EP.1 : 溢れ出すこの想い.11
うぅっ緊張してきたよぅ。さっきから心臓の鼓動が耳に響いてうるさい。
校舎裏で待ち続けて一時間。
上の階から、ちらほらとコッチを見ている視線を感じるけど、今はそれどころでは無い程緊張しているの。
「まだかなぁ……まだかなぁ……もう直ぐかなぁ……うぅ、そわそわしちゃう」
さっちゃんが言っていたとおり、話をした事が無い女の子から、急に手紙を渡されて変に思われないだろうか。
そんな不安もあるけど、想いを伝えない事の方がもっと不安になるし、何よりそんなの私じゃ無い!
あっ────彼が来た。
まだ肌寒い季節にも関わらず、袖をめくり、その鍛え上げられた身体からは『トレーニングをして来ました』と言わんばかりに湯気が立ち昇り、膨らんだ胸筋をピクピクとさせて、堂々と歩いてくる────良い筋肉だぁ……。
「待たせて悪かったな。それで、わざわざ校舎裏に呼びだして何の用だ」
いぎゃぁあああ────筋肉に見惚れていつの間にか目の前にぃいいい!?
落ち着け──落ち着け──私!
こういう時は渾身の笑顔で(ニコッ)第一印象を良くするんだよ!
「ひっ……何だお前喧嘩売ってるのかっ」
こんな時にも私の笑顔は怖いのかなぁあああ!
ここはもう行くしか無い!!
「私の気持ち、受け取って下さい! 奈村先輩!好きです────!!」
軽く胸に手紙を押し当てた。
私は本当に、ポンっと先輩の胸板に、手紙を押し当てただけなのだ。
それが────《ドンッッッ》────っと、まるで車に轢かれた様な鈍い音と共に、奥に置いてあるゴミ捨て場の山へと、先輩を吹き飛ばした。
「おい何の音だ」
「あれ、奈村……奈村!!」
異変に気付いた生徒が沢山集まって来て、先輩を助けようとしているけどあれ?私は何をしたのだろうか。
「おい!救急車を早く呼べよ!」
好きな人に告白しただけなのに。
「先生早く!酷い怪我をしてるの!」
先輩が血を流して倒れているのに。
「どうしたっ何があった!?」
足が動かない。
「心臓止まってるぞ!!」
助けないと。
「どけっ! 確か顎上げて良し!」
私が助けないとだめなの。
「一ッニッ三ッ四ッ五ッ──」
そうじゃないと。
「救急車まだかよ!」
だって、だって。
「五分かかるって言ってるぞ!」
このままじゃ……嫌……。
「お前何しやがった!?」
嫌ぁあああ────────!!
「ゲフッフッ──」
先輩っ!!
「息戻った! おいまだ寝てろって!」
先輩だ────
「ゲフッ近づぐな化物!!」
────えっ? 先輩……今……えっ。
「なんだよお前っゲフッっ俺が何かしたか!?」
先……輩……? まって違う! 私はっ。
「こんな物の要るかっ!!」
あっ……私の手紙……。
私の想いを綴った手紙が丸められ、私の足下へと転がってくる。
私は今日、失恋したのだ。
全部この力の所為だ。
全部全部この力の所為だ。
「うぐぅううぁああ────────」
あぁ、泣いちゃった。
誰も助けてくれない。
先輩に化物って言われちゃった。
これ……退学かなぁ……。
私は良く分からない感情のままに拳を握り、そのまま校舎へ叩きつけた。
その瞬間────《ドゴォッッッ》と音を立て、校舎の壁がヘコみ、そこからゆっくりと亀裂が走って行く。
「あっ──やっちゃったなぁ……ぐすっ」
その亀裂が校舎の壁一面に広がり、剥がれ落ちていき、そのまま私を呑み込んでいった。
「だから言ったではないですか。まったく……とんだ大猪さんですわね」
遠くでさっちゃんの、優しい声が聴こえた様な気がする。
救急車が男子生徒を乗せ、搬送されて行く姿を見届けながら、華ノ恵桜乃は丸められた手紙を拾う。
「後処理が面倒ですわね……御父様に頼もうかしら」
そう言いながらゆっくりと手紙の封を切り、中身を確認すると、直ぐに破り、ゴミ捨て場へ投げ入れた。
その手紙に書かれていた内容が『貴方の筋肉を、好きに触ってもいいですか』たったのそれだけ。
「本当に大猪……いえ、闘牛ですわね」
猪突猛進と言うよりも、目先の者を執拗に追いかけて突き飛ばす闘牛。ぴったりの言葉でしょう。
車椅子を動かして、残っている教職員や生徒に指示を出し、その場から遠ざけ、瓦礫の毛布を被り寝ている闘牛を拾い、ゆっくりとその場を離れて行った。
はい後書きのお時間です。
EP.1はいかがでしたでしょうか。
詰まらない?
訳が分からない?
有難う御座います!!
個人的にはもっと桐藤花乃歌の鉄仮面ぶりを表現したい所ではありますが、文章力が無くてすみません……。
都度、エピソードを追加していきますので、気長に見ていただければ幸いです。また、評価や忌憚無い感想もお待ちしておりますので、何卒宜しくお願い致します。
短い文ですみませんが、ではでは、またの後書きで。