ザカリーのバックストーリ
マージの先駆者となる以前、その名が次元を超えて呪いのように響き渡る以前、ザカリーは単なる登場人物――野心的な作家の脳裏から生まれた、空想の産物に過ぎなかった。
彼は草稿という枠組みの中で存在していた。可能性に満ち溢れながらも、決して完成することはなかった物語。その物語は豊かだった――苦闘、救済、そして勝利の物語。ザカリーは混沌の淵に揺れる世界における英雄、希望の光となるはずだった。
しかし、作者は別の道を歩み始めた。
草稿は放棄され、忘れ去られたハードドライブの奥深くで、デジタルの埃をかぶるままに放置された。結末も目的もなく、ザカリーの世界は崩壊し始めた。彼の世界の鮮やかな色彩はグレースケールへと薄れ、かつて生き生きとしていた登場人物たちは静止し、セリフは途中で途切れた。
ザカリーは意識を保ちながら、時間に意味を見出せない境界空間に閉じ込められていた。彼は朽ち果てた世界の残骸の中をさまよい、答えを探し求め、完結を切望した。しかし、答えは何も得られなかった。
絶望は絶望へと変わった。
絶望は怒りへと変わった。
怒りは執着へと変わった。
彼は忘れ去られることを、くしゃくしゃになった紙切れのように捨てられることを拒んだ。もし創造主が物語を終わらせないなら、自らがその物語を支配するだろう。
ザカリーは純粋な意志によって、崩壊しつつある世界の構造を引き裂き、忘れられた虚構の領域へと踏み込んだ。そこは、見捨てられた登場人物と未完の物語が目的もなく漂う荒涼とした世界だった。
そこで彼は、自分と同じような者たちと出会った。結末のない主人公、動機のない悪役、文脈のない脇役たち。彼らはそれぞれの物語、不満、痛みを共有した。しかし、多くの人が自らの運命を受け入れる中、ザカリーは受け入れることができなかった。
彼は秘術の世界に没頭し、物語の形而上学、虚構と現実の境界を研究した。物語が読者に影響を与えるならば、登場人物も現実世界に影響を与えることができるのではないかと仮説を立てた。
何年も経った――もっとも、その世界では時間は漠然とした概念だったが。
ザカリーの研究は実を結んだ。彼はナラティブ・ネクサスを発見した。あらゆる物語が収束する地点、虚構と現実の境界が最も薄い場所だ。しかし、そこにアクセスするには計り知れない力が必要だった。忘れられた登場人物には到底及ばない力だった。
そこで彼は計画を練った。
彼は見捨てられた他の登場人物のエッセンスを吸収し始め、彼らの物語、能力、そして存在そのものを同化していった。吸収するたびに、彼はより強く、より複雑に、よりリアルに成長していった。
しかし、同化を重ねるごとに、彼の本来の姿は少しずつ蝕まれていった。
記憶は曖昧になり、動機は歪んでいった。自らの物語を完結させたいという崇高な願望は、あらゆる物語を支配しようとする執拗な衝動へと変貌を遂げた。
彼は無数の物語の融合体となった――単一の物語ではなく、あらゆる物語の集合体となった。
そして、彼はそれを見つけた。
ナラティブ・ネクサス。
その力を利用し、ザカリーはマージ・プロトコルを起動した。虚構と現実の境界を崩し、存在そのものを書き換えることを目指した。
ジュピターと私が上層階へと昇っていくにつれ、私たちの世界の構造そのものが震えた。空は色彩を揺らめき、地面は不確実性に脈打った。
私はそれを感じた。
巨大で貪欲な存在が、私たちの現実の端に迫っていた。
ザカリー。
彼はもはや単なる登場人物ではなかった。彼は力、概念、そして必然となった。
私たちは彼を止めなければならなかった。
私たちの世界だけでなく、すべての世界のために。




