EP.7 : 壊れかけの少女.2
「こっ……この下着で二万円様っ」
華ノ恵百貨店一階にある洋服店にレオンちゃんと来たんだけど、下着の上下セットでの価格に戦慄しております。
「さすが御嬢様御用達のお店だな。質が良い分値段もそれなりに高いわ」
レオンちゃん、高いにも限度があるんだよ。
私が愛用している下着の御値段が、上下セットで約二千円だから、その十倍の価格ってやり過ぎだと思うの。しかも隣の下着なんて三万円様なんだよ!
「これは御洋服だけにした方が良いんだよ……下着とセットで購入したら、せっかく貰ったお金が飛んでいっちゃうの」
「そうだな、あっちにあるみたいだから見に行こうぜ」
下着コーナーを抜けて洋服コーナーに来たんだけど、『えぐい値段だな……』とレオンちゃんが声を出しちゃうぐらいお高いんです。
「カジュアルな御洋服で五万円様……カジュアルとは一体なんなのさ」
買えるけど買いたく無い値段なんだよ。
何かお安い御洋服は──、この場に似つかわしく無いワゴンが有る。キラキラした御洋服に囲まれて、見えない様にポツンと置いてある中には、一万円様の値札が貼られた御洋服がいっぱいなんだよ。
「レオンちゃん、これなら買えそうじゃない?」
「良く見つけたなぁ花乃歌、なんで隠す様に置いてるんだよこの服」
お店の雰囲気を守る為なのかなぁ。
元の値段を確認すると──六万円様!? なんで六万円様が一万円様になってるのさ。値引するにしても過剰なんだよ……。
「これなんか、花乃歌に似合いそうじゃん」
レオンちゃんが手に取って見ているのは、赤い布に刺繍がされているチュニックなんだけど──それを私が着たら、足首までスッポリおさまる大きいサイズです。
「それは私には大きいサイズなんだよ……。レオンちゃんならこんなのはどうさ」
私が見せたのは、表はシンプルなパーカー。裏地に見た事無い花の刺繍がされており、なんで逆にしないんだろうと疑問に思うけど、肌触りも良いし普段使いに良いと思うの。
「へぇ、なんか良いなそれ、ちょっと試着して良いか」
「お店の人に聞いて来るんだよ!」
颯爽と店員さんを捕まえて試着室の許可を貰ったんだけど、何故か店員さんが物凄く丁寧に応対してくれて不思議なの。御客様を相手にするというよりも──なんか危険物を相手にするかの様な丁寧さだったの……なんで?
「んじゃ着替えるから、感想宜しく!」
「了解しましたレオンちゃん!」
まぁ着替えるって言っても、羽織るだけだから直ぐ──『今でしゅね』だよね?
あれ……ここどこ?
レオンちゃんが試着室に入ったと思ったら、急に目の前が廃墟になったんだけどぉ……。
「レオンちゃん? おーいレオンちゃーん!」
声を出して呼び掛けても、レオンちゃんの反応が無いと言うか本当にここ何処!?
「危機感が足りないでしゅね化物女」
「──ひゃいっ!?」
急に後ろから声が──すっごい派手な子供なんだよ!? 虹色カラーで目が痛いの!
振り向くと、虹色の染まった腰まで有る長い髪に、虹色の瞳……小学生だろうか、私より少し小さい女の子が、棒飴を口に入れながら私をジッと見つめている。
「そんなにジロジロ見るなでしゅ、大人しくすれば危害は加えないのでしゅ。暴れたら溶岩に──『消えた!?』落とすのでしゅ」
「ひゃあ!? 何で後ろにいるのさ!」
さっき迄目の前に居たのに一瞬で私の背後に現れたんだよ!?
「化物女は状況把握が遅いのでしゅ。きっと脳味噌が筋肉なのでしゅね……哀れでしゅ」
物凄く失礼な女の子なんだよ! なんなのさ状況把握って──『お前は私に攫われたのでしゅよ?』急に何を言い出すのさ?
「逃げようとしても溶岩行きでしゅ、私に危害を加えようとしても溶岩行きでしゅ、私に逆らっても溶岩行きでしゅ、大人しく言う事を聞けばちゃんと帰してやるので、逆らわない事でしゅね」
「一体なんなの貴女! 私を帰してよ! レオンちゃんが心配するじゃない!」
「そいつは無理な要望だな、お前には手伝って貰いたい事があるんだ」
また後──っ、「あっ! 男の娘!」
後ろを振り向くと、いつの間にか前に逃した男の娘が、手に炎を纏いながら瓦礫に座っていた。




