EP.3 : 類は友を呼ぶとは限らない.3
いない……いないなぁ……、あの一瞬でどこに逃げたのかなぁ。
右見て──誰もいない道。
左見て──誰もいない道。
後見て──歩いて来た道。
前見て────っ、一瞬見えたあの憎たらしい顔はっ────『見つけたんだよぉ!!』
奥の十字路を右に行った──、なら、右の道をぐるっと行けば──、もしかしたら鉢合わせするかもだねっ!!
すかさずダッシュだよっ!!
走れっ──、走れっ──、今はっ──、ジャージだから──、動き易いんだよっ!!
全力で──、ぐるっと回って──、また十字路だよっ。どっちかなぁ……、道は結構長いのに、もう姿が見えないなんて。
「だめかぁ……見失ったぁ」
くそぅ……、御免なさいママ……。
ママの教えの一つ、 『やられたら、徹底的にやり返しなさい』が守れなかったよぅ……。
あの憎たらしい顔も、男の娘こになれば、ちょっとは良くなる筈なのにっ。
「諦めて、また散歩でもしようかなぁ」
そうだ、お洋服を見に行こうっ。
来週から、さっちゃんのお仕事手伝って、お金が入れば、買えるんだよね。
スマホをポチりと検索検索──と、これかな。
「華ノ恵……、百貨店……。さっちゃんのパパさん、頑張り過ぎじゃないかな?」
近くには無いし、マップを見ても……、このお店が一番近いよね。
歩いて三十分っ、微妙な距離だけど、今の私なら走れば直ぐだよ。
「百貨店かぁ……。スウェット姿だけど、入っても良いのかなぁ」
◇ ◇ ◇
ひゃぁ────車がいっぱい、人もいっぱい、建物大きいなぁ。
どんな人が、買いに来てるのかなぁ……。
良い服を着た家族連れとか。
荷物持ち連れて歩いている女の人とか。
黒服さんに囲まれて移動している人とか。
何か凄い人達ばかりな気がする……。
「スウェットは……、駄目かなぁ」
いや……。百貨店と言うからには、お安いお洋服もある筈……。だから私はスウェットで入店しても──、大丈夫だよね。
駐車場を抜けて、歩行者通路を歩き、お店の出入口に到着だよぉ──、視線が凄いぃ。
チラチラと通行人が、私の服装を見て──クスッと笑ったり、憐れんだ顔をして、逆に顔を逸らしたりと……、挫けそうだよっ。
「そんな時はこれだよねっ(ニコッ)」
おぉ……そんなに早歩きで逃げなくても。
でもこれで、嫌な視線をグッバイだよ……。
何か……悲しくなるなぁ……、入ろう。
中に入ると────凄いしか言えない……。
中心部が天井まで空洞で、日の光が照らされていて、まるで光の塔の様に輝いている。
歩いている人達は、百貨店内のブランドショップや、食料品、コスメ等々の紙袋を手に、皆んな、凄い笑顔で楽しんでいる。
そんな中で私は……、通路の端をちょこちょこと歩きながら……、お安いお洋服を……、探しているんだけど……、どこを見てもハイブランドばかりなの!!
「ぐぅ、やはりスウェットじゃあ、場違い感がすごいなぁ……。どこか休める場所は……」
辺りを見て──、あった二階だ!
休憩スペース発見だぁ。テラスになってて、くつろぎ空間になってるよ。
それじゃぁ端をちょこちょこと……、歩いて到着……、椅子に着席……。ふぅ──っ。
「これなら……、お家に籠もれば良かったなぁ」
若しくは、一度制服に着替えてから、来れば良かったよ。この場所にスウェットは駄目だ。
「ちょっと、そこの貴女……」
でもなぁ……、近くにお洋服売ってるお店、無いもんね……。
「聞いておりますの……」
電車使って……、離れたお店に行くのかぁ。
面倒だなぁ……。どこか無いかなぁ……お店。
「無視しないで下さる!!」
「ふぁっ!? 何!?」
びっくりした────っ、何なの急にっ。
お顔が近くてびっくりしたよ!!
「急になにっ、何かよう?」
誰なのこの──、叔母さん? お姉さん?
化粧が派手で、年齢が分からない……。
「そこの席を、退いて下さるかしら。ここは貴女様な方が、来る場所じゃ無くてよ」
うわぁ……、こんな人いるんだぁ……。
「うわぁ……、こんな人いるんだぁ……」
「なんですって!? 今、私を侮辱しましたわね!!」
しまったぁ──、つい声にだしてたよっ。
何か、さっちゃんが大和撫子だとしたら、この人は成金お嬢様っぽいからついっ。
「私を誰だと思って! 華ノ恵グループの副社長である、那紗道優の娘、那紗道萌ですのよ!」
副社長の娘様なのかぁ……、へぇ……。
そんな人が席一つの為に、一般市民に高圧的に要求して来るって……、お金持ちの思考が分からないや。
「この席って、予約とか必要なの?」
予約席なら、私が悪いけど──、周りを見ても、そんな感じじゃ無いよね。
「そんな事っ。私が、その場所に座りたいからですわ。早くお退きなさい!!」
この人のパパさんが……、さっちゃんのパパさんの……、会社の副社長……。凄く面倒臭い人の予感がするなぁ。
それに……、こんな人が来るのなら、この百貨店はもう来たく無いなぁ。
帰ろ……、疲れたよぅ。
「ふんっ、ようやく退きましたわねっ。見窄らしい格好で、二度と来ないで欲しいものですわ」
はいはい、二度と来ませんよぅ。
「那紗道さん。お待たせしましたわ」
ん────っ、この声、さっちゃん?
私が一階に降りようとした時、反対側のエレベーターから、車椅子に乗った、さっちゃんが来ていた。
さっちゃんは、私に気付いていない様で、そのまま副社長の娘さんの所に、向かって行った。
「さっちゃんも……、お嬢様だもんね」
私は、ちょっとだけ、胸が苦しくなったまま、ゆっくりと、歩いて帰った。




