EP.3 : 類は友を呼ぶとは限らない.7
華ノ恵百貨店の地下五階。
そこにはよく分からない機器が置かれており、それを見ながらの報告が、右から左からと次々に飛んでくる。
「深度十まで侵攻中! 接敵まであと一時間を切りました!」
「斥候より伝令! 敵の種類はボア種! 鬼種との報告有り! その数およそ五百!」
「周辺住民への工作完了致しました!」
「現在異常個体の存在は確認出来ておりません!」
「特別異能対策室から連絡有り! 奏地区、縫郷地区、南雲地区共に準備完了との事! 未だ那紗道地区より報告無し!」
うへぇ……この人達全員、終末の刻研究所の職員なのかなぁ、忙しそうだ。
「二班は三班と共に鬼種を押さえなさい! ボア種は一班のみで対応! 異常個体が出た場合は即座に退却なさい! 那紗道地区に再度連絡! 応答がない様なら六班、七班で援護に向かいなさい!」
おぉ──さっちゃんが司令官っぽい。
那紗道って聞こえたけど、あの人も終末の刻研究所の人だったんだなぁ……会いたくない。
「桐藤さんは一班で、ボア種の殲滅ですわ」
ん──んっ? 私? 私行くの!?
「そんな急に!? 無理だよさっちゃん!!」
確かにあの時は──なんか苛々プッつんして、普通に殴りかかっていたけど! 私普通の女の子だからね! 無理だよ!
「大丈夫ですわ。相手はタダのウリ坊ですもの。大猪──、今は闘牛でしたわね。闘牛たる桐藤さんに、たかがウリ坊が敵うわけ無いですわ」
さっちゃんが辛口だ────!!
私は大猪でも闘牛でも無いよ! 寧ろさっき言ってたボア種? が大猪じゃないのかな!!
私が頬を膨らませて、ぷ──って怒ってたら、さっちゃんが悪魔の様に囁き『一体毎に、二万出しますわ』其れは、二体倒せば四万円……十体倒せば二万円……一日で。
「ウリ坊なんて! 私のパンチでぶっ飛ばしてやるのよ──!!」
なぜか周りの人達が苦笑いしてるけど、私はそんな事よりも──お金が有れば! 可愛いお洋服が買えるの!!
「なぁ……あれってや────」
「しっ! 黙っとけって! オーナーがこっち見てるぞ!」
「それでは行動開始! 皆、怪我の無い様気を付けなさい!」
◇ ◇ ◇
華ノ恵百貨店地下七階。
鉄筋コンクリートに覆われた、横に五メートル、奥行き二百メートル程の、長い通路。その先に扉は無く、闇が静かに口を開けている。
さっき数が五百とか言っていたのに、一班はたったの五名なんですけど……大丈夫なの?
全員お顔や腕に傷痕があって、目つきが鋭くて筋骨隆々……映画で観た傭兵さんみたいな感じがするの。
これは……挨拶をして、その腕を触らせて貰うチャンスなのではなかろうか。
「はっ、はじめましてぇ……桐藤花乃歌ともうしますぅ……(ニコッ)」
リーダー格っぽい顎髭が立派な人に話しかけてみるんだよ、恐る恐るだけどね!
「ふむ……その笑顔、以前にも良く見た事がある。そうか……まだその様な笑顔の子供が居るのだな……」
なんか悲しそうなお顔しちゃった!
挨拶しただけなのに、何でそんな悲しいお顔するのよ!!
「リーダー! コイツは観測班の情報より速い! もう来ますぜ!!」
ヒョロっとした人は、機械を見ながら結構焦った顔で伝えてきた。
リーダーの顎髭さんが手を上げて合図したら、他の三人のお髭さんは、手に持っている小銃を────闇の方へと向けた。
「おい嬢ちゃん」
「んっ……私? なんでしょうかぁ……」
急に話しかけられて分からなかったよ。
「武器を持ってない時点で、何かチカラを持ってるんだろうが……、どう見ても素人さんだろ。どうやるか見ておくと良い……」
おぉ──優しい顎髭さんだぁ!
でも私はお金が欲しいの! 十体で二十万円様なのよ!!
「リーダー! 来ますぜ!」
ヒョロさんがそう言ったその時────闇の中から、一匹の可愛いウリ坊さんがピョコっと出てきた。
「ウリ坊だぁ、可愛いヤツだよぉ」
プゴプゴとお鼻を鳴らしてトコトコ歩いて来るぅ──っ。さっちゃんの言った通り、まさか本当にウリ坊だった……な……んて?
ウリ坊一匹出て来たら、二匹目トコトコ出て来たよ。そしたら三匹同時に出て来て、その後四匹出て来たね。扉が無いその出入口、ミチミチ音を立てている。そして飛び出すウリ坊達は、走って来るよ! 全速力でぇえええ!!
「────撃てぇえええっ!!」
そのリーダーさんの一声で──私は人生初の──銃声を聞いているんだけど──凄く煩くて──狭い空間内で音が反響して──もうっ! 耳が──やばいのよ──!!
ウリ坊達は────「うぅ……グロぃ」
見るんじゃ無かった……。
みるみるうちに、ウリ坊達のお肉の山が出来て来るんだけど、それを飛び越えて一向にウリ坊達の突進が止む気配が無い。
「これは不味いな。ボア種の異常個体が居る可能性が有るぞ……総員! このまま六階層まで後────っ耳を塞げぇえええ!!」
「プギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア────────────────!!」
なにっ今の鳴き声!? 耳がキーンッてなったんだよ!!
リーダーさんも、他の人達も、耳押さえて苦しそうだし。
何なのさ一体────っ何あれ!?
通路の先を見た。
ウリ坊達は、まだ出て来ている。
だけどその先────闇の中に、一際大きい眼がコッチを見ていた。




