EP.12 二名様御案内〜 .1
華ノ恵の様子がおかしい。
理事長室から一言も喋らずに──いや、ぶつぶつと一人言を呟きながら物々しい準備をしていた。
そして今現在──華ノ恵御嬢様のヘリに乗って、戸ノ浄市郊外を上空から見下ろして居るのだけど、正直言って信じられない。
「黒い…渦……迷宮の入口かあれ……」
瓦礫の山だった場所に黒い渦が蠢き、まるで地獄の蓋が開いたかの様に、ぽっかりと口を開けている。その穴のデカさときたら──正直例えようが無い。
「ここからどうするんだ華ノ恵、着陸しようにも降りる場所無いぞ。端に降ろすのか?」
本当にコイツはどうしたのか。
昨日親父さんと話をしてこうなったのか、又は別の理由か……いつもの澄ました顔からはかけ離れた、余裕の無い顔をしてやがる。
「野小沢さん、これを装着して下さい」
ようやく声出しやがった……これってアレだよな、謂わゆるパラシュートってやつだよな。
「マジか……こんなんどう装着すんだよ」
と言うか、華ノ恵はパラシュート装着して無いじゃん、何でだよ……あぁ、コイツ飛べるんだったな。
「なら、私に掴まってて下さいまし。時間が勿体無いので──『はぁっ!?』──行きますわっ」
「おいっ押すな! ちょっと待て華ノ恵ぇえええ────っ!?」
うわっ、パラシュート無しの自由落下って何なんだよこの御嬢様っ!? 怖い怖い怖い怖いマジで怖いっ、あの穴に入るなら端っこにヘリで降りてから入れるだろぉおおお────っ!
「あの渦の先がどうなっているかは分かりません! 気を引き締めて入りますわよっ!」
「ぐっっっ、お前帰ったら覚えてろよっ、この馬鹿御嬢様っ、入る────何でまだ空っ!?」
あの気持ち悪い黒い渦に入って直ぐ、地面かと思ったら────青い空が遠くまで広がっているんだけど、何でだよ!?
「チッ……草原エリアっ、広過ぎますわね……」
「うぉっ……ホバリングも出来るのかよ、凄げぇ便利なスキルだな」
遠くまで見渡せるけど……草原しか無いぞ、これが迷宮の中なのか?
「草しか無いぞ、ここからどうやって花乃歌を探すって言うんだよ」
「……野小沢さん、魔物を探して下さいまし。花乃歌なら間違い無く、可愛い魔物を捕まえようとする筈ですわ……」
魔物って……あぁ確かに。
あの巨大兎の時も抱きつこうとしてたしな、花乃歌ならあり得るか。
「ここから見える奴だと──あれはゴブだから違うし……何だあのキモいの、液体がうねうね動いてるぞ……」
「花乃歌さんの事ですから、動物系でしかも小さい魔物を好む筈……」
こんな上空から見つけられるのか?
小さい魔物なんて────何か動いてるぞ?
「なぁ華ノ恵、あれって前に花乃歌が言ってたウリ坊じゃないか?」
「どこですか!? 『あそこだって』ウリ坊……前に花乃歌が触りたがっていた魔物ですわ!」
おいっ、頼むから急に降下するなっての!
「プゴッ?」
「ウリ坊に気付かれたぞ!」
「地面に降りたら挟み討ちしますわ! 野小沢さんはスキルの準備を!」
ととっ、危ねっ、もっと優しく降ろせよ、転けそうになっただろ。とっ、休んでられないな、ウリ坊わっと。私を見てるな……頼むから逃げるなよ。
「ふぅ、野小沢さん……私が動きを押さえますから、野小沢さんはスキルで、そのウリ坊を混乱させて下さい……」
「プゴッ…プゴッ…」
「はいよ御嬢様……タイミングは任せるぜ……」
何だウリ坊の下の地面……小さな穴?
ウリ坊の奴、何でそこから動かないんだ……何かあるのか。
「今ですわっ!」
「──プゴッ(すぽっ)」
「おい穴に入ったぞ!?」
いやいやウリ坊の大きさと穴の大きさ違っただろ! 何であの小さい穴に入れんだよ!
「くっ、特殊個体ですか──っ、逃しませんわ!!」
「待て待てお前華ノ恵何してんだぁあああっ!?」
あぁ、華ノ恵も花乃歌と似た様な事出来るのか……よく分からないスキルって奴で、地面を粉砕して……また落ちるんだよなぁ。
「私は飛べないんだぞぉおおお────!?」




