EP.17ただ想いのままに全力で.3
さっちゃんがブチ切れなんだよ。
周りにある岩や木々を捻ってる……でも、私に通じ無いって事は分かってるよね!
「ああああああああああ────っ!」
凄いなぁ……映画で観た槍の雨みたいだ。
ちゃんとレオンちゃんに当たらない様に、私目掛けて飛んで来るんだよ。
逃げ場は無い……でも、逃げる必要も無い!
一本目──槍の穂先に拳を撃ち込み破壊っ!
二本目──槍の管を掴んで折り破壊っ!
三本目──腕を横薙ぎに振り抜き破壊っ!
四本目──左足で蹴り込み破壊っ!
五本目──左足を戻す勢いのまま右足を上げ破壊っ!
六本目──宙に浮いたまま腰を捻り左足を回して破壊っ!
七本目──そのまま回って右足踵で破壊っ!
「ふんっ、ふんっ、えいやっ、ほいっ」
八本目、九本目、十本目、十一本目、十二本目、十三本目、十四本目────
「ふんふんふんふんふんっ、でりゃっ、ほいっ」
「花乃歌ぁああああああああ────!」
────七十三本目、七十四本目、七十五本目、七十六本目、七十七本目、まだまだ来るんだよぉ、でも無駄なのさ! 施設での暮らしを思い出したからね!
箸を持ったら『ポキッ』って粉々に、壁に手を付いたら『ドンッ』って凹んだし、施設の人に抱き付いたら、『メギョッ』って音の後に救急で搬送されてたの。
そんな私に、身体の動かし方、力の込め方、力の抜き方を教えてくれていたのが、十島重八代先生なんだよ。記憶が戻っても、私的にはもう一人のママだと思ってる、凄く強い人です。暴走状態の私を……軽く転がしてたもん。
そのもう一人のママに記憶を操作されてたんだけどね……記憶を操作された時に、『ごめんね』って謝ってたから、許してあげるんだよ。
だから──今の私ならこのスキルを、制御出来るんだよさっちゃんっ!
二百五十五っ、緩んだ──今っ!
「先ずはその握ってるモノ──ぽいしちゃうんだよっ!」
全力で踏み込んで空へ────
「花乃歌っ、貴女一体──っ」
「貰うねさっちゃん(にぎにぎ)」
────さっちゃんが泣きそうだぁ、後で抱き締めてあげよっと、軽やかに着地出来ずに足埋まった!?
「花乃歌っ! それを返しなさいっ!」
「レオンちゃん! 今っ!」
「待ってたぜっ、華ノ恵ぇえええええええええ──っ!」
────キィイイインッ────
「がっっっ、花乃歌っ貴女っ!?」
「ふふん、(ズボッ)返す訳が無いんだよさっちゃん……何かこの玉、熱くなってきてる?」
「早くっ、返っっっ、発動っ」
この玉爆発したら駄目なんだよね……それにさっきのさっちゃん、この玉握ってると思ってたんだけど、浮かせてた様な。
「私持ててるんだけど、これって結構危ない玉?」
「えっ…………」
「何だ、華ノ恵の奴急に固まったぞ……」
さっちゃん今気付いたの?
私にぎにぎ持ててるんだよ……変?
「あぇ──(べちゃっ)」
「…………なぁ花乃歌、御嬢様力尽きたぞ……それ、どうすんだ?」
「…………どうしようレオンちゃん……えいっ!(プシュッ)潰せた!?」
「花乃歌怖っ!? 華ノ恵が必死で運んでた奴を握り潰せるって怖っ!?」
レオンちゃんがドン引きしてるぅ……だって持ててるから、潰せるかなぁって思ったらいけたんだもんっ、危ないヤツじゃ無かったんだよきっと!
「ふっ…ざけ……はぁ、はぁっ」
死にそうな男の娘忘れてた!?
何か睨んで来てるし……なんでさ? 被害者は私なんだよ?
「花乃歌、今潰したヤツを作ったのがアイツだ」
へぇ……なんか御免なさい。
けど簡単に潰れたんだよ、簡単に。
「あれの何処が危ないヤツなのさ……潰した感触は──ただの空気だったんだよ?」
「はっ、ははっ……神級魔法が…空気…(ペチャッ)」
「……花乃歌、少しは言葉選ぼうな?」
「レオンちゃん酷いっ!?」
真実を口にしただけだし……まさか気絶するなんて思わないんだよ。
「それでさ花乃歌……」
「なあにレオンちゃん……」
「私ら、どうやって帰れば良いんだ……」
「うん、分かんない……」
と言う事で『ギャァッ』今は、『ブモッ』何か集まって来た『メェ…ッ』魔物さん達から、『ゴギュッ』寝ているさっちゃんを、『コケッ』守っているんだよっ『ゴケッ』と……何で鶏さん?
「花乃歌凄いな、全然疲れて無いじゃん」
「そうなんだよレオンちゃん! 寝て起きたら力が溢れて来て、全然疲れないの! 寧ろ頭がスッキリしてます……なんでだろ?」
「私が知る訳無いだろ……」
「なんだ、まだ居たのかお前ら」
「うひゃっ、誰だ急に!?」
あれっ……小々波さんだ……何で迷宮に居るのさ?
「小々波さん、こんな所で何してるの? ここは迷宮って言う危ない場所なんだよ」
「いや花乃歌、お前記憶戻ってんだから分かるだろ…………えっ、何だよその分かんないって顔は!?」
さっちゃんのパパさんと知り合いなのは知ってるけど……まさか迷宮に入れるだなんて、知らなかったんだよ。
「小々波さんも終末の刻研究所の人だったんだね、知らなかったんだよ」
「…………ソウダヨ、ケンキュウジョノヒトリナンダ──バレチャッタネッ……はぁ……」
「花乃歌……なんかその兄さん、物凄くショックを受けてるぞ……」
何でなのさ? 変な小々波さんだよ。
「まぁ良いさ、帰り道は案内してやるから、安心しなよ」
「助かったぁ……良かったな花乃歌」
「そうだね! 早く帰ってさっちゃんを休ませないと! 早く早く小々波さん!」
さっちゃんは私がおんぶするよ!
「へいへい、アイツに似て忙しいなぁ」
「何か言った小々波さん?」
「何も言ってないぞ、ほれっ! その腕が無い奴は俺が担ぐから、さっさと行くぞ──っ」




