓮を見ると無表情、というか少しむすっとしている。
「蓮。行こう、こいつと関わったら駄目だ。」
伸行は蓮の手を引っ張り連れてとする…が動かない。
表情も何もかもが微動だにしない。
『はっきり言っとく必要があるみたいね、桜。』
蓮は誰から見ても作り笑いと分かる笑みをつくり桜を睨む。
『あら、何かしら?』
桜も負けず劣らず作り笑いを装備。
『伸行は私のだもん!桜には…絶対にぜーったいに、渡さない。』
普段は一番大人の蓮が、迫力満点の笑顔で桜に詰め寄る。
伸行を見てみると…赤面。
ちょっと、赤面してる場合じゃないですよ伸行君。
『あーら可哀想に。伸行は【物】扱い?』
桜は、余裕の顔をしている。
『なら、関わらないでね!』
蓮と桜は互いに引っ付きそうなほど顔を近づけた。
そして、絶対に笑みを絶やさない。
『嫌に決まってるじゃない!』
デコが引っ付きそうだ。
『実は、私と伸行が2人でここに来てたの見て嫉妬したんでしょ?違う?』
蓮は本日最大級の笑みを桜に突きつける。
「ねーよ。」
伸行は、両手を2人の頭をぽんと置いて動き止める。
うーっと、うなり声が聞こえてきそうな形相に変わった。
「ほら、今日はここでお開き、蓮はタイヤキ買って、桜はタイヤキ冷えるぞ?」
そう言って、引き離す。
『『こいつの肩持つの?』』
その後しばらく伸行が諭して、
二人とも同時にペコッと頭を下げて解散。
蓮と伸行はタイヤキを買いに、桜はさっさと帰ってしまった。
桜は帰り道にタイヤキをがつがつと頬張りながら。
『嫉妬したわよ…そりゃ。』
文句を言いながら、また一つタイヤキを手に取った。
もちっと蓮との話があります。
桜好きだなあ。笑