由梨・愛花の思惑と新しい人との出会い
全く…伸行は分かってない。
心のもやもやがたまっている、由梨。
面倒くさいクラスでの挨拶を終えて、席に着いて窓を眺める。
窓は開けていて、少し風が吹いている。
どうしても、少女は許せない事があった。
やっぱり初日は一緒に伸行と学校に行きたかった。
わがままだとは分かっている。一番上のお姉ちゃんがこれでは…とも思う。
でも…たとえどんなサプライズがあろうと、それには変えられないものだとも思った。
あいつは本当に乙女心ってやつが分かっていない。
そういえば…昔も―――。
キンコーンカンコーン。
そこで授業終了のチャイムが鳴ったと、同時に
由梨の周りに人が集まってきた、逃げようか考えていると、
ひょっこりと人だかりから頭を出している人がいる。みるからに、穏和そうな人だった。
『始めまして、八島 初花です。』
その子は周りの誰よりも早く声をかけてきた。
2年の教室…。
愛花も同じくクラスの挨拶を終え席に着く。
伸行と同じクラスになったのだが、まだ帰ってきて居ない。
何かあったのだろうかと心配になるが、気にしないフリをする。
怒っている動機はおそらく由梨と一緒。
本人は表面に出しているつもりはないだろうが、それが逆に空気をピリピリと震わせる。
チラチラと伸行の席を確認する。
愛花の方は由梨とは逆で、誰も話しかけてはこない…と思いきや、
一人の少年と1人の少女が話しかけてきた。
『伸行のお嫁さんだっけ?』
にこっと笑う少年にはあどけなさが残っている。
『こいつが失礼でごめんね?私は山下 紅葉でこいつは、廃棄物。』
しゃんとした女の子はしゃきっとしていて、どちらかというと委員長タイプ。
しかし、どこか憎めない人柄をしていた。
『廃棄物…だと?俺を陸奥や道隆と一緒にしないでくれ。』
この二人はとても仲が良さそうだと見て分かる。
『あの…廃棄物さん。』
さらっとギャグを入れてくる愛花。
『誰が廃棄物だ!』
きっちりツッコンでくる少年。
少しいらだった気持ちが落ち着いた気がした。