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EP.7 : 壊れかけの少女.1



 今日も元気に朝早く起きてご飯を食べ、レオンちゃんと駅前で合流して学校へと向かい、さっちゃんと他のクラスメイトに挨拶をして、真面目に授業を受け、その放課後────理事長室で、緑の魔石の交渉中です。


「だからこの石は売れないんだよぉ、紫の石と一緒に飾っておきたいの!」

「その魔石は終末の刻に関わる物です、手元に置いていては何が起きるかわかりませんのよ。勿論、言い値で買い取りますので、手放して下さいな桐藤さん」


 ぬぅ……さっちゃんが一歩も引かないよぉ。

 そう言えばこの緑の石、中にあった綺麗な木のデザインが消えていたの……昨日お湯に浸けた所為なのかなぁ。


「ならば桐藤さん、その魔石をお譲りい頂けるのでしたら、昨日差し上げた籠手の様な物──そうですわね……私のコレクションから一つ、好きな物を差し上げますわ!」


 さっちゃんのコレクション?

 昨日の籠手は──何か折り畳めたからカバンに入れてるけど、それと同じ様な物……気になるなぁ。


「因みに、どんな物があるの?」


 見てから決めたい。

 先に渡してしまうと、気にいる物が無かったとしても、さっちゃんが返してくれない様な気がするもん。


「少し待って下さい、直ぐお見せしますわ」


 そう言うと、さっちゃんは車椅子に付いているボタンを操作して────理事長の天井から棚が出てきたんだけどぉ!?


「秘密基地過ぎるよさっちゃん……」

「この棚から、好きな物一つと交換ですわ。是非手に取って見て下さい」


 うん……何か凄いファンタジー。

 宝石みたいな石が嵌った指輪に、王女様が付ける様なティアラや腕輪、刺繍がされているお洋服に、ガラスの靴等々目がチカチカするんだけどぉ──この中から選べと。

 何か無いかなぁ……苗が有る。

 光モノの中に何故か苗が有るの。


「さっちゃん、この苗って何の苗なの?」

「それですか。実は私も、その苗が何なのかは知りませんの。御父様が何処からか手に入れられて、育てようとしたみたいですが、何故か育たなかったらしいので私が頂きましたの」


「ぬぅ……何故か苗が気になるの……」


 実は今日の朝から、歩いていると木々や地面に生えている雑草に目が行って、不思議な感じで落ち着かないの。だけど、目の前の苗を見た瞬間──その不思議な感じが落ち着いて……なんで?


「その苗が欲しいのでしたら差し上げますわ、別でもう一つ選んで下さいな。流石に緑竜の魔石と、その苗とじゃあ釣り合いませんの」


 ラッキーなんだよ。

 何故か無性に嬉しくなっちゃう。

 それなら御言葉に甘えて……どれにしよう。

 そう言えばお気に入りのお洋服が破けてから、まだ買いに行けていないなぁ……。

 お洋服──ワンピースっぽい服が有る! 

 白地の布に、何かのお花の刺繍がはいってて、背丈的にも私にピッタリな感じのワンピースだぁ。


「さっちゃん、このお洋服が良いの」

「流石ですわね桐藤さん、宝飾品では無くその服を選ぶなんて……良いですわ、その清浄の衣と緑竜の魔石とを交換ですの」


 清浄の衣って言うんだぁ……何か不思議な名前のお洋服だなぁ。


「うん、それで良いんだよ。はいさっちゃん──緑の石。紫の石は渡さないからね」


「分かっておりますわ。これが緑竜の魔石……これさえ有れば、私の行動範囲も広がりますわ」


 さっちゃんの行動範囲? どう言う事だろ。

 おっと──今日は何も無いから早く帰って牛さんを消費しないと、あと少しで無くなるからね。


「じゃあさっちゃん、私もう帰るね!」

「ええ、また何か有りましたら連絡致しますわ」


 さっちゃんに挨拶してエレベーターで一階へ、学校を出ようとしたら──校門前でレオンちゃんが待っていた。


「よぉ、待ってたぞ花乃歌。バイト代入ったから、一緒に買い物行こうぜ」


 そう言えば、昨日のアルバイト代をまだ見てなかったんだよ。スマホを出して口座アプリをポチりとな──「なにこれっ!?」


「凄い金額だろ? あの魔石って言う石で、何でこんな金額貰えるかね」


 レオンちゃんの言ってる事が良く分かる。

 私が回収した分と、回収班の人が持って行った分に加えて、あの兎さんの皮を合わせると──『九十八万円』様になってるの……。

 前に貰ったアルバイト代は使わずに置いているから──『百三十六万円様!?』

 ママから届く毎月の生活費が八万だから、軽く一年は生活できる程の大金を、たった二回のアルバイトで稼いでしまった……。


「花乃歌は幾ら貰って──エグい額だなぁ」


 レオンちゃんに見られてしまった。

 レオンちゃんが今回貰った額は十二万円様で、やっぱり兎さんの皮を取った私の方が、遥かに報酬が良い様だ。


「これなら、ママに何かプレゼントできるんだよ! 何が良いかなぁ。お米は前に送ったし、小物が良いよね」


 ママは絶対に、『貯金しなさい!』って言うと思うけど、日頃の感謝の気持ちだもん。


「なら制服のまま百貨店に行こうぜ花乃歌。この姿なら、別に恥ずかしく無いだろ」

「行くんだよレオンちゃん! さっちゃんと同じこの姿なら、あんな思いをせずに済むもん!」


 小物だと──お財布か髪留めか、美容グッツも捨て難いんだよぉ──迷うのさ!


            ◇ ◆ ◇


「────で、あの化物女の素性は分かったのか白瓦……」


 廃墟となった家屋の中で、佐凪夜は携行食を口にしながら白瓦と連絡を取り合っていた。


『はい。一通り調べたのでしゅが、中々酷い人生でしゅねぇ。名前は桐藤花乃歌、十五歳。どう言った理由で能力に目覚めたのかは不明でしゅが、佐凪……下手をしたら、貴方は殺されてしまうかもしれましぇん』


 白瓦の言っている意味が分からない。

 俺があの化物女に殺される?

 確かに玉を潰されそうにはなったが、あの化物は俺を殺そうとはしていなかった筈だ。


「俺が殺される理由ってのは何だ? そもそもだ、俺があの化物に遭ったのは、あの時が初めての筈だぞ」


 あの時は────街中で変な雰囲気を出すアイツが気になってしまい、高圧的に接してしまったと、今では少し反省している。


『五年前、とだけ言えば分かるてしゅよね佐凪』

「チッ、あの時巻き込まれた奴か……だがアイツは生きてるぞ、なんで俺を殺す理由になる」


 あの化物の家族が巻き込まれた?

 だが──メディアでは何のニュースにもなっていなかったと記憶しているが……。


「……あぁ、情報統制か」

『隠蔽とも言いましゅね』


 なるほどな。

 どうりで、あれだけの被害だしても、何の騒ぎにもならない訳だ。


 催眠か、暗示か、あれだけの被害を隠し通せると言う事は、何某らのスキルが関係している可能性があるな……。

 

 俺が下手をこけば死ぬねぇ。


「でも、下手したら死ぬって事なら、上手く利用すれば良いってだけの話だよな」

『女を視認したでしゅよ、指示が有ればいつでも飛ばせましゅ』


 なら精々役に立って貰おう。

 俺達の悲願の為に。



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