表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/66

EP.2 : 疲れた時こそ栄養を.6

 

 

 クラスメイトから一日中、可哀想な子扱いをされながらも、何とか堪えてその日の放課後、私はさっちゃんと二人、理事長室に居た。


「さて……。本当は、昨日話をする予定でしたのに、大猪もとい、闘牛さんが暴れた為、今からお話致しますわ」


 猪からウリ坊。

 ウリ坊から大猪。

 大猪から闘牛ってっ、種が変わってる!?

 言いたい事は分かるね。

 ひたすら真っ直ぐ、目標を追いかける!


「でも、闘牛は酷いよさっちゃん!」


 牛さんは美味しいけどっ、闘牛さんは強いけどっ、私そこまで筋肉無いもん!


「あら……拳一つで危うく、校舎が倒壊寸前でしたのよ。真っ直ぐに獲物に突っ込んで、コンクリートを破壊する。闘牛がお似合いですの」


 うぅっ、それを言われると、何も言い返せないし、迷惑をかけたのは間違い無いけどっ、それなら、ウリ坊の方が良かったよ。


「さっちゃんに……弱みを握られたよぅ……」


 床に座ってシクシクと項垂れる。


「それでは、お話し致しますわ。その力の事と、この世界の現状を」


 しれっと無視されたんだよ!?


 それからさっちゃんは、校長先生の如く話し始めた。私の眠りを誘う、長いお話を……。


           ◇ ◇ ◇


 この華ノ恵学院は、終末の刻と呼ばれた、史上最悪の大災害が有った場所、その丁度中心に建てられている。


 巨大な穴に海水が流れ込み、日本の東西が海で分断される。皆んなが、そう思っていた。


 そこに救世主が現れる。

 華ノ恵将勇と言う、資本家である。


 多額の費用を捻出して、又は国を脅して、その穴の両側面に、巨大なコンクリートブロックを敷き詰め、海水の流入を最小限に留めて、穴を埋め、その上にこの学院を建てた。


 その費用は、国家予算程度では足りず、他国からの援助を受けて、何とか出来たとの事。

 表面上はそうなっている。

 表面上は……。


「さっちゃんの話し方、怖いよぅ……」 


「ちゃんとお聴きなさい」


 では、裏では。

 この学院の地下深くには、未だ、当時流れ込んで来た海水が残っており、それより深い場所には、黒い穴が、今も口を開けている。


 終末の刻の原因とされる、巨大な穴。


 その調査と、解析をする為に作られたのが、この華ノ恵学院であり、それは表の名称。


 正式な、だが一般には知られていない、この場所の名は、終末の刻研究所。


「まんまだ……はい、黙ります」


 各国にも、穴の兆候が見受けられる為、情報を寄越せと催促して来るが、中々調査が進まず、足踏みしている状態である。


 その原因の一つ。

 地下の迷宮化である。


 最初は、地下へ続く階段が、少し長くなった程度の違和感であった。だが、往来を重ねるにつれ、内部構造が変化し、変貌し、以前は一時間で行けていた場所に到着したのは、出発してから百六十五時間後。


 ただし、現代社会においては、保存食や長距離移動の道具、配線して電気を通したり、水道管の延長等、時間がかかるだけでは、その足は止まらない。


 なら、足踏みしている原因は何か。


 御伽話から出て来た、化物の存在である。


           ◇ ◇ ◇


「以上が、この世界の現状ですわ。今直ぐにでも他の国々で、日本と同じかそれ以上の大災害が起きる可能性があり、その原因を調査しようにも、化物が邪魔ですの」


 ほぁ────んぁ!?

 危ない危ない。少し意識が飛んでいたよ。

 この学校の地下に……化物さんかぁ……。


「それって危なく無いのかなぁ」


 その化物さんが万が一、地上まで上がって来たら、間違い無くトップニュースだよね。


「そうですわね。非常に危ない存在ですわ」


 だよね──でも、今までそんな話、聞いた事も無いし、ニュースにもなって無いんだよ……なんでだろぅ。


「徹底した情報統制と、一種の暗示ですわね」


 思考を読まれた!?

 違う、顔に出てたのかな……表情筋マッサージだねっ。うにうに。


「暗示って……洗脳ってことだよね」


 嫌だなぁ、聞きたくなかったなぁ、聞くんじゃなかったなぁ……帰りたいよぅ。


「否定はしませんわ。それと、桐藤さんのそのスキルに関してですが。似た様なスキルを、その化物達も使いますの」


 化物さんと、同じ力なの!?

 私、普通の女の子なんですけど……。


「桐藤さんのスキルの方が、遥かに上位ですわ。小指一つで上層を突破できますもの。中層はデコピン一つで、ぐらいでしょうか」


 化物さんよりも化物だよそれじゃあ!?


「うぅ……普通の女の子に戻りたぃ」


「桐藤さん……大丈夫ですわ」


 何が大丈夫なのさ……。


「卒業後の就職先は、内定しておりますもの」


 急に就職の話になったけど……私まだ一年だし、入学したばかりだし、それに、どこにも就職活動してないよ。


 それに、小さいけど夢も有るもん。 


「内定って、何の事なのさっちゃん」


 さっちゃんが……車椅子から立った。

 凄く嫌な予感がする。

 コレを聞いたら、私の人生が決まってしまうと、本能がそれを告げている。

 両手で耳を塞ごうとすると────腕が動かないって、さっちゃんが笑ってるぅううう!?


「桐藤さん。ようこそ、終末の刻研究所へ」


「さっちゃんの鬼ぃいいい────!!」


 こうして私は、日常から程遠い日常へと、足を踏み外して、落ちていったの。


 変なチカラの所為で、既に片足をぷらぷらしていたんだけど、さっちゃんが下から引っ張ったよね……コレ。


           ◇ ◇ ◇


『活動は、来週からにしましょう。もちろん、アルバイトとして、給料も出ますわ』


 そんな事を言われても、活動って何するの。と聞こうとしたら……いつの間にか家に居る事に気付いて……何で?


 いつ帰ってきたかなぁ、何か頭がぼへぇっとして、何が何だか分からないよぅ……お腹すいたなぁ。


 今日はタイムセールやってないし、冷蔵庫の中に入ってるのは────ガチャッ────っと開けて……うん。牛さんだよね。


「お腹空いたし、仕方ないよ。牛さんに罪は無いもん、美味しく頂きます」


 お料理の開始だよ────一人だけどね。


 ブロック肉を薄切りスライスして、お醤油、みりん、砂糖少々胡麻ぱらぱら。鷹の爪さんを細かく切って、フライパンに油を少し、後はひたすら焼くだけなの……胡椒も少しっと。


 焼いている間に、切り分けてある大根を、すりおろし大根にして……指の力が強すぎて、握り潰し大根になった……やめてよぅ。


 潰れた大根を、包丁で微塵切りにして、お肉の焼き加減を見つつ、フライパンを揺らしてぇ、焦げない様に揺らしてぇ、焼けたらお皿に移して、大根添えたら、完成だよ!


「頂きま──す。ムグ……!?」


 やっぱりこの牛さんは、美味しいんだよ。

 国産の牛さんより美味しいって、どういう事なのか分からないけどっ。


「美味しいから、ムグムグ、気にしない、ムグムグ、んだよぉムグ」


 美味しいご飯を食べたら、何か……疲れていた心が、癒されていくよぉ────ムグムグ。




 EP2 終了で御座います!!

 のんびりパートでしたねぇ……。のんびりか?

 お腹いっぱい食べたら、元気になる!

 まだまだ序盤ではありますが、ぜひ見て下さい。

 

 出来ましたら、評価や感想をくださいなぁ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ