EP.4 : 怪しいお肉は何の肉.1
あの華ノ恵百貨店でのイベント? から三日後の朝。私は早起きしてベッドで横になりながら、自分のスマホをポチポチと触り、口座アプリを見てニヤニヤしていた。
「ふんふんふ──ん、ふふふんふん。むふふ、お札様がいっぱいなんだぁ」
今日は朝から素敵な気持ちなの!
だって、前の日曜日に戦った時のアルバイト代が、思ってたよりも凄かったもの!
ウリ坊九匹の討伐で十八万円様! あの大きくて、通路にハマって残念だった大猪さんが、なんと! 二十万円様! ウリ坊十匹分! 合計で三十八万円様なんだよ!
因みに、私が今も持っている魔石って言う綺麗な石を渡していたら、もっと凄い金額になっていたかもだよ。だって、さっちゃんに報告したら『それはお譲り頂けないの?』って凄い欲しそうにしてたもの。
「これは駄目だよ……私が奪った命の証明だしね。嫌な感触だったもん……」
あれはゲームじゃ無く、生身の感触だった。
あの時は……お札様も欲しかったけど、何故か倒さなきゃ駄目だって思って、楽だったけど必死だったんだぁ。
昨日や一昨日なんか気持ち悪くて、ご飯を食べたらお口から滝が出て来て、我慢して学校行ったら授業中に机がデンジャーだったんだよ! さっちゃんが助けてくれたから良かったけどね。
「昔の私なら……ウリ坊が可愛くて、一匹ぐらい連れて帰ったんだろうなぁ……」
あのプゴプゴと鳴る鼻を、ツンツンして撫でたかったなぁ。
また会えるかなぁ……ウリ坊。でも会えても直ぐに討伐だものねぇ、世の中そう上手くはいかないモノだよ。
「……お腹減ったぁ……朝ご飯食べて、学校行く準備しておこう」
冷蔵庫の中身は何だろな──と思うけど、牛さんが『まだまだ有るぜ』と、主張するぐらいいっぱいあるからね。早く食べないと痛んじゃう。
「牛さん百パーセントのハンバーグにしようかな、ミンチにする器具がないけど」
手を洗って──試しに『えいっ』と牛さんお肉を握り潰してみたけど……ちゃんとミンチになるんだね。
何か化物って言われても……否定出来ない様な気がしてきたよぅ。
ハンバーグ──にぎにぎっ!
作るためには──にぎにぎっ!
仕方ないもんね──にぎにぎっ!
私の今の握力──にぎにぎっ!
どれぐらいなのかなぁ──にぎにぎっ!
やり過ぎた……二パックもミンチにしちゃったよぅ……。ハンバーグ二キロは無理だから、余った分はラップで丸めて冷凍庫へ──入れました!
さてさて──、玉葱さんを微塵切りにしてから、炒めて炒めて小麦色──、牛さんミンチに塩胡椒をふりふりっとしら、玉ねぎさんいらっしゃ──い。パン粉と牛乳入れまして──、お醤油少々砂糖少々、他には何も入れません! 後は捏ね捏ね、優しく捏ね捏ね……全然優しく無い!? 後は手に取り楕円形にして……中心部分をぶにっと押せば──タネの完成!!
フライパンに入れて、焼き目が付くまで焼き焼きしたら、お水を少々蓋をして蒸し焼きに。火が中心まで通ってるか確認したら、火を止めお皿に盛り付けて、大根おろしを添えたら──完成なんだよ!!
「牛さん百パーセントハンバーグの完成!!」
怪しい牛さんのお肉だけど……怪しさも百パーセントの牛さんだけど……頂きます。
「頂きま──す」
ムグムグ……これぞお肉だね! シンプルな味だけどご飯との相性も良いし、幾らでも食べられるんだよ。
朝ご飯を食べてから歯を磨き、洗顔してから、うねうねしている髪を団子にして、制服着用準備完了!
「行ってきま──す!」
そう言えば……次のアルバイトはいつなのかな……さっちゃんに会ったら聞いてみよう。
◇ ◇ ◇
教室の扉を開けて『おはよ──う(ニコッ)』と中へ入るけど、クラスメイト達は未だに、私の笑顔を見ると一歩下がるの。
最近は、レオンちゃんが良く話しかけて来て、他のクラスメイトとも、少しずつ距離は縮まっている筈なのに……笑顔を見せると、さっちゃんとレオンちゃん以外離れていく。
「私でも怖いと思うけど……入学してもう直ぐ一週間なのに慣れてくれない……」
「いや……花乃歌の笑顔は怖いと言うより恐ろしい? 圧が凄げぇからな!」
レオンちゃん……フォローになってない。
「圧ってなにさ……。でもレオンちゃんは、そんな私に平気な顔で話して怖く無いの?」
そう、圧が凄いと言いながらも、さっちゃんと同じく普通に話をしてくれる……有難いけども、ちょっとだけ不思議なの。
「人の顔見て、ソイツがどんな奴か何て分から無いからな。自分で話して、悪い奴か、良い奴かを見極めてるんだ。因みに花乃歌は良い奴……と言うか分かり易い奴だな」
分かり易いって何処がさ? こちとら小さい頃から誤解されまくりで、お友達は現在さっちゃん一人なのにさ……。レオンちゃんお友達になってくれないかなぁ。
「ほら分かり易い顔だ。眉が下がって一瞬下見たって事は──寂しがってる顔だな」
エスパーなのレオンちゃん!?
この鉄仮面と言われ続けていた、私の表情を読んでくれるなんて────『うへへっ』
「────えっ、普通にか『おはよう桐藤さん野小沢さん』おっおぉ、華ノ恵おはよ──っじゃない今は花乃歌が──あれっ? いつも通りの顔だな……見間違いか……?」
レオンちゃんが何か言いかけたけど、さっちゃんが来たんだよ──「おはよう、さっちゃん」
そしてアルバイト代を有難う御座います!!
これでお洋服が買えるんだよ──!
でも華ノ恵百貨店では買わないよ……だってまたあの、那紗道さんって言う御嬢様に会いたく無いからね!!
「お二人共仲が宜しい様で──良い事ですの。ですがもう直ぐ授業ですので、野小沢さんはご自身の席にお戻りなさい」
さっちゃんの声が──、若干尖ってる?
「はいはい分かりましたよ。ツンツンしてると綺麗なお顔が台無しだぞ、華ノ恵御嬢様。花乃歌、今日一緒に帰らないか? 何か食べて帰ろうぜ」
レオンちゃんからのお誘い!!
あっ……でも、放課後にさっちゃんに聞く事あるから……うぅ、断るしか無いっ。
「今日は無理だよぅ……御免ねレオンちゃん」
友達二人目のチャンスだったのに……。
「なら、花乃歌が空いてる日に一緒に帰ろうぜ。予定分かったら、教えてくれよなっ」
レオンちゃん……やっぱり良い人だぁ!
「桐藤さん、先生が来ましてよ……」
ひゃ──っさっちゃん! 何でそんな眼で見つめてくるのさ!?
「さっちゃん……何かあったの?」
「何も無いですわ! 此方が先ですのに……野小沢さんにっ…………」
さっちゃんが珍しく、ブツブツ何かを言いながら考え込んでる……なんだろ?




