EP.1 : 溢れ出すこの想い.9
《にゃ──にゃにゃにゃにゃ──にゃ》
《にゃ──にゃにゃにゃにゃ──にゃ》
う……ん、あと五分……。
《にゃ──にゃにゃにゃにゃ──にゃ》
《にゃ──にゃにゃにゃにゃ──にゃ》
あ……朝だぁむにゅむにゅ……。
《にゃ──にゃにゃにゃにゃ──にゃ》
あれぇ……あっそうだ……スマホの目覚まし時計使って……朝!?
ベットから飛び起きて直ぐ時間を確認。
「今何時!?……良かったぁまだ六時だぁ」
今日は大事な日だから早めに時間セットしてたんだ……んっ────ん!!
背伸びをして、目覚まし機能の繰り返しをオフにしてっと朝ご飯の準備だね。
「今日の朝ご飯は何にしようかなぁ」
冷蔵庫を開けて中身を確認すると、昨日小々波さんから貰った牛さんがみっちりと詰まっているけど、それは無視して、卵と大根がある。
「卵焼きでいいかな?」
大根を洗い、五センチ程に切り分けて、使わない分はラップで丸めて冷蔵庫へ。
使う分をちょっと荒めにみじん切りにしたら、フライパンに油をひいて火を着ける。
卵を溶いて、フライパンへ投入し、焦げない様にフライパンを軽く揺らしながら、少し醤油で味付けをして、みじん切りした大根を入れたらすかさずフライパンを返して包み込み、完成。
「大根入り卵焼き完成だよ!」
後はご飯を少しだけお茶碗によそって、うん!とっても美味しそうにできたかな。
「いただきま──す」
う──ん……こんなものかなぁ、まだまだママには勝てないや。
そうだ、スマホスマホ。せっかく早起きしたんだからニュースぐらい見ておかないとね。
ムグムグ……ふ──ん、通り魔が逃走中……夜中に火の玉が……化け物を見た……楽しそうな話が無いよぅ。物騒なニュースばっかりやってるなぁ。
ムグムグ……空に浮かぶ人を見た?
「さっちゃんかなぁ?」
実際に飛んでたからなぁ。
そういえば、昨日と違って今日は普通に過ごせてる……何も壊してないし、ふん!っと拳を突き出しても何も起きない。
さっちゃんはユニークスキルとか言っていたけど、今一良く分からない。
「これなら……問題無く過ごせるかなぁ」
放課後にさっちゃんと会うから、またその時に色々と聞かないと、今後が不安だ。
「でもその前に、想いを伝えないとだね」
昨日見たあの筋肉の先輩へ、想いを伝えないとスッキリしないもの。
「メイクもしっかりしないと!」
後は少しでも、この髪が言う事を聞いてくれたら良いのになぁ……また寝癖で凄いうねってるよぅシクシク。
今日はゆっくり学校に到着!
「おはようさっちゃん!」
昨日は若干疲れた様な顔をしていたけど、肌ツヤも良くて元気そうで良かった──!!
「おはよう桐藤さん。とりあえず元気なのは分かりましたから、抱き付かないで下さいな」
なんで──朝の挨拶はハグだよさっちゃん?
「朝から仲良いなお前ら。おはよ」
えっと……確か、レオンちゃんだ!
「おはようレオンちゃん!」
何かレオンちゃんが驚いた顔してる、私なにか変な事しちゃったのかな?
「凄えなお前……全然笑って無いのに声だけ元気って、なんか腹話術見てる様だわ」
それは仕方ないもん。朝の表情筋マッサージもしたけど、やっぱり上手く笑えないの!
「野小沢さん。人にはそれぞれ理由が有るのですから、余りその様な事を言うものではありませんよ」
さっちゃんがフォローしてくれた!
昨日理由話したから、私が変じゃ無いって分かってくれたのね!さっちゃん大好き──!!
「だから、抱き付かないで下さいな桐藤さん」
「何か芸人みたいな奴だな、お前」
私は芸人じゃ無いよレオンちゃん!
《リンリンリ──ン、リンリンリ──ン》
何か音が鳴った……何の音?
「お──いお前達席につけ──授業始めるぞ」
先生来たって事は────待って昨日とチャイムの音が違うよ、どうして皆んなそんなに平然としてるの?
「どうした桐藤、早よ席に着け──」
うぅ……違和感が凄いなぁ。
「このように──ニ十年前に起きた大災害によって、日本の中心に出来た大穴に海水が流れ込み、その場所を埋めて出来たのがここ、華ノ恵学院という訳やな。まぁそれは置いといて、桐藤──『ひゃっ、はい!」──二十年前に起きた大災害、各都市が沈み、日本の中心に大穴が開いた出来事をなんと言うか、言うてみ──」
いやぁあああ何で先生名指しするのさ!そのまま先に進んでよ! 確か……中学でも習っていたんだけどぉ────思い出せない!?
「……わかりません」
恥ずかしいよぅ……さっちゃんが呆れてる!? やめて!私を見ないでぇえええ!!
「こない簡単な事忘れるか──ほな呆れ顔の華ノ恵、代わりに言うであげ──」
うぅ……ど忘れしちゃっただけだもん!
さっちゃんの呆れた顔も可愛いけど、お馬鹿だと思われたく無いよぅ。
「二十年前に起きた大災害は終焉の刻と言われており、死者、行方不明者合わせて約一千万人を超えるとされ、未だその原因が解明されておらず……異界に通じる穴と言う説もあります」
異界に通じる穴って言われてるんだ……初めて聞いたなぁ。流石さっちゃん詳しいね。
「ありがとな──でも経済の話やから、異界云々は関係ないかな。まぁそんな事があって、人も物も足りず、一時はホンマに世紀末やったんやけど、各都市が再編成され、各国からの支援もあって、今に至ると言う訳やな」
先生細かい所を噛み砕き過ぎだよ!?
《リンリンリ──ン、リンリンリ──ン》
うぅ……このチャイム違和感が凄いなぁ。
「ほなここまでや──細かい箇所は自習しとけよ──」
それは先生としてどうかと思います!