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EP.2 : 疲れた時こそ栄養を.4


 夕食をご馳走になった後、なぜか同じ部屋で一緒に寝ると言われ、さっちゃんのお家だから、良いよとも嫌とも言えずに、私が寝かせて貰っていた、部屋に来たんだけど……ベットが一つだけなのはどうしよう。


「さっちゃん。毛布あったら貸して欲しいなぁ。私は床で寝るからさ」


 床で寝るにしても、まだまだ夜が冷える季節な訳で、お泊まりをさせて貰う身としては、毛布一枚でも、貸して貰えると有難いなぁ。


「何を言っているの桐藤さん。貴女は、私が招いたお客様なんだから、床で寝かせる訳が無いでしょう」


 さっちゃんが、呆れた顔で私を見てくる。

 だってベットが一つしか無いし、このお家はさっちゃんのお家だから、私は床で良いと思うの。変な事言ってないのになぁ。


「私と一緒に寝れば良いのですわ」


 さっちゃんは何を言ってるんだろう。

 確かにこのベッドは大きいから、二人で寝ても余裕が有るけど、良いのだろうか。


「私、寝相悪いけど大丈夫?」


 大事な推しグッズを、壊すぐらいだからね。

 朝起きたら、さっちゃんがどうなっているのかが、保証出来ないんだよ。


「大丈夫ですわ。お気になさらないで下さい」


 気にするよ……まぁ、さっちゃんがそう言うなら、仕方無いけどね。


「今日は疲れたでしょう。明日も有りますし、今日はもう寝ましょう」


 うぅっ……明日、学校で何て言われるのかなぁ……先輩は大丈夫かなぁ……不安だぁ。


「うん。もう寝るよぅ……」


 私は、ベッドの壁側に寄ってから横になって、さっちゃんが隣に入って来た。


「では、灯りを消しますわ」


 そう言うと、さっちゃんは遠くにあるスイッチを、能力?を使って、パチッと消した。


「お休みなさい。桐藤さん」


「お休みだよ。さっちゃん」


 友達のお家に初泊まりが、まさか、同じベッドで寝る事になるなんて、誰も予想出来ないんだよ。ちょっとだけ、嬉しいけどもね。


 少しして直ぐ、さっちゃんの寝息が、私の耳をくすぐってきた。


◇ ◇ ◇


 うっ────っ、ポスポスしてるぅ。

 寝相が悪いのは、さっちゃんもだった様だ。

 私のお腹に、なぜが、ひたすら、ボディブローを叩き込んで来るんだけどぉ……痛くは無い。

 お休みなさい。をしたのは良いんだけど、私はある意味寝てたから、眠れないよぅ。


 さっちゃんを、起こさない様に、そっと……御花摘みに行くんだよぉ。


 まだブローをしてるよさっちゃん……そこには既に、私のお腹は無いからね。


 ドアを開けてぇ、お花畑はどこだろう。

 こっちかなぁ……あっちかなぁ……広すぎてお花畑が見つからないっ!!


「このままだと、そそうしちゃうぅぅ」


 辺りをキョロキョロと見るけど、部屋が多いから、何処にあるかが分からない。


 とりあえず、灯りがついている部屋を片っ端から開けていき、発見だぁあああ!っと、お花摘みお花摘み…摘んだよ綺麗なお花さん。


「危なかったぁ──友達の家に初泊りで、危うく初そそうする所だったよぅ……」


 さっきの部屋は、どこだろうか……。


◇ ◇ ◇

 

 行ったり来たりと彷徨いつつも、灯りがついている部屋を発見した。


 このままじゃ、いつまで経っても戻れないし、誰か居れば、部屋が分かるかもだよ。


 そっと……ドアを少しだけ開けて……部屋の中を確認すると────直ぐにドアを閉めた。


「……なにあの人……なんでっ」


 見間違いかも知れない。

 そう思い、またそっと……ドアを少しだけ開けて……部屋の中を確────ドアを閉めた。

 見間違いじゃ無い……どうしよう。

 このまま、さっきの部屋を片っ端から探すか、この部屋の人に聞いてみるか……。

 良し。

 片っ端から探そう。と、歩き始めた時、部屋の中からダンディな声が聴こえて来た。


「何をしている。入って来たまえ」


 そうだよね。

 二回もドアを開け閉めしたら、気付かれるのも、当然の結果だよね。

 でもね、見たく無い姿なの。

 だって────ギィィッ────と、ドアを開けて出て来た姿と『どうしたのかね』このダンディな声が、あまりにも不釣り合いだから。


「ふむ。君は、桜乃が連れて来た子だね。こんな夜遅くに、どうしたのだ」


 この言い方……まさかさっちゃんのパパ!?

 いや、待って、頭が追い付かないよぅ。

 ちょっと整理するんだよ。

 目の前にいる男性は、茶髪に染まった髪を七三に分け、鼻が高く、鼻の下には立派な紳士髭が整えられ、背が高く、更に足が長い。

 声もダンディな叔父様ボイス。

 そこだけ見れば、イケおじ間違い無し。

 そこだけを見れば、だけど。

 ただ一つの要素を加えるだけで、イケおじだったその人が、性別不明、年齢不詳の人になってしまう。


 その姿……ピンクのショールを首に巻き、薄ピンクのネグリジェを着用して、更に足元には、薔薇柄のスリッパを履いている。

 良く見ると、ネイルも綺麗な薔薇柄だ。

 さて問題です。

 この場合、さっちゃんのパパですか?と聞くのが正解か。さっちゃんのママですか?と聞くのが正解か。

 間違うと、大変失礼な事になってしまうっ。

 どうするの私っ。


「どうやら、怖がらせてしまった様だね。どうぞ、入りたまえ」


 嫌だなぁ。入りたく無いなぁ。

 でも、このままだと、失礼になっちゃうし。

 腹を括ろう。


「失礼します……」


 ここは、仕事部屋かなぁ。良く分からない資料が山積みされてて、目が痛くなるよ。


「そこに座ると良い。飲み物は……この時間だから、温かいミルクを飲むと良い」


 そう言って、小さい冷蔵庫から牛乳を出し、ポットで沸かして、コップに注がれ、そのまま渡された。


「ありがとう……ございます。頂きます……」


 ゆっくりと、一口飲むと、温まるなぁ。


「挨拶が遅れたね。私は、華ノ恵将勇かのえ しょうゆう。桜乃の父親だ。宜しくね」


 良かった……さっちゃんのパパさんだ。


「桐藤花乃歌と言います。お家にお邪魔してるのに、挨拶が出来ず、申し訳ございません」


 ふふん。私だってマトモな返事ができるの。

 噛んでばかりじゃ、ないからね。


「花乃歌……そうか、君が……」


 どうしたんだろうか。パパさんが、私の名前を聞いた瞬間、考え込んじゃった……なんで。


「いや……失礼したね。それで、こんな夜遅くにどうしたんだい」


 そうだよ、部屋への戻り方!

 さっちゃんのパパさんに、部屋への戻り方を聞いて、これなら大丈夫と安心。


 気になるのは、私の名前を聞いた時に、何で考え込んじゃったのか。なんだけど、聞こうとしたら『もう寝なさい』と言われちゃった。


 結局、聞けずじまいだったけど、部屋に戻れたし、気にしなくて良いよね。


「寝ようか……さっちゃんが、まだブローしてるよ……そこにお腹は無いんだよ。さっちゃん」


 私のお腹は、太鼓じゃ無いからね。


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