EP.3 : 類は友を呼ぶとは限らない.6
うぅ……来たく無かった。
少し先に建っているのは、私が二度と行かないと言い切っていた、華ノ恵百貨店。
さっちゃんに、『なぜ百貨店に二度と行かないという、メッセージを送ってきましたの』と問い詰められ、お安いお洋服が売って無い事と、副社長の御嬢様に言われた事を伝えたら、『あの愚か者……』と静かに怒ったの。
あの時のさっちゃん……一瞬髪の色が白くなった様に見えたけど、気のせいだよね?
それからさっちゃんは、スウェットのままの私を浮かせて外へと向かい、階段下に置いてあった車椅子に座り、近くに停めてあった専用車へとそのまま入って、移動したら────到着しました華ノ恵百貨店。
だけど昨日と違って、お客さんが一切見当たらない。
今の時間なら、お客さんがいっぱい来る筈なのに……なんで?
「桐藤さん、ここに座って下さいませ。このまま裏口へ向かいますわ」
さっちゃんは、自分の太ももをパシパシと叩いて、ここに座れと言うけども……私はさっちゃんのお人形じゃないんだよ?
「ご自身で来ないのなら────こうしますわ」
「ちょっとまってさっちゃん! 浮かせないでよっ! 浮くのは楽しいけどっ、恥ずかしさもあるんだよ!!」
座るから! さっちゃんの膝上に座るから! 降ろして下さいっ! 恥ずかしいっ!!
運転手の人も笑ってるしさ!
さっちゃんが能力使ってるって事は、あの人も職員さんなんだろうけど、『顔覚えたからね!!』って私が言ったら青ざめた顔になったよ!
だって乙女の醜態を見て笑う人だもの……普通は許せないよね!!
「さあ、行きますわよ桐藤さん」
さっちゃんの膝の上で抱れたまま、私は……お人形さんになっちゃったの。
だって恥ずかしくて喋れませんからぁ!!
そのまま裏口に入り、少し進んだ場所で職員だろうか──スーツ姿の男性が二人、女性一人がさっちゃんに頭を下げて待っていた。
「お待ちしておりました、桜乃オーナー」
一番御高齢っぽい叔父さんが、さっちゃんに恭しく再度のお辞儀をしたけども──今なんか不思議な事言った様な?
「こちらこそ、お待たせして申し訳ございませんわ、多田店長。準備の方は宜しいかしら」
「万時抜かりは御座いません」
膝の上の私には、一切触れてこないなぁ……もしかして、本物のお人形と思われてる?
「宜しいですわ。それとこちらの女の子に、似合う服を用意して頂けますか」
店長さんがそれを聞いて、優しく頷いてからこっちを見てきたんだけど……。
「畏まりました。それにしても、とても精巧な作りの人形で御座いますね。まるで生きている様『人形じゃ無いよ?』──!?」
やっぱり人形と思ってた!!
だってさっきの店長さんの目が、人じゃ無くて物を見る目だったもの!
「多田さん……私のお友達を、まるで物の様に仰るのは、店長として如何なものでしょう」
さっちゃんの私を抱える腕に、若干力がこもったけど──っ、お腹が絞られるぅっ!
「さっちゃんっ、お腹が若干苦しい……」
「────っ、御免なさい桐藤さんっ」
「大変失礼致しました! 申し訳ございません桜乃御嬢様!お客様! 直ぐにお召し物を御用意させて頂きますのでっ、今しばらくお待ち下さいませ────!!」
逃げる様に走って行っちゃったよ……。
「すみません桐藤さん……あの店長にはしっかりと、罰を与えておきますわ」
さっちゃんが……鬼に見えるよ。
お年寄りには優しくね……。
◇ ◇ ◇
少ししてから、私は試着室へと連れて行かれ、訳が分からないままに着させられた服を、まじまじと見ているんだけど────何か思っていたのと違う。
ヘルメットを装着して、体にフィットしている黒色の防護スーツに、その上から巻き付ける様に太めのベルトが締められ、脛まである安全ブーツは少し重い。
「どゆこと……仮装イベント?」
周りを見ると、同じ様な姿をした人が沢山居て、手には小銃が────『なんで銃!?』
「本当はモニターで観戦する予定でしたのよ。でも桐藤さんが、あの男と渡り合えたのなら問題無いと思いまして、急遽参加いたしましたの」
さっちゃんも同じ様な姿をしてる……車椅子にも乗ってないし、本気モードだぁ。
「桐藤さん、今日は華ノ恵百貨店の休業日ですわ。何故だか分かるかしら……」
だからお客さんが居ないのね。
休業日って……普通じゃ無いのかな。
今日は四月五日だから、別に記念日ってわけでも無いし……どう言う事だろ。
「分からないよさっちゃん」
さっちゃんが何か考えてるよぅっ、嫌な予感をひしひしと感じます!!
「授業でやっていたでしょう、今から二十年前の事を。さて……日付はいつだったかしら」
えっとぉ……うわぁ……四月五日だぁ。
しかもこの場所、災害があった中心に含まれているし、皆んな戦闘服ぽいの着てると言う事は、そう言う事何だろうか?
「ここから調査に行くの?」
「残念、五十点ですわね」
皆んなで災害があった日に調査! みたいな感じだと思ったんだけど……。
「今日は行くのでは無く、その逆──来る日ですのよ」
来る日? 何が来るのさ……?
「オーナー! 観測班が信号をキャッチしました! 現在深度二十まで進行中! 到着予想は約二時間後です!」
ひゃっ────っ、急に何!? 皆んな一斉に動き始めたんだけど!?
「さぁ桐藤さん、地下へ行って準備を致しましょうか。盛大なイベントの────始まりですわ!」
「イベントに銃は要らないよ!」




