EP.6 : 地下迷宮調査隊?.4
階段を下りては魔物さんを『えいっ』、下りては『とぉっ』、とプチプチ潰して行き、もうどれぐらい下りたのか分からないんだよ。
景色も変わらず鉄骨で組まれた観測所。
下りても下りても観測所。
どこまで行ってもコンクリートの地面。
出て来る魔物さんもゴブリンさんばっかりで、モフれないし汚いし最悪です……。
「何か、思ってた迷宮と違うな」
レオンちゃんがボヤいちゃった。
それは私も思うんだよぉ。
だってさっきからずっと、階段下りて魔物さん倒してを繰り返してるもん。
「さっちゃん……もう八時なんだよ、いつ迄ここに居れば良いのさ……」
さっちゃんは時々、手に持っている機械を上下左右に向けているんだけど、何をしているのかがさっぱり分からない。
「そうですわね……思ったよりも進めましたし、今日はこのくらいで────っ!?」
さっちゃんが急に走った!?
壁に手を当てて何してるんだろぅ。
「桐藤さん! この壁を思いっきり殴って下さいまし!」
私にコンクリートを殴れと……。
確かに籠手もしてるし、前にアスファルトを凹ませた事もあるけどさ……当たり前の様に言わないでほしいなぁ。
「早くなさい!」
「分かったんだよっ、怒らないでさっちゃん!」
さっちゃんがこんなに慌てるなんて……その壁が何なのさ。
さっちゃんの指示した場所に立って、先ずは息を整える……「すぅううう、はあぁああ」
あの時、私が九階から落とされて、アスファルトの地面を撃ち抜いた感覚を思い出しながら、壁に向かって拳を────
「怪我したら治して貰うからねっ!!」
────振り抜く!!
─────《轟音》─────
コンクリートの壁を突き抜け、その先に一瞬だけ見えたトカゲさんをも巻き込んで、私の打ち込んだ拳撃の余波が、埃を舞い上がらせて視界を埋め尽くした。
「げほっ、今の衝撃はなんだよっ!?」
「壁を壊してと言ったのに、まさかここまで破壊するなんて……」
「さっちゃん……今一瞬だけど、大きなトカゲさんが居たんだよ。あれは何だったの……?」
天井まで十メートルあるのに、さっき見たトカゲさんは、その高さに迫る程大きかった様な気がするんだぁ。
「……中に入れば分かりますわ」
瓦礫を退けながら壊した壁の先へ進むと、今までの鉄骨で覆われていた空間が一変。
まるで海外にある神殿の様な──石で造られた天井、壁、床に、びっしりと紋様が彫られていて、その部屋の奥には────『闇』が口を開けて、渦巻いていた。
「この闇……華ノ恵百貨店の地下で見た奴だ!」
あの時は結局、闇の先へ行く事は無かったし、別の意味で大変だったから気にしなかったんだよ。
「その闇の穴が目的のヤツか?」
「そうですわ野小沢さん。この闇の先が、本来の迷宮ですの。やはり、戦力が揃うと余裕が出来て探し易いですわね」
ここはまだ迷宮じゃ無かったんだぁ。
確かに、さっちゃんはちゃんと、迷宮の出入り口って言ってたもんね……んっ? 床に落ちてるのは何かなっと。
「今までで一番大きな石だぁ──まるで宝石みたいにキラキラ輝いているんだよぉ」
拾ってみたら、直径十センチの丸い石。
深い緑色に輝いており、その丸い石の中には、何かの木だろうか──細やかなデザインが施され、間違い無くとても貴重な物だろう。
「……緑竜の魔石……えっ?」
さっちゃんが、私の持っている石を見て固まったんだよ……緑竜さん?
「すげぇ綺麗だなその石、宝石なのか?」
さっちゃん、今緑竜の魔石って言ったんだよね。と言う事は、私が一瞬だけ見たトカゲさんが緑竜さんって事?
「桐藤さん……貴女のスキルを未だ過小評価していた様ですわね。取り敢えずはその魔石、幾らならお譲り頂けますのかしら」
さっちゃんが動き出したと思ったら、急に言い値交渉して来たんだよ!?
こんな綺麗な石は売りたく無いっ!
大猪さんの石と一緒にコレクションしたいし、アクセサリーにするのも良いかもだよ。
「さっちゃん一旦帰ろ、お話はそれからなんだよ」
「だよなぁ、流石に疲れたぞ華ノ恵お嬢様」
ふふふ、レオンちゃんもお疲れの様子だし、このまま帰って無かった事にするの!
「そうですわね……お話は帰ってからでも致しましょう桐藤さん」
ようやく帰れるんだよぉ……お腹空いたぁ。
◇ ◇ ◇
「なんで帰る時は一瞬なのさ……」
さっき下って来た階段を上がったら……目の前にエレベーターが有るんだよ。
「大丈夫でしたでしょう。この階段は、何故か上がる時だけ最初の場所へ戻る不思議階段で、私達の調べでは、下った時とは別の階段、別の道となっている事が分かっておりますわ」
行きは怖くて帰りは良い良いって、逆じゃ無かったかなぁ。
「んんっ────ぷはっ、早く帰ろうぜ二人共、私は腹が減った」
レオンちゃんは動じないなぁ。
私もお腹が減ったし、この緑の石の話は明日にして欲しいかなぁ。
そう思っていると、さっちゃんがガン見して来るの
「早く乗って上に行こうさっちゃん!」
さっちゃんをエレベーターへ押し込んで、レオンちゃんも乗ったら──ボタンを押して、帰るんだよ!
「……なんで昇りは直ぐ着くのさ?」
乗って一分足らずで帰って来ました理事長室って──本当に不思議空間だよ。
「それは私も思う……行きは何だったんだ」
レオンちゃんも流石に唖然としてるよ。
「お二人共お疲れ様でした。まさか初日で、誰も見つけられなかった新たな迷宮への道を見つけるなんて……驚きましたわ。流石に能力者が三人揃うと楽で良いですわね……」
なんか最初は体験って聞いてたのに、途中からどんどん先へ進むから何でかなと思ったけど、やっぱり楽だったんだ……。
「今まではどうやってたのさ?」
「基本は物量作戦ですわね。研究所の人員を武装させ、班分けをしてから突入ですの。ただ……魔物達は数が多く、負傷者や死傷者もでるので、今回の様に余裕を持って調査出来る事が有りませんでしたわ」
「大半は花乃歌一人で殲滅してたけどな」
へぇ──大変だったんだぁ。
あの闇の先かぁ、ちょっとだけ気になるけど、今は帰って夕ご飯をしっかり食べるんだよ。
「んじゃ、今日はここまでで良いよな」
「ええ、お疲れ様二人共。今回の報酬は明日の夕方にでも振込むので、楽しみにしておいて下さい」
「楽しみにしておくね!」
さあ帰ってご飯────『緑竜の魔石の件はまた明日交渉致しましょう、桐藤さん』
ぬぅっ……「分かったよぅ」
誤魔化せなかった……。




