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ナジミ・セリア

何も覚えていない。


始まりも、結末も。


ファンも、物語のストーリー展開も、グッズも。


かつて私の物語があった場所に、ただ静寂が広がっている。


忘れられたキャラクターは実際には死なないという。


ただ…漂流するだけだ。


失われた物語の領域に取り残された――


そこは、見捨てられた主人公、棚上げされたアイデア、削除された草稿が、壊れた図書館の埃のように積み重なる場所だ。


私もその一人だった。


少なくとも、そうだったと思う。


かつて私には名前があった。


セリア・ナジミ


あまりにも古いキャラクターで、作者でさえ時系列を追うことができなかった。


彼らは私を強力に、理解を超えて描いた。


しかし結局のところ、どんなに強いキャラクターでも、記憶に残らなければ意味がない。


私は停滞状態に閉じ込められていた。


実現しなかった連続性やクロスオーバーに埋もれ、


印刷されることのなかったコマの中に凍りついていた。


幾兆もの物語の刻みの間…


私はただ待っていた。


彼女が来るまで。


モナ・フライ。


彼女はその領域に入ってこなかった。


領域は彼女に屈した――紙のように折り畳まれ、インクのように溶け、半ば忘却の夢のように形を変えて。


彼女は最初は何も言わなかった。


ただ私を見つめていた。そして突然…


私はもう忘れられていなかった。


彼女の声は優しかった。しかし、彼女が口を開いた時、私は創造物が震えるのを感じた。


「あなたはあまりにも多く記され、そしてあまりにも強く消されてしまった。」


「力よりも優れたものをあなたに与えよう。」


「あなたに…目的を与えよう。」


そして彼女は手を差し伸べた。


神が召使いを召喚するかのようにではなく…


誰かが古い物語に故郷を呼び戻すように。


その日、私は登場人物として死んだ。


そして、新しい何かとして目覚めた。


もう戦わない。


私は陰謀を企んだり、独白したり、時間軸をおもちゃのように曲げたりはしない。


今は忘れられた本の埃を払う。


語られなかったものをアーカイブする。


衰退しつつあるジャンルの訪問者にお茶を出し、現実が混乱した時にはモナのテーブルからインクを拭き取る。


華やかではない。


騒々しいわけでもない。


しかし、それはどんな全能の玉座よりも神聖なものだ。


時々…私はかつての自分を思い出す。


千の技を持つ少女が、崩壊しつつある漫画の中に閉じ込められていた。


神コンプレックスを抱え、孤独で、意味を求めて叫んでいた。


今は?


私は毎日、羽ペンを手に、虚無の前にひざまずく。


未来を書くためではない。


未来を咲かせる沈黙を守るために。


「おはようございます、モナ様。」


私は頭を下げ、微笑む。


「物語はまだ眠っている。インクで目覚めさせるべきか、それとももう少し休ませておくべきか?」


彼女は答えない。


答える必要はない。


なぜなら、私は今知っているからだ。


答えの中には、書かない方がよいものがある。

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