EP.4 : 怪しいお肉は何の肉.5
学校が終わってからさっちゃんの送迎車で、華ノ恵百貨店に隣接するカラオケ店『Sing every day, you bastard』に来たんだけど、このお店の名前……『毎日歌えこの野郎』って言ってる気がするのは私だけ?
さっちゃんとレオンちゃんと私。三人で入ろうとしたら階段だったので、さっちゃんを車椅子ごと持ち上げて入店したら、店員さんに凄いドン引きされたの! レオンちゃんは大爆笑だったけどね!
「あの店員はクビにしますわ、このお店は華ノ恵系列ですので連絡すれば直ぐですの」
いやそれよりも、バリアフリーにした方が良いと思うの。
「華ノ恵のお嬢様を怒らせたら怖いからなぁ、ここの店長も左遷だろうぜ」
レオンちゃんまで怖い事言わないで!?
「ほらほら、早く部屋まで行こうよ──!」
本当はこの二人仲良しさんなのかな、何気に息がピッタリなんだよ。
「このお部屋かな──初めて見るんだよカラオケの機器、何か……ずんぐりしてる?」
思ってたよりも大きい機器だぁ。
小さい頃に見た雑誌には、カラオケの機器は手乗りサイズって書いてあったのに、ここのお店の機器は、私のお顔位の大きさなんだよ。
「ここのお店は、一昔前の機器を使っておりますの。新しい物では表現出来ない、古い物だからこその音質が好評ですわ」
へぇ──新しい物ばっかりだと思ってた。
これ、何年前の物なのかなぁ。
「おいおい、カラオケ店に来てまだ歌わねぇのかよ。それなら私が先に歌うぜ」
レオンちゃんの歌聴きたい!
「それじゃあ次はさっちゃんどうぞ! 私は歌った事無いから、最後が良いんだよ」
「分かりましたわ。それと桐藤さん、耳栓の準備をした方が宜しくてよ」
ふぇ……何で耳栓なの?
そんなの持ってる訳ないよ。
あっ……もしかしてレオンちゃんに音痴って言ったのは、さっちゃんなんだね!!
「それじゃあ────っ、逝くぜ!」
んっ? レオンちゃんのいくぜ! が違う意味に聞こえた様な気がしたんだけど────!?
「ボォオオオオオオオオオオオオオオオオィ! エンボォオオオオオオオオオオオオオオィ!『さっちゃんコレッ頭が痛いよ!?』『おかしいですわっ、コレは──催眠!?』『さっちゃん! コレまず……さっちゃん?』『ふふふ、はははははははは──────!!』逝くぞこの糞共がぁあああああああああああああああああああっ!!」
コレは不味いよっ、さっちゃんがレオンちゃんと同時に頭を前後に凄い振ってるんだけど、白目で笑いながらなんだよ!? 怖いし美人が台無しだぁ!!
なんで私は大丈夫なの?
頭は痛いけど……それだけだし。
レオンちゃんも楽しそうだけど……コレは流石に止めないと、さっちゃんのトラウマさんになっちゃうもん。
電源プラグは────あったよ「えいっ」と抜いたら、音止まったぁ……レオンちゃんが睨んで来るよぅ。
「何してんだよ花乃歌……今からもっと激しくなるパートだったのにプラグまで抜いてよ。説明して貰おうか?」
静かに怒ってらっしゃるよぉ──っ、さっちゃんまだ白目のままだし……白目のさっちゃんを見たら分かるかなぁ。
「レオンちゃん……、さっちゃんのお顔見て?」
何だよと不貞腐れながらも、さっちゃんのお顔を見たレオンちゃんは────
「えっ、なんだよ華ノ恵の顔が……怖!?」
────って違うんだよぉおおお!!
「レオンちゃんの歌を聴いて、さっちゃんは、こんなお顔になったんだよ!!」
ぬぅううう──っ、『何言ってるんだお前は』って顔されるようっ。
とりあえずさっちゃんを起こさないと、事情説明は私には無理なんだよ!!
「さっちゃん起きて! 私に説明はむりなんだから、起きてくれないと困るんだよ!」
ダメだぁ……意識が飛んでるよぉ……待つしかないなぁ。
「何だよ一体……華ノ恵の奴起きるまで、歌ってて良いか?」
「さっちゃんが起きてからだよ!!」
◇ ◇ ◇
さっちゃんが白目を剥いてから三十分間……流石に暇だと言う事で、ちょっとお高いご飯を食べて時間を潰している。
「値段の割には美味く無いな、ここの飯」
レオンちゃんは文句を言いつつも、バクバクと既にお皿が十二枚……その体のどこにその量が入っているのか分かんない。
「そんなに食べてもそのお腹……レオンちゃんが羨まし過ぎるぅ」
そう言えばさっきレオンちゃんが歌ってた曲名をしらないなぁ、誰の曲なんだろ。
「レオンちゃん。さっきレオンちゃんが歌ってた曲って聞いた事ないけど、誰の曲なの?」
「そりゃ聞いた事無いだろ、私が作った曲だからな。練習するために機器に音源入れてもらってるし、ここの店長とは馴染みなんだよ」
だからかぁ。
妙に馴染んでる感があったのが不思議だったん『────ゼグッ!』だ!?
ビックリしたよ! さっちゃんが起きた。
ゼグって何……だれ?
「さっちゃん大丈夫? ゼグって何なの?」
まだ若干目が泳いでいるなぁ。
遠くを見ている様な……私が視界に入ってないかの様な感じだぁ。
「あ……桐藤さん、野小沢さんも。私はどうしつ────っ、あぁそうでしたわね。先程の歌で意識を持っていかれたのでしたわ……、不甲斐ないっ」
「よかったぁ、あの白目のままだったら、物凄く怖かったんだよ!」
本当にね。
私の笑顔よりも遥かに怖かったの。
さっちゃんには言えないけどね。
「因みにその顔がこの写真だぞ。酷い顔だろ華ノ恵お嬢様──ぷっくくっ」
レオンちゃん写真に残しちゃ駄目だよ!
さっちゃんのお顔の血管が膨らんできてるし、怒られるちゃうよぉ!
「催眠をかけた張本人が言うセリフとは思えませんわ野小沢さん……、あのスキルは昔一度だけ受けた事がありますの」
さっちゃんが冷静だ……良かったぁ。
「何だ、一体何の話をしてやがる」
「そのスキルの名は『狂気の叫び』。人や魔物の精神に干渉して狂わせる……ある意味とても厄介なスキルですわ」
さっちゃんは額に汗を滲ませながら、レオンちゃんは意味が分からないと言う顔で、私はどうすれば良いんだろうかと考えて──ただ二人を見守る事しか出来なかった。
だって────二人が睨み合って怖いもの!




