EP.15 辛くも温かい記憶
パパはお仕事で忙しく、ママも働いているから、基本的に私は一人でお留守番。
小学校に行ったら、無愛想だの鉄仮面だのと虐められるけど、パパやママに心配をかけたく無くて黙っています、やり返してません。
嘘です、やり返してます。
苛めっ子を殴ってます。
だって男の子しつこいもん。
昨日だって、授業中に私の事指さして、『能面って桐藤の事だよなー』って言って来たから、机を投げてバンしたの。
そしたら泣いた。
泣くぐらいなら言うの止めて下さい。
暴力は駄目? なら言葉の暴力は良いの?
大丈夫なんだよ、当ててないから。
後ろの壁に机が刺さっただけだから。
先生に怒られたけど、怒り返した。
怒るなら苛めを無くして下さい。
そしたら更に怒られた。
いつもなら苛めっ子を玉パンだよ?
クラスの男子の大半は玉パン済みです。
背が小さいのって有利だよね。
でも今日は何もしていない。
だって久しぶりに、パパとママと三人でお出かけなのさ。
居残りしたら時間が勿体無いからね。
パパがお車を運転するのを眺めながら、お高そうなレストランに到着!
ママがおめかししてて、いつも美人ママなのに更に美しくっ、目が痛い。
パパとママに笑われた。
もっと笑って下さいな、私はそれだけで幸せなんだよ。
パパとママと三人でお食事、凄く楽しい。
お料理も美味しいし、パパのお仕事のお話も楽しいし、何よりママが笑顔なのが良い。
楽しい時間はあっと言う間に過ぎた。
それでも今日は、パパとママと三人でお布団に入れます。
二人に挟まれたい症候群です。
そんな事を考えていたら、地震が起きた。
停電して、店内も真っ暗なんだよ。
窓の外には、あちこちで煙が見えて不安になったけど、パパとママは私の手を握って安心させてくれた。
少しだけジッとしていたら、地震が収まったから、急いで外に避難しようとしたの。
そうしたら、更に酷い地震が来て、どんどん強くなって、窓の外を見たら、地面から離れて行ってるのが見えた。
それを見たパパが、ママと私の手を掴んで走り、勢いを付けて放り投げた。
パパはそのままレストランの中に居て、どんどん人が降りて来て、パパだけ来ないの。
そのままレストランが潰れていって、ママが悲鳴をあげて、私を抱き抱えたの。
ふと、周りが明るくなった。
まるで太陽がそこにあるかの様な、大きい火の玉を、真っ赤に燃える髪をした男の子が持っていた。
パパが居るレストランのビルが潰れて、捻れていく側に、女の子が浮いてるの。
そうしたら────『花乃歌っ!』
ママが私に覆い被さって直ぐ、耳が聞こえなくなって、怖くてママに抱きついていた。
一瞬だけ見えた女の子の顔が、とても印象に残る顔だった。
どれ程ママに抱き付いて居たんだろう。
耳が聞こえる様になっていき、ママを軽く叩いた。
だって、ママからの締め付けが凄いから。
ママはゆっくりと私の顔を見て、安心した様に息を吐いた。
私はそれを見て、安心出来なかった。
ママの口から、いっぱい血が出て来たから。
ママの背中におっきな瓦礫が刺さって、それに足を潰しているのが見えた。
私はゆっくりとママの下から抜け出して、大声で助けを呼んだ。
だけど、皆んなが皆んな苦しそうで、痛そうで、だれも助けてくれない。
パパが必死に下ろしてくれた人は、我先にと逃げるほどだ。
私は叫んだ。
居る筈の無いパパを呼び、道行く人に大声で、ママを助けてと叫んだ。
頭がふらつき意識が飛びそうになるけど、ママを、ママだけでも助けないと。
そうして、体力も尽きて、倒れそうになった時、誰かが抱き抱えてくれた。
「──っ、すまない! 来るのが遅れた……っ」
「かっ…かの…かをっ、お…とうさ…ん…」
「喋るなっ、花乃歌は無事だ! 今直ぐ病院に連れて行くからなっ、死んだら駄目だぞっ! 親より先に死ぬなんて俺は許さんからな!」
その時、パパもママも居なくなった。
私は施設に預けられ、この記憶を封印された。
だけど私は、あの空に浮かぶ女の子を私は知っている。
髪の色や、雰囲気は違うけど、私は何度も遭っている。
言いたい事が沢山出来た。
やらなきゃいけない事も出来た。
男の娘の言った通り、私のママはもう居ない。
けれど、思い出せた事がある。
目を覚まさないと。
辛い記憶だけど、思い出せて良かった。だって良い思い出も有ったからね。
ある意味では男の娘に感謝しなきゃ、拳を握ってだけど。




