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EP.16 白瓦六の災難



 不味いでしゅっ不味いでしゅ──!?

 まさかこの私がっ、あんなど素人丸出しのスキルを喰らうなんてっ、身体が言う事を聞かないのでしゅ!?

 しかも──『だぁああああああっ動くな白瓦っ! 丸まって身を屈めてろっ!』ってゼグに言われるのでしゅがっ、勝手に身体が動くのでしゅよ!? 

 しかもあの性悪女っ、こんなプリティ(死語)な私を狙い撃ちって……さっきから顔面か心臓目掛けて槍を飛ばして来るって事は、間違い無く殺りに来てるでしゅ!?

 ゼグが守ってくれてるでしゅが……こいつまさか、神級魔法ブッパしようとしてるでしゅか?


「ほぁ?」


 また変な声でたでしゅ、テヘっ!

 じゃないでしゅ!?

 以前それをブッパしたせいで! 

 遠くから見ていた私諸共消し飛ばして! 

 国が消えたの忘れたのでしゅかこの馬鹿ゼグ!?


「いい加減早く起きろこの馬鹿餓鬼があああ!?」

「ほっひょぃのしゅっ!?」


 しかもその魔法っ、最下層に居るであろう迷宮の核に打ち込む予定のやつなのでしゅ! それをこんな場所で使うと──ここから上の階層突き抜けて! 私達諸共都市が消えるでしゅ! 下層や最下層には届かないので無駄打ちになりましゅよ!?


「ぬっほいほしゅっ! ましゅしゅしゅ!」

「キモい踊りすんなっ、気が散って防げ無いだろうが!?」


 うぅ……魔王であった私がっ、何故こんな踊りを踊って居るのでしゅか……全部あの金髪女が悪いのでしゅっ!


「おい何処行く気だ白瓦っ! 俺から離れたら狙い撃ちされるぞ!」

「ふぃのしゅしゅしゅ……うっふんっ(変顔)」

「っっっ気が抜ける事するな馬鹿がぁあああっ!?」


 あっ、槍がゼグの太ももに刺さった……まぁコイツは頑丈でしゅからね、大丈夫でしゅ。

 こんな時ですら、私の魅力溢れる悩殺ポーズが自然と出るなんて、罪深い私でしゅ……何か勝手に身体がっ、動いて!? 


「ぐぬぬぬっ、のしゅ──っ!」

「待て白瓦っ」


 成程、金髪女に向かって走り出したでしゅ。

 あのふわふわ浮かんでいる女も、ゼグの反撃を恐れてこっちに撃ってこな『二手に分かれる何て面倒なっ!』い訳が無いでしゅねっ!?

 でもこの数ならっ「ほっしゅ!」今の私にも避けられるでしゅ……頭掠ったでしゅ、ハゲになって無いでしゅよね!?

 

「野小沢さん! そっちに向かいましたわ!」


 ふはははっ! 私はこれでも、前世にて魔王と恐れられた一人なのでしゅ! あの寝て居る化物や浮かんでる元魔王以外なら、負ける筈はないのでしゅよ!


「その化物を寄越すでしゅぅううう──!」


 あっ、戻ったでしゅヤッター!


「──っ、アホかお前わぁああああああっ!?」


     ────キィイイインッ────


「のっしゅほいほいっ!?」


 ぎゃぁあああ──っ!? 

 また混乱したでしゅ忘れてたでしゅ!? 

 あの金髪っ、間違い無く『狂気の叫び』を持っているでしゅ!?

 おかしいでしゅよね! 人間でしゅよね! 何でそのスキル持っているのでしゅか! 特定の魔物か魔王じゃ無いと持てないスキルでしゅよ!


「のほほほっ、ほいやっ、さいさいっ!」

「……一度喰らってんのにな……なんで踊ってんだこの子」


 きぃいいいっ! お前の所為でしゅよ金髪女! 無駄にすらっとした体型と某劇団の男役みたいな格好良い面しやがってっ、羨ましいでしゅ!


「あのっしゅ、のっしゅ、ほいほいほいほいっ」

「……この子どうしようか、花乃歌攫った一人なんだよなぁ」


 ひぃいいいっ!? 

 不味いでしゅ不味いでしゅっ、今攻撃されたら確実に殺られるでしゅ!?


「野小沢さん! その女を殺しなさいっ! 貴女のスキルを使って耳元で叫ぶのよ! 早く!」


 余計な事言うなでしゅ!? 

 殺意増し増しで狂気の叫びなんてスキルを耳元で浴びたらっ、間違い無く発狂死するでしゅよ!? 勘弁でしゅ!?

 

「んな事言われてもな……襲って来る魔物だったら何とかだけど、流石に人殺しは勘弁だぞ……」

「ほいしゃっ、のふっのふっのふっ」


 それで良いのでしゅ金髪女! さっきは殺そうとして御免なさいでしゅ、お前は良い奴なのでしゅ!


「なら離れなさいっ! 私が頭を潰します!」

「いやいや、何も殺す事は無いだろ華ノ恵っ! 人殺し何て花乃歌は喜ばないぞ!」


 良いでしゅよ金髪女! 

 頑張るでしゅ私を助けるでしゅ!


「その女が居る限り花乃歌が狙われますわ! 潰すなら今しかありませんのよ!」

「それなら花乃歌に嫌われても良いのかよ! こんな子供殺せる訳無いだろうが!」

「のしゅしゅしゅ……殺さないでくだしゃい!」


 よっしゃー戻った! 今がチャンスっ!

 この状況でも接触すればスキルが使えるのでしゅっ、あの化物を確保して逃げるでしゅよ!


「野小沢さんっ!」

「こいつ治って──っ」

「ふはははっ、勝ったで『ほい確保っと』しゅぶ────────」



            ◇ ◆ ◇



「ここは何処でしゅ……あれっ?」


 後少しであの化物に手が届く筈だった。

 そしたらまた走って、ゼグの後ろに隠れ、やり過ごす予定だった。

 それがあの一瞬で──首根っこを掴まれて、いつの間にか景色が変わって……ここに居る。


「どゆ事でしゅか???」


 この場所は知っている。

 と言うか見た事がある。

 前に迷宮へ潜った際、ここに住み着く魔物に殺されそうになり、ゼグと二人で命からがら逃げる事ができた、迷宮の下層。


「ほぁー、これ私普通に死ぬでしゅよ……さっきの比じゃない超ピンチでしゅ!?」


 魔王の力が戻っていても、この階層には一人で居たく無い。

 一体一体の魔物が異常個体で有りながら、まるで軍隊の様に列を成し、ニコニコ笑顔で攻めて来る。

 例えばゴブリン種。

 上層に生息する魔物で、拳骨で倒せる弱い魔物の代表格。しかしこの階層だと、ゴブリンでさえ異常個体と成り、武器とスキルを活用しながらも、戦術と数で攻めて来る厄介な相手となる。


 例えばボア種。

 上層から中層に生息する魔物で、ゼグの炎なら簡単に、こんがり猪肉と成る美味しい魔物。しかしこの階層だと、物理耐性魔法耐性精神攻撃耐性弱点属性無しの凶悪耐性持ちと成り、遭遇したら逃げ一択の相手。


 例えば兎種。

 稀に上層で遭遇する、図体がデカいだけの美味しい兎。しかしこの階層だと、図体に見合わぬ速さに加え、強化スキル山盛りバフの力技で突っ込んで来て、ゼグの骨を楽しそうに砕いていた、逃げたくても逃げれない相手。


「なにより最悪なのが……スキルが使えない事でしゅね……」


 空は濁り、薄暗い山々が聳え立つこの階層は、スキルが使え無い。正確には、私を狙い撃ちしたかの様に転移が出来無い。

 そういえば、ゼグの持つ移動系スキルも使えなかったでしゅね。


「どうやって逃げるでしゅ……出口は……ははっ無理でしゅね」


 この階層で、最も厄介であり、遭遇したら確実に死ぬであろう魔物達が、ゆっくりとこちらへ向かって歩いて来る。

 手脚はまるで、大木の様に太く、身体に黄金の体毛を纏い、その背は三メートル程と高く、何よりその頭には、二本の角が生えている。

 全属性耐性、精神攻撃耐性、毒無効、物理耐性、人族特攻、繁殖、筋力強化、瞬発力強化という、笑える強さの魔物達。


「ミノタウロスでしゅか……」


 前に遠くから見た時、他の魔物を軽くあしらい、雌と見るや交尾をした悍ましい化物達。しかもその雌は一瞬で孕み、その腹を裂いて子供を取り出していた。


「楽に死ねないのも、嫌でしゅね……」

「確保したのに死なす訳ないだろ?」

「のっ────!?!?!?」


 いつの間に居たでしゅかっ!?

 コイツ……私達を追い回していたストーカ野郎なのでしゅっ! どうやってここにっ、と言うか何でしゅかコイツわ!


「私を帰すでしゅ! ゼグは私が居ないと駄目なのでしゅ! 夜もピーピー泣いてあやさなきゃいけないのでしゅよ!」

「へいへいご馳走様っと、在庫確保して少ししたら帰してやるさ。ちゃんとスキルは封じるからな、安心しろ」


 何をどう安心しろと……在庫確保? スキル封印? 何を言ってるのでしゅかこのストーカ……そんな事より今はあのミノっ!?


「へっ……ミノは?」


 ミノタウロスの群れが居ない……何処へ?


「お肉っ、解体! お肉っ、解体! お爺ちゃん見て見て! 上手に出来ました!」

「おぉっ、偉い偉い(撫で撫で)」

「むふふ褒められたの! お姉ちゃんに自慢しよっ」


 何か……えっ…何でしゅアレ?

 ストーカ男がお爺ちゃん……あの若さで? あの娘子は何でしゅか…耳と尻尾が…ミノタウロスが…………解体っ!?


「貴様っ、どうやったでしゅ! どうやって向こうから来たでしゅか! 教えろでしゅ!」


「お爺ちゃん、あの子は食べるの?」

「んーっ、食べない食べない怖い孫だな。スキル封印して、佐凪君と合わせて事情聴取かな」



 ゼグっゼグっ助けて欲しいでしゅっ!? コイツら頭おかしいでしゅ!!



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